どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

411

顔が真っ赤なクーちゃんは、話の続きを始める。
私は膝に手を当てて聞く。

「えと、その娘は……魔物で、はっ恥ずかしがり屋で……自分に自信の無い魔物なの」
「へぇ……」

なんかクーちゃんに似た娘だね。
じゃぁ、被り物とかしてたのかな? してたんなら被り物取ったら、今のクーちゃんみたいに綺麗なんだろうなぁ。

ぽへぇっと考え事をしてると、クーちゃんは恥ずかしそうに顔を伏せる。
そして、再び話し出した。

「その娘は……その、えと……まっ街を、歩いてたの」
「へぇ」

街、その街は……この街なのかな? そう思って良いのかな? よしっ、一応この街と言う事にしておこ。

「他の魔物に見られない様に、路地裏を通って……家に帰ろうとしたの」
「その娘、クーちゃんみたいだね」
「え、あっ、そっそう……ですね」

? なんか慌ててる、すっごく汗かいてる、なんでだろ。

「あっあの、えと……そっその娘は、その……とある魔物と会ったんです」
「とある魔物?」
「はっはい、とっ……とっても格好良くて、その……やっ優しくて、でっでも……いっ意地悪な魔物……です」

そんな魔物いるんだ。
私も会ってみたいかも、で……その魔物と出会って何があったの?

「で、ですね……。その魔物と会って、その娘……恥ずかしがって色々やっちゃったん……です」
「そうなんだ。ん? クーちゃん、なんでこっち向いて喋んないの?」
「っ!? あ、えっ! きっ気にしないで……下さい」

ふぅん、気にしないで……か。
だったら気にしない、気になるけど気にしない。

「それで、それからどうなったの?」

だから、話しを進める為にこっちから話しを振ってみる。
そしたら、クーちゃんは肩をびくっ! と揺らした。

「あ、うぅ……。そっその後は……いっ色々あって、なっ仲良く……なれました」
「色々?」
「はっはい、色々です」
「色々ってなに?」
「いっ色々は色々です」

ぜんぜん分かんない。
詳しく言ってくれない、と言うか、さっきからクーちゃんの顔が赤いまま。
顔から湯気出そうなくらいまっかっか。
大丈夫? ただ話してるだけなのに体調悪くなってない? もしかして……私の事助け過ぎて疲れたの?

「クーちゃん、大丈夫?」
「だっだだっ、だっ大丈夫でしゅる!?」

でしゅる……これ、どうみても大丈夫に見えない。

「話すの止めにしよ」
「だっダメです!」
「でも」
「あっあっあたいは! だっだいじょぶです!」
「いや、でも……」
「だっ、だいじょぶなんですっ!」
「しんぱ」
「心配無いです! だ……だいじょぶですからっ! 問題……ないですから!」

鼻息が荒い、ここまで大丈夫をアピールしてくるなら大丈夫なのかもしれない。

「はっ話しを……続けます……よ」

なんて思ってたら、話しを続けた。

「えと、その……色々あって、なっ仲良く……なってく内に……あっあたい……じゃなくて! そっその娘! その娘は……ラキ、じゃなくて! そっその魔物の事を……すっ好きになったんですっ」
「っ」

おぉ……。
適度に反応して聞いてたけど、これ恋の話なんだ。
だからクーちゃんは顔を赤くしてたの? 話すの恥ずかしかったから? でも、他人……じゃなくて他魔の恋話なら恥ずかしくないと思うけど、それは人それぞれだよね、クーちゃんは恥ずかしかったんだ。

うん、納得した。
でも……途中咳払いしたり誤魔化したりしてたっぽいのは私の気のせい? 妙に眼が泳いでる……まぁ気のせいだよね。
話に集中しよう。

「その、すっ好きに……なってね、その娘……自分を変えようと思って、どっ努力……したの」

あ、なんだろ。
今……私と似てるって思っちゃった。
好きな人の為に頑張ったんだ。

「その魔物はね……たまに家に来て、おっお話し……するの」
「お話しって、どんな話しするの?」 
「え? あ、えと……たっ他愛の無い話ですっ。今日何があったぁっとか……そっそう言う、やっ奴……です」

他愛の無い話し……そう言えば、シルクとも他愛の無い話ししたかも。
あの時、とっても楽しかった、いっぱいいっぱい話して、気が付けば長い時間話してて、喋り疲れてシルクの肩によりそって寝ちゃった時もあった。

その時、シルクが自分の家に連れてって、私をベットに寝かせてくれた事があむた……あれはすごく嬉しかった。
今でも良い想い出、あっ……まずい、こんな事思い出したら……切なくなっちゃう。

そんな気持ちになったけど、クーちゃんは再び話し出す。
私は、うつ向くのを堪えてクーちゃんの方を見る。

「そっその時に……いっ色々、きっ聞いたん……です。その魔物の、すっ好きな事……とか。好きな食べ物とか」
「……それ、私も聞いた」
「あっアヤネちゃんも?」
「うん。さりげなく、好きな食べ物なに? って聞いた」
「そっそう……ですか」

? なんで苦笑いするの? なにか変な事言った?

「えっえと。そのっその時に……ね、うぅぅ」
「?」

きゅっ、と唇を閉じて眼を細める。
なんだかとっても言い辛そう、手と手をパシッと合わせて指をモゾモゾ動かしてる。
それを暫く続けた後、口を開いた。

「ゆっ勇気を出して……きっ聞いたんです!」
「っ、なっ……なんて聞いたの?」

突然大きな声だしたから驚いちゃった。
驚きつつも気になった事を聞いてみると……。

「すっ好きな……たっタイプの事……です」

ハッキリ答えてくれた。
すごい、その娘……恥ずかしがり屋なのに踏み込んだ事を聞いた。

「それで、その魔物は……なんて答えたの?」
「えっえと。そっそれは……」

うぅぅっ、そこで話すの止められるともどかしくなっちゃう。
早く答えてって言いたくなる、でっでも我慢っ、クーちゃんのペースに合わせよう。

「そっそのっ、たっタイプは……だっダメな娘が……好きって言いました」

え、ダメな娘? 変な好み……だね。
思わずきょとんとしちゃった、その時「そっそれと」とクーちゃんは続ける。
話しはまだ続くみたい。

「頑張ってる娘が好きって……言ってました」

頑張ってる娘……。
なんと言うか、他の人も言いそうな好きなタイプだ。
でも……良い好みしてる、頑張ってる娘は良いよね、頑張らない娘よりずっと輝いてるもん。
そう思いながら、うんうんと首を振ってると……なにかピンっ! と来る物があった。

ん? あれ……それ、どこかで聞いた事があるかもしれない。
分かんないけど、私の脳内がそう感じてる。
えと……なんだろ、どこだったかな? それとも、そんな事聞いた事無かった? 私の記憶違い? でっでも……なにか引っ掛かる。

んんんっ……えぇと、なんだろ、思い出せない、何かあると思った……っ!! 来たっ今来た! ビビビッて来た! 思い出した!

かもしれないじゃない、確かに聞いた。
今思い出したっ、それ……海で肝試しして私が崖から落ちてらっ君に助けてもらって洞窟で休んでた時、らっ君が言ってた好きなタイプと同じだ。

え、じゃぁ……もしかして、クータンの話す娘って……らっ君の事が……好きなの? あ、でも……他の魔物なのかも知れない。

その事に色々考えて難しい顔をする私は、無意識に口を開いてた。
そんな私に構わず、クーちゃんは話しを続けていく……。

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