どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

409

私は泣いた、どのくらい泣いたか分からないくらい泣き続けた。

「落ち着き、ました……か」
「……ぅん」

泣き終わった後は、声がガラガラになっちゃった。
だから今、クーちゃんにお茶を貰ってる、それをクピクピ飲んでいる。

あぁ、喉が痛いときに飲む暖かい紅茶……美味しい。
砂糖がたっぷり入ってるから余計に美味しく感じる。

「泣いて、スッキリ……しました……か?」
「ちょびっとだけ」

顔を少しだけ傾けて聞いてくるクーちゃんに、うつ向きながら答える。
ほんと、気持ちがちょびっとだけスッキリした。

でも、まだ辛いのが取れてない。
まだ泣き足りないの? 想いは全部吐き出したのに。

「そう……ですか」

唇をきゅっと噛み締めるクーちゃん、暫くそうした後口を開いた。

 「じゃぁ……もうちょっと、こうしましょう……か?」
「っ」

ぴとっ、とまた身体をくっ付けてくるクーちゃん。
また私を抱き締めてくる、うっ……うぅ、ちっ違う、別に、そんな事……して、欲しくない、と言うか、これ……恥ずかしい。

「恥ずかしいから……やめて」
「あ、え……ごっごめん……なさい」

だからその気持ちを伝えつつ、ぐいっ! とクーちゃんを引き剥がした。
申し訳なさそうな顔をして謝ってくるクーちゃんはペコリと頭を下げた。

ふわっと髪が揺れる、仄かに太陽の香りがした。
良い匂い、ぷっくりとした頬、ほんのちょっぴりのソバカス、それに……このふわふわのソバージュヘア。

可愛い……こんな可愛い娘に謝られちゃうと、変な気持ちになっちゃう。
こんな状況でこんな事を思っちゃった私は、ブンブンと頭を振るう、そんな時。

「やっぱり、まだ……かっ帰りたいって、おっ思ってるん……ですか?」

伏せ眼にして、髪を弄りながらこんな事を言ってきた。
やっぱり帰りたいんですか? か。
さっきまで「うん」とか「さっきからそう言ってる」とかクーちゃんに言ってた。

さっき色んな気持ちを泣いて吐き出して気付いた。
あの時の私は強がってた、強がってなきゃどうにかなっちゃいそうで、あんな事を言っちゃった。

でも今は、さっきまで言ってた強がりを言う気分にはならない。
だって私がキツく当たっても、クーちゃんは私を慰めてくれた。

迷惑だとか思っちゃったけど、それは……もう前の話し。
今は違う、だから……その気持ちを伝えなきゃいけない。

ぎゅっと手を握って拳をつくる。
そして、眼をキリッとさせクーちゃんを見つめる、しっかり聞いてね、今から私の本心を言うよ。

「ほんとは、帰りたくない。だって……シルクの事は振られた今も、好きだもん。でも……シルクはロアの事が好き、だからシルクはロアと一緒にいるべき、私が無理矢理取っちゃダメなの。そんな事したら……きっとシルクは悲しんじゃう。私は、そんなの嫌……好きな人には笑顔で居て欲しい……だから……だからね? 私、家に帰った方が良いんだと思う。だって……私は邪魔者だもん。私がいたら……シルクは幸せになれない、だから私……ほんとはここに居たいけど、家に帰る」

長い長い言葉、途中辛くなって言葉を詰まらせたりもした。
それなのにクーちゃんはしっかり聞いてくれた。
時々頷いたり、驚いたり、眼を見開いたり、そんな反応をとってた。
私は……また泣きそうだった、でも我慢した、これ以上泣き顔をクーちゃんに見られたくない。

だから、唇を咬んで泣くのを我慢した。
じわっと血の味を感じたけど関係ない、我慢……しないと。
そうしないと、シルクは……幸せになれない。
これは絶対にしないとダメな事、ワガママは言っちゃダメ。

だからね、泣かないでよ私。
涙を流さないでよ? 素直な気持ち言ったんだよ? 涙止まってよ、泣き止んでよ……気持ちもスッキリしてよ。
これ以上モヤモヤしないで……苦しいよ、これ以上……苦しいのは、嫌。

そんな感情に襲われ、私は眼を瞑った。
このまま、眠ってしまいたい位に苦しい。
だ、自分の胸に手を当てた……うわ、心臓凄く脈打ってる。

胸が苦しい筈だ、こんなに動いてちゃこうなる。
……あぁやだなぁ、やっぱりヤダよ、シルクと離れるのは……やっぱり……イヤだ。

スパァァンッーー

「ひゃっ!!」

え? え? なっなに、なに!? あっ頭に何か当たった? 軽く何か当たったよ? ビックリして眼を開けてみると、頬を膨らませたクーちゃんが私を睨んでた。
え、もしかしてクーちゃん……私の頭、叩いた?

「バカじゃないですか? なんですかそれっ! なんでそうなるんですか!!」

いつもと違ってハキハキ喋るクーちゃんが凄んでくる。
私は、ビックリして口を開けてぼぉっとしちゃった。
そんなクーちゃんは、私にずいっと近づいてくる。
だから身体を後ろに倒すんだけど、構わず顔を近づけてくる。

こっ怖い、クーちゃん怖い、なっなに? わっ私……なにされるの?
いつもと違う雰囲気を出すクーちゃんに恐怖した私はプルプル震える。

くっクーちゃん……なっなんで、怒ってるの? 私、なにも変な事……言ってないのに。

そう思った私は、怯えた眼でクーちゃんを見つめた。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品