どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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どうも、現在呼吸を小さくしてヴァームの背後に身を潜めておるわらわじゃ。

なんでそんな事をするのかの理由は……シルクから逃げる為じゃ。
じゃが、もう逃げる必要は無くなった、何故ならシルクはヴァームの説得で向こうに行ってしまったからのぅ。
じゃが一応用心しよう、シルクの姿が見えないのであればわらわは姿をあらわそうではないな。

と言う訳でチラリとヴァームの陰から前を見てみる。
……ふむ、誰もいないな。どうやらシルクは完全に何処かにいったらしい。

ならば、もう隠れる必要は無いな。
そう思って、ヴァームの後ろから出てくる。
そして、安心して胸を撫で下ろす。
ふぃぃ……いやぁ参った参った、運良くヴァームがいて助かったのぅ。

「ロア様」 
「あ、ヴァームよ。いやぁ助かった、恩にきる……って、なんじゃその顔」
「さぁ……なぜでしょうね? 恐らく偶然ここを通り掛かったらロア様が現れてかくまえ! と言われたからではないでしょうか?」

なぜでしょう? とか言っときながら明確な理由、出とるではないか。
くっそぅ、露骨に嫌味を言ってきおるなぁ。

「いっいや、これには深い訳がじゃな……」

じゃが、言われっぱなしで終わるわらわではない! 正当な理由で、その冷たい眼を止めさせてやろう。

「シルク様に過去に会ったナハトと言う女性はわらわだ……と言おうとしたは良いけれど、恥ずかしくなって私に助けを求めた……と言った感じでしょうか?」

と思った瞬間じゃ……図星をつかれた。
まさにその通りじゃ、くっぐぬぬっ……何も言えなくなってしまった。
なでじゃ? なで分かった? わらわ、表情に出てた? そんな筈ないんじゃけどなぁ……。

って、おいこら、なぜため息をはく? その呆れた顔は止めろ! こっここはひとつビシッ! と言われねばならんな。

「結局言えませんでしたね、次は必ず言うと仰っていましたのに」

…………と思ったけど止めておこう。
取り敢えず気まずいから目線をそらしておこうかの。

「ロア様? なぜ目線を反らすのです?」

くははははぁ、何故じゃろうなぁ。
と言うか、わらわそんな事言ったかのぅ?
……あ、思い出した、きちんと記憶に残っとるわ。
確かに言った、じゃが言えんかったなぁ……くはははは。
って、笑っとる場合じゃないの。

「もしかして……図星、ですか?」

スッとわらわの肩に手を置いて顔を覗いて来る。
ぐっ、いっ言わせておけば好き勝手言いおってぇぇぇ……こっこうなったら、わらわにも考えがあるぞ。
かんぷなきまでに図星をつかれ、わらわがイライラした時に使う秘技をのぅ……。

「っ! えぇぇぇいっ、うるさいうるさいうるさぁぁぁいっ!! わらわだって色々あるんじゃい! わらわの気持ちを考えんか馬鹿者!」

その名もっ、逆ギレじゃ!
ポイントは大声で喚き倒し、腕を大きく振ったり、地団駄振ったりする動作を感情を込めまくってするのがポイントじゃ。

くふふふ……よもやここで使う事になろうとはな。
これを見ればヴァームは「言い過ぎました」と言うに違いない! すなわち誤魔化し話をうやむやに出来たと言う訳じゃ!

「は?」

ビクッーー!
ヴぁっヴァっヴぁヴァームから怒気があふれておる。
こっこわい、すっごく怖い! 「言い過ぎました」と言わせる所か怒らせてしまったのじゃ!

もう背中から、ドドドドッて感じに怒りのオーラが出ておる。

「あ、ごっごめん……なさい」

じゃから直ぐ様、怯えながら頭を下げた。
ぐぬぅ……従者相手に頭を下げるなんて……でっでも、怖いから仕方ないじゃろ?

「ロア様? 自分から言ったんですからね? それを分かってますか?」
「うっうむ、分かっておる」
「なのに、逆ギレって……どういう事ですか?」
「え、あぁ……それは、そのぉじゃな……」
「……目を反らさないで下さい」
「うぐっ……」

せっ説教じゃ、説教が始まった。
わらわは魔王なのに、従者に説教されてる、しかも廊下で……。
じゃから「とっ取り敢えず場所を移さぬか? ここ、廊下じゃし」と言おうと思った。

しかし……激しく睨まれ怯えてしまった。
くっそぅ、わらわの身体が覚えておる、あの時のヴァームの怖さを……そう、第二次料理対決の時のヴァームの怒った姿を。

うぅぅぅ、思い出したらまた震えてきおった。
とっと言うか、こんな所誰かに見られたら恥ずかしいではないか!

こっこうなれば、誰も来ないことを願うしか……。

「ねぇ、廊下で堂々と説教されてるけど……どうかした?」

ない! と思った矢先、これじゃよ。
この声、見なくても分かる……ラキュじゃ、よりにもよってこいつが来るとはのぅ。

「取り敢えず話だけ聞かせてよ、興味あるからさ」

ニッと笑ったラキュは、わらわの側へよってくる。
くっ……こやつめ、明らかにからかう気満々ではないか! ふんっ……誰が言うものか、お前には教えてやらんわ!

「ロア様、張り切ってシルク様に自分がナハトだと言ってやるのじゃ、と言ったのにも関わらず、言えずに逃げ出し、あげく私の後ろに隠れたので……説教してるのです」

と思った瞬間、直ぐにヴァームが話おった!
え? なんで話すんじゃ!? 真顔で何のちゅうちょも無く言いおったぞ! 嫌がらせか? わらわに対する嫌がらせか? だっダメなんじゃぞ! それはイジメなんじゃぞ!

「ちょっ! ヴァーム何を言うんじゃ! 馬鹿者ぉぉぉっ!!」

そう思いながら、ぎゃいぎゃい叫ぶわらわを無視し、ヴァームはラキュに詳しく話しをしていく。

はぁ……気のせいかのぅ、わらわ魔王なのに扱いが酷い気がするのじゃ。
そう思ったわらわは、ガックリと肩を落とすのであった。

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