どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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微睡みの中でハッキリと感じる。
右腕が、柔らかいのに触れている。
手を動かしてみると、むにむにとした弾力があるのが分かる。
やらかい、さわり心地が良い……そう感じた瞬間、俺は即だに目を覚まし上体を起こした。

「くふふふふ、朝からおさかんじゃな。わらわもラッキースケベを体験したぞ、くはははは!」
「…………」

朝からやってくれる。
なにがおさかんだ、自分で触らせた癖に。

「くふふふぅ、そんな冷えきった視線を向けるものではないぞ?」
「なら、朝っぱらから胸を押し付けてくるのは止めてくれないか?」
「断るのじゃ」

……こんな感じの何時ものやり取りに呆れつつ、強引にロアを引き剥がす。
「あんっ」とか悲鳴をあげたが容赦はしない。

「毎朝毎朝、俺に抱き付いて来て飽きないのか?」
「飽きるものか。愛しておるからな」

聞いてるこっちが照れ臭くなる事を良く平然と言えるなぁ。
そう思い、ベットから降りる、そして背伸びする。

「ふっあぁぁぁぁ……ねむ」

涼しくなりと眠くなるんだよな……もっと寝てたいが、寝てたら変な事が起きそうだから起きる。
と言うか、ロア……今日は珍しく、すっと起きるんだな。

いつもなら、朝は暫く布団にくるまってるのに。

「ん? どした、じっとみつめおって」
「……なんでも無い」
「ほぉ、そうかえ」

気になって見てしまった……さっと視線を反らして、何気なく窓の方へ向かう。
カーテン開けよ、陽射しを浴びれば目も冴えるだろう。

「あ、シルクよ」

そうしようと思ったが、ロアに呼び止められる。
なんだ? と思いながら振り替えると、ロアは身体を起こしていた。

「どした?」
「あ、いや……ちょっとな、言いたい事があるのじゃ」

ほぉ、言いたい事か。

「なんだ?」
「あぁ……そのぉ、あれじゃよアレ」
「ん、アレ?」

アレってなんだ?
小首を傾げると、ロアはもじもじしだした。

「そう、アレじゃよアレ」
「いや、アレじゃ分からん」

くははははって笑ってないで、ちゃんと説明してくれ。
全く分からないぞ。

「あぁ……その、な?」
「いや、な? って言われても」

めちゃくちゃ困る。
もじもじしてないで、ハッキリ言ってくれ。

「うぁぁぁ……」

おっおぅ、なんか頭をカリカリ掻き出したな。
異様にモジモジしてる……なんだ? 明らかに様子が変だ。

「ちょっ、ちょっとこっちへ……」
「え?」
「はよう、こっちへ」

なんか手招きされた。
なんか、気味悪いが……行くか。

「なんだ? って、うぉっ」

てっ手を握ってきた。
相変わらずやらかい……。

「その、えと……ぅぅぅ」

なっなんで上目使いで見てくるんだろう……良く分からんが……喋るまで待った方がいい気がする。
よし、待とうか……。

「その、あの……シルク」
「ん?」

でも、手を握ったままなのは……気恥ずかしい。
こっちもモジモジしてきたぞ。

「お主はさ……その、言ったであろう?」
「言ったって……何をだ?」
「何って、アレじゃよ……すっすすっ、好きな人がいるとか、そっそう言うことを……」

ん? あぁ……いったな。
確かに言った、だが……それがどうした?

「その、名を……」
「あぁ、ナハトだ」
「そう、それじゃ! それ!」
「っ」

ずいっ! と顔を近付けて来る。
近い、すごく近い……それと、手、強く握ってきた。
あぁ……なんだか知らんが、妙な気迫を感じる。

「その、ナハト……とか言う奴はじゃな……」

ん? 後半ごにょごにょ言ってて聞き取れなかった。

「え? すまんもう1回言ってくれ。ナハトがなんだって?」
「うぇっ!? あ、えと……くははははぁ、なっナハトは……えと、その……じっ実はぁ……」

おぉ、またごにょごにょ言ってる、これじゃぁ聞き取れない。
目も泳いで、俺を見ようとしない。
ナハトがどうしたんだ? と言うか、ナハトの話をするのか? ロアが?

なんで? ナハトは人間でロアは魔族なのに。
面識があった? いやいやいや、そんな筈は無い。
だって、住む世界が違う。
会える筈がない。

なのに、ナハトの話をしようとしてる……のか? ハッキリとは分からないが、そんな気がする。

と言うかいきなりどした?
明らかに様子が変だぞ? 困惑した俺は苦笑いし、以前「あの……その……」と話してるロアを見つめた。

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