どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

454

シルクが、ロアを追い掛けている頃。
別の場所では、こんな事が起きていた……。


「クーも突発的に行動するんだね。まさか、朝食を食べにこないか? って呼ばれるなんてね……」

スタスタと歩きながら、今まさに独り言で言った通りの事を呟いて城下街地下を歩いてた。

昨日、何の気なしにクーの家に行ったら突然招待されたんだ。
驚いたね、なにせいきなりだったんだもん。
まぁでも、断る理由も無かったから「じゃぁ、ご馳走させてもらおうかな」と返事した。

だから今まさに、クーの家へと向かってるんだ。
相変わらず暗い道をてくてく歩きながら色々思いをはせてみる。

今、姉上はどうしてるかな? あの料理勝負の一件で変に焦って、言おう言おうと息巻いて変な事になってないと良いけど……。
あと、アヤネはどうしてるかな? 寝てる? それとも何処かを歩いてる?

あ、そう言えば……こっちから全くアプローチしてない気がする。
他人の心配してる場合じゃ無いのかも知れないね……。
でも、心配するんだよなぁ……またアヤネとロアが偶然出会して、言い合いになったりするかもしれないんだよねぇ。

「それが原因で、また姉上が勝負仕掛けないと良いけど……」

3回目は流石にダメだよ。
と言うか、あれはほんと……なんで? って思ったよ。
まぁ、姉上も同じ事は繰り返さないだろうし、きっと大丈夫かな。
……大丈夫、だよね?

「……ついた」

なんて考えたらついた。
よし、ドア叩いてクーを呼ぼう。
そう思ってドアの前にたつ、そして意味もなく咳払いして、コンコンコンッて叩いた。

「ひゃわっ! はっはぁいぃぃっ!!」

ドカッ……ガシャ! ドシンッ!

「ぁうあっ!?」

……なっなんか、中が騒がしいね。
慌ただしく動いて転けた様な音が聞こえる。
しかも、随分焦ってた声がした。

「相変わらず客人の対応には慣れないんだね……」

まぁ、良いんだけどさ。
あ、と言うか、ドア叩いただけでなんも言ってない。
うん……魔物見知りするクーにとって、それは怖いよね。
よし、言おっか……。

「えと……クー? 僕だよ。招待されたから来たんだけど……大丈夫?」

これで、僕だって分かって安心するよね。
これで落ち着いてくれると嬉しいんだけど……どうかな?

「ふぇぁ!? らっラキュ……君ですか? いっ今……あ、開けます」

うん、大丈夫そうだね。
若干、声が震えてたけど……。

「…………?」

あ、あれ? 中々ドアが開かない。
もっもしかして何かやってる? お客が来たのに?

「クー? どうかした? 大丈夫?」

試しに話し掛けてみる。

「ひゃわぁっ」

おぅ、小さな悲鳴が聞こえた。
これ……絶対何かあったよね? なんか、異様な雰囲気が出始めたよ。

「鍵してないよね? 入って良いかな?」

だからこういって見た。

「だっだだだっ、ダメ!!」

えぇぇ……ダメなの? 招待したのに? それ、可笑しくないかな。
折角来たのに……、あぁ困ったなぁ、どうしよっか。

そろそろ周りの視線が気になってくるんだよね。
だって、さっきから家の前に立ってるんだし……。
だから早く入りたい、と言うか呼んだんなら、すっと入れてよ。

「だっ、ダメ……やっぱり、ダメ……あ、でも。うぅぅ……」

訳がわからない。
これ、なんの時間? もしかして待たされてる? 僕、待たされてるの?

「えと、なにか準備する事があるなら待つけど?」
「え!? あっ……じゅっ、じゅっ……準備は、出来てる……んです」
「出来てるなら入れて欲しいんだけど? そろそろドア越しの会話するの、恥ずかしいんだけど」
「……じゃ。ちょっと待って……ください」

え、待たせるんだ。
散々ここで待たせてるのに……これ、あれだね、家に入ったら文句の1つや2つ言いたい気分だよ。

よし、決めた。
なにか言ってやろっと……と、こんな事を思った僕は、取り合えず家壁にもたれてクーが準備出来るまで待った。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品