どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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言うぞ、言ってやる。
俺は何度もその言葉を繰り返し、自分を奮い起たせた。

「アヤネ」
「……っ、な……なに」

声が大きすぎたのか、アヤネは驚いてしまった、少し落ち着こう。
ふぅ……、よしっ落ち着いた。

「話したい事があるんだ」
「あ、私も……あるよ」
「え、そう……なのか?」
「うん」

なんと、アヤネの方からも話があるのか。
これは想定外だ、どうしよう……先に話しを聞くか? 

あのまま話そうかと思ったが、考えてしまう。
いや、考えるまでも無い。
アヤネには悪いが、先に話しを聞いて貰おう。
じゃないと話辛くなる、こうやって気合いが入ってる時に言うのがベストだ。

「悪いが、先に話しを聞いてくれないか?」

という訳でこう話した。

「だめ、先に私が言いたい」

……断られた、だと。
ふんすっ、と鼻息を吹き出すアヤネ、これは断固として意見を変えない時のアヤネ。
困ったな、本当なら先に言ってしまいたい、だけど……。

「私が先に話したい気分、だから話す。良いよね? じゃ話すよ」

まだ俺が"うん"と言ってないのに勝手に話しを進めてしまった。
俺は苦笑いし、仕方無いから話しを聞くことにした。

はぁ……アヤネは相変わらずマイペースだ。
でもこの状況で変な事は言わない筈、だから真剣に聞こう。
それを聞き終わったら俺の話しを聞いて貰おう。

「私、シルクに告白……した。覚えてる?」
「覚えてる」

忘れる訳がない。
つい最近の事だ、例え長い時間が経とうとも忘れないよ、それほど大きな出来事だったんだ。

「その時、振ったよね」

悲しそうな顔をするアヤネに、俺は「あぁ……」と応える。
また暗い気持ちが沸き上がってきた、ダメだ……暗くなるな、今うつ向きそうだがうつ向くな。

まっすぐアヤネを見ろ。
眼を反らすな、何があっても……。

「あの時、すっごく悲しかった」
「……」
「あ、そんな顔しちゃダメ。はい、笑って」

いや、笑えって言われても……それは無理だ。
と言うか、アヤネ……お前は良く笑っていられるな。

なんて思ってたら、ほっぺたをつままれて、むにぃっと頬を無理矢理上げてくる。

「いひゃい、はなしぇ」
「笑って」
「わりゃう、わりゃうから……」

そう言うと、アヤネは離してくれた。

「じゃ、笑って」
「いや、いきなりは……っ! わっ笑う! 笑うから手をこっちに向けるな!」

慌てて笑顔をつくる。
多分、いや絶対ぎこちない事になってるだろうな……。

「へんなの」
「うるさい」

そんな俺の顔を見て、ぷふっと笑いやがった。
お前がやれって言ったんだぞ? 笑うな!

「……あのね」
「ん?」

その時だ、手を後ろにくんで上目使いで俺を見てきた。
その瞬間、心がドキッと高鳴った。

「もう一度……うぅん、シルクがうんって言うまで……何度でも言うね」
「何度でも……?」

気になって口にした。
そしたらアヤネは、恥ずかしそうに、じぃっと見つめてくる。

……そのとき、アヤネが何を言うのか分かった。
それが分かったとき、顔が少しずつ赤くなっていくのが分かった。

トクっ……トクっ……トクっ……そんな感じに心臓の鼓動が早くなっていく、だから胸を押さえた。
そして、アヤネの言葉を待った……。

「シルク、大好き……だから私と付き合って。お願い……」

切ない視線、そして願いのこもった視線。
そんな視線を向けられ、少しだけ怖じけずいた……。

アヤネは自分の気持ちを伝えた。
……今度は俺の番だ。
アヤネは強い、だから……俺は……もう一度、アヤネを振る。

その時がきたんだ。

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