どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

367

ロアがシルクをお姫様抱っこして移動してる時、ラキュはと言うと……外に出ていた。

ダッ……ダッ……ダッ……。
今日の魔王城城下街の昼下がりは何時もの賑やかだ。

晴れてて、風も心地よく吹いてるし、気温も丁度良い。
なのに……僕の身近の奴等は穏やかじゃ無いんだよね。

「はぁ……」

たがら、思わずため息ついちゃうのも仕方ないよね、ほんっと参っちゃうよ。

「知らない間にあんな事になってるなんてね」

またまたため息をついてしまう。
シルク君の何かに悩んでるのは分かってたけどさ……その悩みが僕の想像を越えたね。
凄く大きな悩みだ……そして、その悩みは、僕を悩ませる悩みだった。

くふふふ。
笑いたくなる位、混沌としてるねぇ、早く元に戻って欲しいよ。

……さて、そんな悩みは一旦置いておいて、なんで僕が外に出ているかと言うと……さっきシルク君の話を部屋の外からこっそり聞いたんだよ。

なんでこっそり聞いてたのかは……興味本意って事にしておくよ。

それで、シルク君がハロウィンでの事を話してる時「アヤネに告白された」と言った。

驚いたね、それと同時に……衝撃を得た。
海に行った時、告白する的な事を聞いたのに……それでも驚いた。
そして……嫌な気持ちになったよ、なんでこんな気持ちになってるんだ? そう思った時、シルク君は続けて言ったんだ「アヤネを振った」ってね。

……その瞬間、色んな感情が一気に涌き出たんだ、もう訳が分からない位にね。
そしたら、気付いたら脚は外に向かって歩いてた。

行くときにシズハに会って何か言われたけど、素っ気なく返してあげた。
なんでアヤネを探しに? シルク君に振られて出てったんなら、もうこの街にいないって考えるのが当たり前なのに……。

突発的な行動だね、僕らしくもない。
でも……心の奥底でこう想ってるんだ、まだ街にいるかもしれないってね。

「……帰ろうか、仮に見付けたとしてもどうして良いか分からないしね」

頬をかきながら、そう決断して身体の向きを変え城に帰ろうとする。

「……くん」

ん? 今声が聞こえた……気がする。
立ち止まって耳を澄ませてみよう……。

「ラキュくん」

うん、やっぱり聞こえる、しかも僕を呼んでるね。
何処からだぁ? 声が小さくて特定出来ないよ、と言うかこの声……クー?

「こっち……こっちです」

いや、こっちって言ってもハッキリ位置を言ってくれないと分からないよ。
「何処にいるのさ」と呟きながらキョロキョロ見渡してみる。

右にもいない、左の方は……あ、いたね。
良く見ないと分からない所に立ってた。

「幾ら目立つのが嫌だからって……そこに立ってちゃ気付いて貰えないでしょ」

まぁ、僕は気付いたけどさ。
じぃ……とその方向を見てみると、何時も通りカボチャの被り物を被ったクーが家と家の間に立って僕を手招きしてる。
そんな目立たない所にいるのに、良く気付けたね……普通ならスルーしてた所だよ。

そう思いつつ、手でおいでおいでしてるクーの側へと歩いていく。

「君がここまで来るなんて珍しいね……なにかあった?」
「あっ……あったから、きっ……きたの。とっ途中で会えて……良かった」

うっすら笑いながら話し掛けてみると、モジモジしながら答えてきた。

ふむ、話を聞く限りだと……クーは僕に用事があったみたいだね、今は城に向かう途中だったわけだ。
でも彼女が言った通り偶然会ったって事か。

ま、それは良いとして……何があったんだろうね。
いま、こっちではややこしい事が起きてるから厄介な事じゃないと嬉しいな。

「あの……こっち来て」
「え? ちょっ……」

なんて思ってたら腕を掴まれて引っ張られた。
強引だなぁ……いつものクーじゃない。

「なに? 凄く大変な事でも起きたの?」

いつもなら説明くらいするのに、今回は説明なしだからね。
……てっあれ? 返答は無しだね、僕の質問に答えずにグイグイ引っ張ったままだ。

「説明くらいしてほしいなぁ」
「……あたいの、家に……つっ着けば、わっわかる……よ」

ふぅん、着けば分かる……ね。
つまり何か見せたいって事かな? んー……これは厄介な事かとかもしれないねぇ、僕を呼ぶ所を考えると相当な事だと思うよ。

さぁて、クーは僕に何を見せるつもりなんだろうね。
そう思いつつ僕は腕を引っ張られクーに何処かへ連れていかれて行った……。

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