どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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ロアの突然の勝負宣言、その事は直ぐに城下街中にひろまった。
そりゃそうだ、わざわざ街で宣言したんだから……。

で、ロアの勝負発言が終わった後、俺は魔王城に強制的に連れて帰らされてしまう。

早く帰って来た俺を見て、皆は驚いていた。
しかしロアの発言により、更に驚く事になった。

「アヤネと勝負する事になったのじゃ!!」

それを聞いた瞬間、皆は口をぽかぁんと開け。
口々に「どうしてこうなった」と突っ込んだ。
うん、ナイスな突っ込みだ……ははは、ほんと、ナイスだよ。



「……るく君?」
「はは、ははは……はははは」
「シルク君ってば!」

っ! 誰かに強く肩を揺らされ……俺は驚き慌てて周りを見渡した。
あ、れ……ここはロアの……部屋? なんで、ここに……あ……そうか、ロアが皆に「アヤネと勝負するのじゃ」と言った後、俺……ロアの部屋に連れて来られたんだよな。

他の奴等はどっかへ行って、俺は待たされた。
その待ってる間、前のロアとアヤネの戦いを思い出してたんだ。

その思い出があまりにも……その、あれ過ぎて……放心してしまったらしい。

「っ!? っ……なっなんだ、ラキュか」

だから、すっごく驚いた。
ラキュ……いつの間にか来てたんだな、全く気がつかなかった。

俺が驚くのをみてラキュも驚いたが、直ぐに平静を取り戻し、心配そうにこんな事を聞いてきた。

「いや。なんだじゃないよ、急に笑い初めたからビックリしたよ、どうかした?」

……はは、それについては、その……聞かないで欲しい。
色々と、思い出したくない事が沢山あるんだ。

「なっなんか、良くわからないけど……聞かない方が良さそうだね」

お、俺の暗い微笑みを見て察してくれたな、ありがたい。
そう思って頷いた。

「なぁ……また、あの勝負が始まるな」
「え? あぁ……うん。そうだね」

なんか、俺を見るラキュの顔が妙にひきつってる。
はて、どうかしたのか? それとも……俺の顔がなにか変なのか?
まぁ……それはおいといて。

「今度はなにをするんだろうな……というか、なんでこんな事になったんだろ」
「そっそうだね。ほんと訳分かんないよ……とっところでシルク君?」
「ん、どうした?」

ラキュが焦りながら頬を掻いてる。
珍しいな、ラキュがこんな顔を見せるなんて……。

「ほんとに大丈夫?」
「え、なにがだ?」
「その……えと、すっごい目が虚ろだからさ……」

え? 虚ろ? そうか……俺って、そんな目をしてたのか。

「もしかして、不安とか感じてるの?」
「……」
「聞くまでも無かったね」

不安、か。
まぁそれは大いにある。
それともう1つ、俺が思ってるのは……前とは遥かに違う壮大な戦いになる気がする。

そうなったとしたらだ……俺への被害が尋常じゃ無い事になる。
え? なぜ自分の心配をするかって? そりゃあの二人が勝負するんだ……俺が巻き込まれるのは確実だ。
いつも通り拒否権なんて無い。

つまりだ、前の時みたいに料理を食べてぶっ倒れる、と言う悲惨な事件以上の事が起きるって事だ。
虚ろな目をするのも仕方無いのだ。

「なぁ、アヤネとロアはなにをしてた?」

とまぁ、そんな事を考えるのは止めにして……聞いてみた。
そしたら、苦笑いしつつこう答えてくれた。

「ヴァーム達と話ししてたよ。他の奴等は……遠目で見てたね」

なるほど、話し合ってたのか。
大方、勝負の内容とかを決めてるんだろう……。

「姉上、あの事を言うつもりが勝負仕掛けてどうするつもりさ……」
「……え?」

ラキュがなにか言った気がする。
気になるな……聞き返すか。

ガチャーー
ん? 扉が開いた……あ、ロアとアヤネ……ヴァームもいる。
いや、残りのメンバーもいるな、ぞろぞろとやって来たぞ。

「待たせたなシルクよ!」
「待った?」

やる気に満ちた顔のロア、そして何故かむんっと胸を張るアヤネ……。
残りの奴等は何処か面倒そうな顔をしている。
あぁ、そうか……考えればこいつ等も巻き込まれた感じか。

「勝負の内容が決まったぞ!」

そんな面倒なんて知るよしも無いロアは高らかに宣言するっ。

「勝負の内容は……料理じゃ!」

ドドンッーーと発表を終えると、周りがしーんとなる。
料理……よりにもよって料理と来たか。
あ、でも……アヤネ、前より料理が上達したから今回は平気か。
ロアの方は特に問題は無かった様な気がする。

と思ったが、俺はその思いを払い捨てる。
そんな甘い考えなんてするな……過去の出来事を思い出せ。
油断してたら痛い目を見る。

「くふふふふ……シルクよ、せいぜい楽しみにするが良い。わらわの料理を味合わせてやるのじゃ!」
「私もやるよ、とっておきを披露するっ」

俺がそんな事を考えてるなんて思いもせずに、にっこりと言ってくる。
そして、ロアとアヤネはお互いを睨み付け火花を散らす。

ほんと、改めて言うようだが……なにがどうしてこうなったのか訳が分からん。

訳も分からず、また周りを巻き込むイベントが始まってしまった。
ほんと、迷惑な奴だよまったく……。

まぁ、なんにせよ……気合い入れて見守るとするか。

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