どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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あれから私は、無理矢理食堂から連れ出された。
今は誰もいない部屋にいる、そこの椅子に私は座ってる、パパは前の椅子に座ってる。

話し変わるけど、私……初めから食堂にいなかったんだけど、気付いたら食堂にいた。
シルクが言うには、らっ君が運んだらしい。

……らっ君には後でお説教しよう。

「さて、先ずは……元気そうで何より、と言おうか」

ピリッとした空気、私の大嫌いな空気。
肌がヒリヒリする、ちょっぴり息苦しい。
パパの鋭い視線が突き刺さってるから余計に嫌な雰囲気、今すぐここから出て行きたい気分……。

「うん、私は元気」

だけど、そんな事無理。
だって、後ろにママがいるんだもん。
ママからは逃げられない、後ろからのプレッシャーが凄い、逃げる仕草をした瞬間……きっと酷い目に合う。
だから今は逃げない、我慢しよ。

「そうか、元気か……ならば本題にうつるぞ」

移るの? 別にうつんなくても良いのに。

「アヤネ……」

きっと、家出したこと怒るんだ。
だって、仕方無いでしょ? シルクの事が好きだったんだもん。
好きな人と……一緒にいたかったんだもん。

そんな事を思って、きゅっと目をつむった。
きっと、げんこつの1発や2発とんでくる、そう思ったから。

……? おかしい、げんこつが来ない。
可笑しいなぁって思って、目を開けてみると、パパがじぃっと私を見てた。
そして、大きく息を吐いて……。

「親に心配掛けるんじゃない」

こう言った。
家にいる時のパパの顔じゃなかった、悲しい顔をしてる。
……なんだか、胸が熱くなった。
心配かけるな……そんな事言われるなんて思ってなかった。

「そうよ、ママも心配したんだから」

後ろから優しく抱き付いてくるママ、とっても暖かい、それに……優しさを感じる。

「……ごめん、なさい」

自然と言葉が出てた。
思ってた事と違う、怒られるかと思った、怒って良いことなのに……優しい言葉を掛けられた。

私、良いパパとママの間に生まれた、嬉しい……。
その事にくすっと笑うと「どうした?」とパパが聞いてきた。
だから、ふるふると首を振って「なんでも無い」と答えた。

「うむ。分かれば良い……」

パパは、ゆっくり頷きながらそう言った。
そして、また私をじっと見てくる。

「アヤネ」
「なに?」

……今度はなにを言うの? もしかして、帰るぞって言うのかな? うん、きっとそうだ……きっとそう言うんだ。
今さっきの話だと、そう言うよね。
でも、それに返す言葉はもう出来てる、それを言おう。

「シルク君に、想いは伝えたか?」
「っ!?」
「そう、驚くな。だいたいの事はシズハから聞いた」
「はぁい、私が教えましたぁ」

……なっなんか、凄い事言い出した。
えと、あの……うん、どうしよ、なんて言えば良いか分かんない。
とっ取り合えず……なんでも良いからなんか言お。

「えと……うっうん、想いは伝えた……よ」
「お。そうか……伝えたのか」

1度振られたのに、もう1度気持ちを伝えるのは……勇気いった。
ずっとドキドキしてた、でも言えた。
いっ言えたのは良いんだけど……なんでパパとママがそんな事を聞くの? とっと言うか、なんで知れ渡ってるの?
……あ、そうか。
誰かが話したんだ、きっとそうだ。

「良くやった。それでこそ我の娘だ」

いつもは厳つい顔なんだけど、その顔がにこって笑った。
ちょっぴり怖い、だけどこれがパパの褒める時の顔。
ママも後ろから「良くやりましたぁ」と言ってくれる。
それと、拍手もしてくれた……なんか照れちゃう。

「……敢えてシルク君がどう答えたかは聞かない」

聞かないんだ。
まぁ、別に良いけど。

「しかし……1つ聞きたい事がある。心して答えなさい」

っ!!
優しい顔がいっぺんした、またピリピリしてきた。
ごくっ……と唾を飲み込むと、険しい顔をしたパパが……。

「このまま、どうしたいのだ?」

こう言ってきた。
どうしたいかって……そんなの決まってる。
と言うか、また聞かれると思ってない事を聞かれた。
でも、きちんと答えるよ……だって、大切な事だと思うから。

私は軽く深呼吸した後、自分なりに答えを考え……答えた。

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