どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

366

この世に傷付かない恋愛なんて無い、シズハさんのその言葉が今も頭に響いてる。

出来れば、そんな事は無いと言いたかった。
だけど……言えなかった、シズハさんのその言葉は、凄く納得の行く言葉だったから。

そんな正論を言ったシズハさんが出ていった後、俺とロアは残された。

「しっシルク……その……」

お互い暫く黙ったままだったんだが、まだ俺に抱き付いてるロアが気まずそうに話し掛けて来た。
そうだ……ロアにとったらこの話は衝撃的だろう。

ロアは俺の話を聞いてどう思ったんだろう?

「正直驚いた……今もドキドキが止まらんよ。色んな事を想って、胸がズキズキしておる」

胸に手を置いて悲しげに話す、すると……うっすら笑いながら俺から少しだけ離れる。

「なんじゃろな、今は何を話して良いか分からんなぁ」

誤魔化す様に、くははは……と笑った。
乾いた笑いだ、俺も何を話したら良いか分からない。
と言うか、これからどうすれば良いのかも分からない。

今からでもアヤネを探しに行くか? いや、俺はアヤネを振ったんだぞ? 探しに行き辛い。
仮に探しに行って、見付けたとしても……どう声をかければ良いか分からない。

あぁ……モヤモヤする。
くっそぅ……不甲斐ないな、本当にどうする事も出来ないのか。

そんな思いにかられながらうつ向きカリカリ頭をかく。

「しっシルク!」
「っ!」

なっなんだ……いきなり大声だして。
目をまぁるくしてロアの方を見ると……若干震えていた。

「えと……とっ取り合えず、その……あれじゃ。あまり思い悩み過ぎるでない」

思い悩むな……か。
そう言われてもな……悩むんだよな。

「あぁ……えと、そのぉ……」

ロアがあたふたしてるな。
なんとか俺を元気つけよう
としてる、悪いなロア、気を使わせて。

無理して俺を元気付けなくてもいいさ、ロアには充分元気にさせて貰った。
それだけで充分、それ以上はいらない。
だから、そう言おうとした……その時だ。

「しっシルクは悪くない! こっこれだけはキチンと言えるぞ! だから思い悩む必要は無いのじゃ!」

ばっ! と手を振るい言い放った。
それに、きょとんとしていると続けて話し出した。

「無論、アヤネも悪くない! えと……つまりじゃな、誰も悪く無いんじゃよ。くっくははは……はは……はぁ。わらわ、なに言ってんじゃろう」

明るく話してたのに途中から暗い顔になった。
えと……ロアは一体何を言いたいんだ?

「あぁ……もぅっ! 色んな事が頭を駆け巡り過ぎて訳が分からん! これはあれじゃっ! 考えても無駄じゃ無駄!」

手をぎゅっと握って何処か遠く見る。
おっおぉ……なんかよく分からないが、考えるのを止めたな。
と言うか、妙なテンションになってるぞ、大丈夫か?

「シルク!」
「っ!?」

うぉっ……急にこっちを向くなよ、ビックリするだろう。
てっ……ん? 手を握られた、その瞬間、ぐわんっと身体を持ち上げられる。

こっこの体制は……ひっ久し振りのお姫様抱っこの体制だ!

「ろっロア? 何を……」
「とっ取り合えず……この事を他のやつにも伝えに行こう」

……え、伝えるのか? いやでも、そうした方が良いかもしれない。
皆には心配も迷惑も掛けたんだ、ロアの言う通りそうしよう。

「伝えるのは賛成なんだが……なぜお姫様抱っこをしたんだ?」
「何となくじゃ!」

なっ何となくか……ロアらしいな。


「では行くぞっ!」

そう言ってロアは俺をお姫様抱っこしたまま部屋を出ていった。

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