どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

412

クーちゃんは話しを続ける。

「そっそれを聞いた時、頑張ろって……決心した……んです」

そっか、それで決心したんだ。
好きな人の為に頑張って、人見知りを治そうとしたんだ。

すごい、その娘……本当にその魔物の事が好きなんだ。
その事を聞いただけで、そう感じるよ。

「あ、あの……あっアヤネちゃん!」

わ、びっくりした。
また大きな声だしたね、あれ? なんか、さっきより視線が定まってない気がする。

「なぁに」

とりあえず、返事するとクーちゃんはパチンっと手を合わせる。

「だっ大事な話、だから……ちゃんと、眼を見て……はっ話したかったんどけど……げっ限界、だから……被り物……被って……良いですか?」

あ、もしかしてもう限界? そう言えば息使いが荒荒しくなってる、そか、限界なんだ。

「いいよ」
「あっ、ありがとう……ございますっ」

コクリと頷いて答えてあげると、感謝しながら近くに置いてあった被り物を被る。
これでいつものクーちゃんに戻った。

「ふぅ……ひぃ……はぁ……」

よっぽど素顔を出したのが疲れたのか肩で息してる。
暫くそうして呼吸してると、落ち着いて私の方を向く。

「すっすみま……せん。はっ話しを……続けます」
「うん」

話し続けるんだ。
また謝り続けて暗い事言うのかと思ったけど……違ったね。
でもいいよ、話の続き気になってた……だから何も文句はないよ。

「そっ、それで……その娘は……色々アピールしたの」
「アピール?」
「うん。じぃっと見つめたり、おっお菓子……作ったり、がっ頑張って……身体の何処か触ろうと……したり……したの」
「おぉ……良いアピール」

なんか、頭に思い浮かぶかも。
必死でやってるんだけど恥ずかしくて上手く出来ない。

でも、その魔物の事が好きだから頑張れちゃう。
すごく健気、応援したくかる……その娘、今も頑張ってるのかな? それともちゃんと付き合えた? そう色々考えちゃう。

「でっでもね」
「……でも?」

声が低くなった。
それに、でもって言った……え、その娘になにかあったの?

「その娘が好きな魔物に、好きな娘が出来たの。あ……違う、たっ正しくは、気になる……娘……かな」

え、すっすごい急展開。
そっそれって……間違いなく不味い状況、だって恋のライバルが現れたんだもん。

「その魔物が好きな娘は、とってもクールで……綺麗で、強くて……ちょっぴり抜けた娘なの」
「そうなの?」
「そっそうなんです」
「ふぅん。ドジっ娘なんだね」
「え? あっ……そっ、そう……ですね」


なんで私をじっと見て苦笑いするんだろ。
可笑しな事言ったかな?

「それで?」

気になるけど、今は詳しく聞かない。
それより話の続きが聞きたい気分。

「あ、えと……。そっその娘は……負けない様に頑張った、いつも以上に気合いをいれて……頑張って、頑張って、頑張った」
「……」

なんだろ。
自分で思うの変だけど、これ……私に似てるかも。
恋のライバルが現れて頑張る、私もロアが出て来て頑張った。

でも……頑張り足りなかったのかな? 結果はダメだった。
その娘は……どうだったの? ちゃんと付き合って欲しいな、私みたいに振られないで欲しい。

「でっでもね、気付いたんです。その娘の好きな魔物は……その娘より、ライバルの方を見てたの。その時……察したんです。本人は口にしてないけど、その魔物が今好きなのは、その娘じゃなくて……ライバルの方だと」

悲しげに話すクーちゃん。
私もそれを聞いて悲しくなった。
そか、そんなの見たら、そう思っちゃうよ。
色々思い込んで、落ち込んで……暗くなっちゃう。
今の私と同じ、もう諦めた方が良いんだ……そう思っちゃったんだ。

「でっでも! その娘は諦めませんでしたっ」
「……っ!?」

え、え? え!?
なっなんで、あっ諦め……ないの?
クーちゃんの言葉に驚きを隠せない、軽く鳥肌が立っちゃった。

「だっだって、その魔物は……本当はどう思ってるか、わっ分かりません……から! たっ例えライバルの方が……すっ好きだとしっしても! つっ付き合うまでには……ちゃっチャンスが……ありっありますからっ!」 

強い。
本当に心の底から、そう思った。
私と違ってその娘は強い。
そんな強さは私に無かった、振られて悲しんで落ち込んで塞ぎ混んで……ただ悲しんでるだけだったのに。

その娘は、諦めなかった。
立ち向かった……凄い、尊敬する。
格好良いよ……クーちゃんのお友達。

「アヤネちゃん」
「……なに?」

クーちゃんは被り物ごしから私を見てくる。
たぶん、中では真剣な眼をしてる。

「あっアヤネちゃんも、そっそうしませんか? あっ諦めずに……頑張って……見ませんか?」
「1度、振られたのに?」

そんなの、相手からしたら迷惑だよ。
そんな顔されるの、私は嫌だ。

「まだ1度……だけです!」
「っ」
「まっまだ、大丈夫……シルク君は今、誰とも……付き合ってないです。だっだから……まだ、大丈夫……なんです!」

……そう、だけど。
また振られるよ、シルクはロアが好きなんだもん。
答えが分かりきってるのに……また、告白するの?
そう思って、下を向くと顔を両手で持たれ、ぐいっ! と前を向かされる。

「下向いちゃ……ダメ、です」
「……」
「せっせめて、いっ今の気持ち……全てを、シルク君に……ぶつけませんか?」
「……」
「いっぱいいっぱい伝えて……みません……か?」
「……」
「自分の……きっ気が済むまで言って、気持ちが空っぽになるまで……伝えませんか?」

クーちゃんの問いに無言で返す。
そんな……そんなの、怖いよ、また振られるよ。
私は……シルクと、付き合いたいっ。

「いま、シルク君と……付き合いたいって……思いました……よね?」
「っ! なっなんで、わっ分かったの!?」
「わっわかり……ますよ。アヤネちゃんの顔を見れば……あたいも、似たようなもの……ですから」
「え?」
「なっなんでも、ないです!」

??
最後ら辺、よく聞こえなかった。
詳しく聞こうと思って喋ろうとする、でもその前にクーちゃんが話す方が早かった。

「こっ告白の、やっやり直し! やりません……か? いっいえ、やりましょう! やっやらないと……ずっとモヤモヤした気持ちのまま……です。そっそんなの……辛すぎ……ます」
「クーちゃん……」

それを聞いた瞬間、心に熱い物を感じた。
本気で私を心配してくれてるし、応援もしてくれてる。
……そう感じた、そう感じた瞬間、曇った空に光が射した見たいな気持ちになった。

すこし、晴れやかな気分。
なにかやってやろう! そんな気合いに満ちた気分。

「いま、思ってる……気持ち、つっ伝えましょう。結果は……分かりませんけど……やる価値は、あっありますっ!」
「……」

私の顔から手を離し、ぐっ! とガッツポーズする。
クーちゃんにやる気にさせられた。
それと、クーちゃんの友達にもやる気にさせられた。

私も、クーちゃんの友達みたいに頑張ってみよう。
だって、いま頑張らないと……クーちゃんの友達に笑われちゃう。

「やる気に……なったね。アヤネちゃん」
「うん、やる気になったよ」
「そっそう……ですか」
「クーちゃん、ありがと。私、頑張る」

正直1回振られて怖い気持ちは消えてない……でも私、やるよ。
もう1度、シルクに告白する。

明日の朝早く起きて、魔王城に行ってシルクにあって……気持ちを伝える。
ダメだった時は……その時はどうなるか分かんない。
もしかしたら、今度こそ塞ぎ込んじゃうかもかもしんない。
でも、想い全てを伝えるから……大丈夫、そう信じたい。

願いを込める様に手を合わせ眼をつむった。

そして、その夜……私は明日に備えて眠った。
待っててねシルク、もう1度私の気持ちを聞いて

そして今度は……私の事、好きって言って。
私もシルクの事が好きだから……。

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