どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

359

風呂場から食堂にやって来たわらわ、さっそく料理に取り掛かり……時間を掛はしたが、料理が出来た。

しかし、シルクは来なかった。

「……やはり来ん! 思った通りじゃ!」

バァンっ!
食堂の扉を蹴破り廊下に出る、後ろで鬼騎が何か叫んでおるが……構うのは後じゃ後! わらわは廊下を走る、向かうは風呂場じゃ。

くそぅ、シルクの奴め。
食堂に来いと言ったのに来んではないか! まさか、元の部屋に戻ったのではあるまいな? もしそうだったら、また担いで食堂に連行してやる!

……いやまて。
もしかしたら逆上せてる可能性も無きにしもあらずじゃ。
やばいのぅ、そうなってる気がものっすごいしてきた。
いやぁな汗をかきながら、わらわは風呂場へと急いだ。



「シルク! 無事か!」

風呂場について早々に、バァンっ!! と扉を蹴破り風呂場に来た。
……あ、いかん! 扉が少し曲がった、後で魔法で直しておこう。

って、それよりもじゃ。
シルクは大丈夫かえ? 心配になりながら浴槽付近を見てみる。

……いた。
どうやら逆上せてはいないらしいな、わらわの方を口半開きにして見ておる。
いつものシルクとは程遠い間抜けな顔じゃ。

「……ロア」

ぼへぇっとしながら呑気に答える。
ひっ人が心配してたと言うのに……なんじゃその間抜けな顔は! いつものシルクは何処いった! 今は丸っきりダメダメな感じになってるぞ!

まっまぁ……わらわの知らぬシルクを見れて嬉いっちゃ嬉しいがの。
……っ! いかんいかん、うっとりしとる場合では無かった。

落ち着けわらわ、萌える光景じゃが、目的を見失うでない。

「ほれ、もう充分暖まったじゃろ?」

喋りながらずんずん近付き、浴槽に入りシルクを引き上げる。
服が濡れたが構わん、どうせ歩いてれば乾くからの。

「……まだ」

ん? なにか良いおったの? 小首を傾げて「なにか言ったかの?」と聞いてみると……。

「まだ……入っていたい」

こう言ってきおった。
おっおぉ……この、ぼへぇっとした表情で真っ直ぐわらわを見て何かを訴えるシルクもこれはこれで萌える。
つい、顔が綻んでしまう。

あぁ、可愛すぎて鼻血が出そうじゃ……これはいかん、と思って手で鼻を押さえる。
くふふふぅ、可愛いのぅ、これは可愛いシルクに免じて意見を聞き入れ……てる場合じゃない!

さっき目的を見失うでない、と思ったばかりじゃろうが! わらわのバカ!

「ダメじゃ! こっちの都合がある。よって今すぐ出て貰うぞ」

口惜しげに言うと……少し、ほんっの少しじゃが眉がピクリと動いた。
おぉっ、ほんの少しじゃが反応を見せたのぅ、ちょっぴり安心したのじゃ。

安心したわらわはシルクを担ぎ風呂場を出る、そして脱衣場で「自分で拭く」と言ったシルクの意見を無視し、わらわがシルクの身体を拭いて服を着せた。

「さぁ、次は飯じゃ! ずっと独りで食べていたじゃろう? 皆で飯を食えば元気になるっ」

にぃっ、わらわは笑ってシルクを担ぐ。
よぉしっ、出発じゃ! 今頃皆は食堂にいる筈じゃ……わらわが食堂につき次第、直ぐ飯にするのじゃぁ。

という訳で、ちと小走りで向かっていく。
その間シルクはなんなも喋らなかったが、ぐぅぅぅっと腹の音が鳴り、恥ずかしそうに頬を赤らめているのを、わらわは見逃さんかった。

「くふふふ、元気が無くても腹は減るか。良いことじゃ、これから元気になる一方じゃという証拠じゃな」
「……」

そんなわらわの言葉にもシルクは何も返さんかった。
くふふふ、これはあれじゃな……今照れていて何も喋らないって奴じゃな?
わはわには分かる、シルクは、恥ずかしくなるとそうなる。

そんな様子にほっこりしながら、わらわは走る速さを増し食堂へ急いだ。

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