どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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さて困った。
ロアに言われて、楽しい事を考えろ! と言われたが、全くそんな事は考えられない。

それよりも、アヤネの事を考えてしまっている。
側にいれば、また叩かれていた所だろう。
だが今はいない、俺は今ロアの部屋にいる。

その部屋にある椅子に腰掛け、ぼぉっとしている。
なんで此処にいるかと言うと「今日はゆっくりしろ、」と言われたからだ。

ここに居ろと言われてもなぁ、それはそれで困るんだよなぁ。
あぁそれと「良いか? くれぐれも考えるでないぞ」と念押しされた…。

ははは…ごめんなロア、既にその事は考えてるよ。
あ、因みに…ロアが此処に居ないわけは、色々と用事があるからだそうだ。

用事が終わったら此処に来るとも言っていたな…。
つまりだ、その間部屋を出るなって事になるな。

はぁ…。
俺を心配しての行動なんだが、その…やり過ぎなんだよなぁ。
いっいや、感謝はしてる…おっお陰で皆にアヤネの事も話せたからな。

ロアが、いや…ロア達が色々してくれなかったら、俺はずっと部屋に籠っていただろう、その点には感謝してるよ。 

「アヤネ、俺は…。くっ、でも……あぁくそっ」

そんな事を思いながら、同時にアヤネの事を考えてしまう。
考えるなっと言われたが…無理な物は無理なんだ。
こればっかりはどうしようもない。

ロアの忠告を守らない俺は、暫く椅子に座ったままアヤネの事、そして…シズハさんに言われたを考えた。
俺、これからどうすれば良いんだろう…。



 シルクがロアの部屋で思い悩んでる頃、ロアはヴァームの部屋にいた。

「むぅぅぅっ、うむぅぅぅぅ…」
「偉く悩んでいますね」
「あったり前じゃ! 何と言うかぁ、そのぉ…わらわも色々思い悩んでるいるんじゃよ!」

シルクの事とか、アヤネの事とか、あとわらわの今後の事とかをな!

「とっと言うか、ヴァーム! さっきの言動はなんじゃっ。冷たすぎじゃぞ!」

ばむんっ、座ってるソファーを叩いた。
あんなに冷たく当たらんでも良いじゃろうっ、そう思いながら、キッと睨み付けてやると…ヴァームは、ふぁさっと髪を靡かせながら静かに答えた。

「冷たくしたつもりはありません。ただ…今のシルク様は一人にしておいた方が良いと思います」

なっ、ひっ一人じゃと? 今の状態のシルクを? だっダメじゃっ、そんなのは出来ん! 今はヴァームに言いたい事があったから一人にしておるが、話が終わり次第直ぐに会うつもりじゃ!

「ヴァーム、貴様…」

今のシルクは傷ついておる、つまり癒しが必要なんじゃ、それが分からんのか? そんな思いを込めてヴァームを見詰めると、ふぅ…とため息をつきおった。

「ロア様、愛してるからと言って…何でもかんでも尽くしていてはダメですよ?」

っ、なっなんじゃと? なんじゃ、その呆れた顔は…尽くすな、じゃと? その言葉を聞いてフツフツと怒りが沸いてくる。
なんなんじゃ、さっきからのヴァームの発言は…なぜそんな冷たい事が言える? 訳が分からん。

「それが何故ダメなのじゃ? 愛してる者が傷付けば、尽くすのが当たり前じゃろう」
「なんとも重たい愛ですね。あぁ…失礼、そんな愛もありでしょう」

……カチッ、その言葉を聞いてわらわの中の怒りのスイッチが起動した。
ヴァームは、そんな事を冷静に言ってのけた。

「ヴァームよ。まさかとは思うが、わらわを怒らせたいのかえ? だとしたらそれは成功しとるがのぅ」
「いえ、そんな事はありません…」

そんな事はあるじゃろうが……わらわを怒らせて何がしたい? そんな事を思ってると、空気がピリピリ張り詰めてきおった。
じゃが、怒りに燃えておるそんなもんは関係無かった。

「まぁ、それは良いでしょう。それよりもです…」
「それよりもなんじゃ? これ以上わらわを怒らせる事を言うてみよ。どうなるか分かっておろうな?」

忠告はした。
後はヴァームが何と言うかによって、わらわの次の態度が変わるじゃろう…くれぐれも妙な事は言ってくれるなよ?

「シルク様もシルク様で妙な事で悩んでますよね。自分には好きな人がいるから断っただけ…それだけの事ですのに」

やれやれ…と呆れた様に言ってのけるヴァーム。
おっお前、それでシルクは悩んでると言うのに…なっなんて事を言うんじゃ!

「それはシルクの優しさじゃろう! 優しいからあの時どうすべきを悩んで…」

と、その瞬間。
ヴァームがわらわの言葉を遮って「ふふっ」と笑った。

「優しさ? 何処が優しいんですか? 振った相手の事を想い悩んで何が優しいんですか? そんなの優しさではありません…ただアヤネさんを傷付けてるだけですよ」

淡々と話し出すヴァームの表情は、何処か怒ってる様に見えた。
そんなヴァームは続けて話し出す。

「恋愛と言うのはそう言う物なんです。誰か一人を決めないとダメなんです。だから今シルク様がやるべき事は…今好きな人の事を考え、それをどうすべきか考える事。それが振った相手への礼儀にもなるんです」

……くそっ。
腹立たしい言い分だと言うのに、筋は通っておる、じゃがなぁ、誰しもがそんな強かな考えを持ってると思うなよ?

「あのな…」
「ロア様? 貴女もそうですよ、何を悩む必要があるんです? チャンスは今ですよ」

くっ、喋ろうとしたら遮られてしまった。
……てっ、なに? チャンスは今じゃと? その言葉にきょとんとしてると、ヴァームは続けてこう言ってきた。

「今直ぐに、シルク様にロア様の過去の事を話しましょう」
「んなっ!?」

ばっバカかこやつ! この状況でわらわの過去を話すじゃと? なっ何を言っておるんじゃこやつは!

「そっそんなゲスな事が出来るか! アヤネの気持ちを考えんか!」

それを話すのは明らかに今では無いじゃろう。
そう言う事は、もっと機会を見てじゃなぁ……てっ、なんじゃその冷たい目は。
また何か腹立つ事を言うつもりか?

「ゲス? 可笑しな事を仰いますね。アヤネさんとはシルク様と取り合ってましたのに…」
「そっそれはそうじゃが…」
「まさか、恋敵に同情してるのですか? 甘いですね…恋愛は物語の様に全てがスムーズに進むとは限らないんですよ? 綺麗に済まない恋愛もあるんです、なので全くゲスではありません」

また筋が通ってる事を言ったのぅ、しかしそんなの納得出来んのじゃ。
じゃが、今のヴァームの言葉を聞いて……過去を話すのは今しか無いかも知れんとも思っておる。
くぅぅぅっ、また思い悩む種が出てきおったぁぁぁっ。

「ロア様、失礼を承知で言います。貴女は意気地無しです、もっと勇気を持って下さい」

ゆっ勇気を持て……じゃと? その言葉を聞いてぽかぁんとするわらわ。
その時だ、ヴァームは続けてこう言ってきた。

「まぁ、それはシルク様にも言える事ですが…彼も意気地無しです。振った相手の事を心配して何がしたいのやら…訳が分かりませんよ」

……は? 意気地無し…じゃと? シルクが?
わらわだけならまだ良い、じゃが…シルクの事をそう言うじゃと?
ヴァーム…お主、どうやら口が過ぎたなぁ…。

それを聞き終わった瞬間、更にわらわの怒りが加速した。
頭に一気に血が昇っていくのが分かった、気が付けば立ち上がりヴァームを見下し。

「ヴァァムゥゥゥっ! シルクがなんじゃってぇぇぇっ!!」

愛する者の悪口を言われた、その事に腹が立ち声を荒げて叫んでいた…。
あまりの怒りで魔力が吹き出てわらわの長い紫の髪がゆらゆらと揺らめく。
この部屋の雰囲気がより張り積めた。
空気が震動し、あらゆる物がミシミシ音を立てている。
そんな事に構わず、今だ平然な顔をして静かに座っているヴァームへとゆっくり歩いていく。
そして、あと数歩でヴァームの側に着く……その時じゃ。

「はい、ストップ。そこまでにしなよ。部屋の外まで魔力が吹き出てたよ」

バタンッ! と強く扉が開かれ…ラキュが現れた。
冷静にそう言った後、わらわとヴァームの間へと歩いてくる。
その事が切っ掛けで、わらわの怒りは一瞬にして消える…

「少し聞いて貰いたい事があるんだけど…いいかな?」

ラキュは真剣な顔付きでいってきた。
目が言っておる「一旦冷静になれ」と、そんな視線を見たわらわは黙って頷いた。

それを見たヴァームも「構いませんよ」と答える。
うぅむ、そして凄く簡単に話を聞こうと思ってしまった。
それは、突然のラキュの出現に呆気にとられたからじゃろう。

冷静を取り戻したわらわは、ラキュの話を聞くことにした。

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