どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
416
シルクとの会話が終わったフドウとシズハ。
今は月の光に照らされた廊下を、二人ならんでゆっくり歩いている。
◇
「うふふ、ふぅちゃん格好良かったぁ」
「そうか、そう言って貰えると……凄く嬉しい」
我の妻、シズハが頬を赤く染めている。
凄く可愛い、自分でも思う、今とてもっはす良い雰囲気だと。
その雰囲気を大切に思いながら、我とシズハはさっきの話しをしている。
「しぃ君。良い顔してたねぇ」
「うむ、そうだな。あのまま気持ちを伝えてくれると嬉しい。と言うか、そうしてくれないと困る」
「ですねぇ、ふぅちゃんの頑張り、無駄になっちゃうもんねぇ。その時は私がお説教しますよぉ」
「そうか、ならばその時は任せた」
「はぁい、任されましたぁ」
スタスタと歩きながらそんな会話をする。
まさに、シズハの言う通りだ。
話を始めた時のシルク君の表情はとても暗かった。
彼は色々考える癖がある。
それは良い事なんだが悪い所でもある。
その事を伝えにシルク君と話しをしようと思ったのだ。
この事は、食事する前……シズハと二人きりで決めた。
その時に、アヤネが失恋したのを聞いた。
正直複雑だった、我の娘が失恋したのだからな……親としては凄く心配だ。
「しかし……。ぽっと出のオヤジが、あんな事言っても良かったのか?」
「大丈夫ですよぉ、なんの心配もないでぇす」
だから、色々話してしまったが……大丈夫だろうか。
何を偉そうに、だとか思われてしまったら……我、かなり傷つくなぁ。
そんな我に対し、シズハは優しく笑ってくれた。
可愛い、凄く可愛い、今すぐに顔をとろけさせたいが……我慢だ。
今はそれをすべきでは無い。
「ふぅちゃんは、ビシッ! と決めましたよぉ。確かにぃ、さっき現れた奴が何言ってんだぁって、思ったけどぉ……格好良いからなんの問題もないでぇすぅ」
「うっうむ、そっそうか……」
優しい言葉を掛けて……くれたのか? なんだか辛辣な言葉に思えて来た。
だっだが、シズハの顔を見てみろ、凄く微笑ましい顔ではないか。
こんな顔をして辛辣な事を言ってるなんてありえない。
恐らく深い意味はないのだ、長い間一緒にいたから間違いない。
「まぁあれだ。悩んでいたのは、シルク君だけじゃ無いみたいだったな」
「そうですねぇ、みぃんな難しい顔をしてましたぁ」
そう言う風に納得した後、食事での皆の顔を思い返す。
名前とかは多分聞いてないから分からないが……シズハの言う通り難しい顔をしていた。
恐らくだが、シルク君とアヤネの一件が原因で悩みが広がってしまったのだろう。
「ここは我がお節介するべきか?」
「その必要は無いですよぉ、ふぅちゃんは何にもしないでくださぁい」
むっ、なんとかしようと思って話してみたが、直ぐに止めるように言われてしまった。
「きっと大丈夫ですよぉ、多分ですけど」
「ふむ、多分……か」
なるほど、至極不透明な感じがするが……そう思う事にしよう。
よくよく思えば、顔の知ってるシルク君の事は兎も角、顔の知らぬ者達の悩みをどうにかするのは止めた方が良いかもしれん。
きっと、悩んでる者達の近くの者がなんとかしてくれるだろう。
しかし……あの者達、角が生えていたり、尻尾が生えていたが……同じ人間なのか? 気になるな。
「あ、それはそれとしてぇ。アヤネちゃんの事、どうするつもりですか?」
「むっ……」
その問い掛けに眉をピクリと動かし、歩く早さを緩める。
「なんにも考えてないんですか?」
「いや、きちんと考えている」
「そうなんですかぁ、安心しましたぁ」
にぱぁっと笑うシズハ、そんな彼女の頭を優しく撫でる。
そしたら気持ち良さそうに眼を細めた……この仕草も可愛い。
「で、どうするんですかぁ」
撫でるのを止めて、こほんっと咳払いする我は、説明する。
「まずはな、この件をしっかり解決してもらう。話しはそれからだ」
「そぉですかぁ」
「うむ。そのあとは……我はアヤネと会って話しをする」
長年会ってなかった、言いたい事も沢山あるが、まずは「親に心配をかけるな」と叱ってやろう。
「その時に、我は聞いてみようと思う」
突然、声を低くした我に、小首を傾げるシズハ。
かなり大事な事を言う、だから真剣さを増すために声が低くなってしまったのだ。
「なんて聞くんですか?」
「……このまま、どうしたいかを聞くのだ」
「家に帰ってこい、とは言わないんですかぁ?」
「言わない、娘が剣を継がないと断言したからな……娘の気持ちは大事にする。しかし、我の問いに何も答えられなかったら問答無用で連れ帰る」
これは本気だ。
答えが出せないのなら、アヤネが思う気持ちはそれまでだったと言う事、その時は家に連れ帰って剣を教える。
それで、全てを忘れさせる。
我が娘に限ってそんな事は無いと思うが……我にそんな心無い事をさせないで欲しい。
だからアヤネよ、気持ちを伝えてこい、好きなら好きだと言い続けろ。
我の娘なら、そう言う強かな心を持て、我は応援しているぞ。
「うふふふぅ」
「ん、なんだ。急に笑って……」
「いやぁ、ふぅちゃんは良いパパだなぁって思っただけですよぉ」
「そっそんな事は無い……」
「あぁ、照れてますぅ、顔真っ赤ですぅ。可愛いぃ」
くっ、そんなにからかわないでくれ。
本当に恥ずかしい……。
「しっシズハは、どっどうなのだ? どうしようと思ってた?」
だから強引に話しを変えてやった、そうしたい気分だからそうした。
「ん? 私ですかぁ。私はぁ、アヤネちゃんに全てを任せますよぉ。人生悪い事をしない程度に好きな様に生きるべし、と言う格言がありますからねぇ、そうさせてあげますよぉ」
「……シズハも、良いママではないか」
「やだもぉ、褒めちゃ嫌ですよぉ」
シズハは照れ臭くなったのか、我の肩をバシバシ叩く。
痛い、痛いのだが……照れるシズハは可愛いから何も言わないでおこう。
「多分、いや……確実にアヤネと別れる事になるが、寂しくはないか?」
「寂しくない、わけないですねぇ」
「そうか、我もそうだ」
確実に、と言ったのはアヤネは絶対に気持ちを伝え、どうしたいかを決めると言う確信があるからだ。
何度も言うがアヤネは強い。
だから、次我と会うときは笑顔で会って欲しい。
そうなる事をシズハと一緒に祈っておこう……。
交錯し合う想い、気持ちを伝えるべき時は来た。
果たしてどうなるのか……全ては明日になって分かる事、運命の日が対に来たのである……。
今は月の光に照らされた廊下を、二人ならんでゆっくり歩いている。
◇
「うふふ、ふぅちゃん格好良かったぁ」
「そうか、そう言って貰えると……凄く嬉しい」
我の妻、シズハが頬を赤く染めている。
凄く可愛い、自分でも思う、今とてもっはす良い雰囲気だと。
その雰囲気を大切に思いながら、我とシズハはさっきの話しをしている。
「しぃ君。良い顔してたねぇ」
「うむ、そうだな。あのまま気持ちを伝えてくれると嬉しい。と言うか、そうしてくれないと困る」
「ですねぇ、ふぅちゃんの頑張り、無駄になっちゃうもんねぇ。その時は私がお説教しますよぉ」
「そうか、ならばその時は任せた」
「はぁい、任されましたぁ」
スタスタと歩きながらそんな会話をする。
まさに、シズハの言う通りだ。
話を始めた時のシルク君の表情はとても暗かった。
彼は色々考える癖がある。
それは良い事なんだが悪い所でもある。
その事を伝えにシルク君と話しをしようと思ったのだ。
この事は、食事する前……シズハと二人きりで決めた。
その時に、アヤネが失恋したのを聞いた。
正直複雑だった、我の娘が失恋したのだからな……親としては凄く心配だ。
「しかし……。ぽっと出のオヤジが、あんな事言っても良かったのか?」
「大丈夫ですよぉ、なんの心配もないでぇす」
だから、色々話してしまったが……大丈夫だろうか。
何を偉そうに、だとか思われてしまったら……我、かなり傷つくなぁ。
そんな我に対し、シズハは優しく笑ってくれた。
可愛い、凄く可愛い、今すぐに顔をとろけさせたいが……我慢だ。
今はそれをすべきでは無い。
「ふぅちゃんは、ビシッ! と決めましたよぉ。確かにぃ、さっき現れた奴が何言ってんだぁって、思ったけどぉ……格好良いからなんの問題もないでぇすぅ」
「うっうむ、そっそうか……」
優しい言葉を掛けて……くれたのか? なんだか辛辣な言葉に思えて来た。
だっだが、シズハの顔を見てみろ、凄く微笑ましい顔ではないか。
こんな顔をして辛辣な事を言ってるなんてありえない。
恐らく深い意味はないのだ、長い間一緒にいたから間違いない。
「まぁあれだ。悩んでいたのは、シルク君だけじゃ無いみたいだったな」
「そうですねぇ、みぃんな難しい顔をしてましたぁ」
そう言う風に納得した後、食事での皆の顔を思い返す。
名前とかは多分聞いてないから分からないが……シズハの言う通り難しい顔をしていた。
恐らくだが、シルク君とアヤネの一件が原因で悩みが広がってしまったのだろう。
「ここは我がお節介するべきか?」
「その必要は無いですよぉ、ふぅちゃんは何にもしないでくださぁい」
むっ、なんとかしようと思って話してみたが、直ぐに止めるように言われてしまった。
「きっと大丈夫ですよぉ、多分ですけど」
「ふむ、多分……か」
なるほど、至極不透明な感じがするが……そう思う事にしよう。
よくよく思えば、顔の知ってるシルク君の事は兎も角、顔の知らぬ者達の悩みをどうにかするのは止めた方が良いかもしれん。
きっと、悩んでる者達の近くの者がなんとかしてくれるだろう。
しかし……あの者達、角が生えていたり、尻尾が生えていたが……同じ人間なのか? 気になるな。
「あ、それはそれとしてぇ。アヤネちゃんの事、どうするつもりですか?」
「むっ……」
その問い掛けに眉をピクリと動かし、歩く早さを緩める。
「なんにも考えてないんですか?」
「いや、きちんと考えている」
「そうなんですかぁ、安心しましたぁ」
にぱぁっと笑うシズハ、そんな彼女の頭を優しく撫でる。
そしたら気持ち良さそうに眼を細めた……この仕草も可愛い。
「で、どうするんですかぁ」
撫でるのを止めて、こほんっと咳払いする我は、説明する。
「まずはな、この件をしっかり解決してもらう。話しはそれからだ」
「そぉですかぁ」
「うむ。そのあとは……我はアヤネと会って話しをする」
長年会ってなかった、言いたい事も沢山あるが、まずは「親に心配をかけるな」と叱ってやろう。
「その時に、我は聞いてみようと思う」
突然、声を低くした我に、小首を傾げるシズハ。
かなり大事な事を言う、だから真剣さを増すために声が低くなってしまったのだ。
「なんて聞くんですか?」
「……このまま、どうしたいかを聞くのだ」
「家に帰ってこい、とは言わないんですかぁ?」
「言わない、娘が剣を継がないと断言したからな……娘の気持ちは大事にする。しかし、我の問いに何も答えられなかったら問答無用で連れ帰る」
これは本気だ。
答えが出せないのなら、アヤネが思う気持ちはそれまでだったと言う事、その時は家に連れ帰って剣を教える。
それで、全てを忘れさせる。
我が娘に限ってそんな事は無いと思うが……我にそんな心無い事をさせないで欲しい。
だからアヤネよ、気持ちを伝えてこい、好きなら好きだと言い続けろ。
我の娘なら、そう言う強かな心を持て、我は応援しているぞ。
「うふふふぅ」
「ん、なんだ。急に笑って……」
「いやぁ、ふぅちゃんは良いパパだなぁって思っただけですよぉ」
「そっそんな事は無い……」
「あぁ、照れてますぅ、顔真っ赤ですぅ。可愛いぃ」
くっ、そんなにからかわないでくれ。
本当に恥ずかしい……。
「しっシズハは、どっどうなのだ? どうしようと思ってた?」
だから強引に話しを変えてやった、そうしたい気分だからそうした。
「ん? 私ですかぁ。私はぁ、アヤネちゃんに全てを任せますよぉ。人生悪い事をしない程度に好きな様に生きるべし、と言う格言がありますからねぇ、そうさせてあげますよぉ」
「……シズハも、良いママではないか」
「やだもぉ、褒めちゃ嫌ですよぉ」
シズハは照れ臭くなったのか、我の肩をバシバシ叩く。
痛い、痛いのだが……照れるシズハは可愛いから何も言わないでおこう。
「多分、いや……確実にアヤネと別れる事になるが、寂しくはないか?」
「寂しくない、わけないですねぇ」
「そうか、我もそうだ」
確実に、と言ったのはアヤネは絶対に気持ちを伝え、どうしたいかを決めると言う確信があるからだ。
何度も言うがアヤネは強い。
だから、次我と会うときは笑顔で会って欲しい。
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