どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「なっなにぃぃっ! アヤネはクータンの家にいるじゃと!」

ラキュがソファーに座って、話をした。
その話は、身体を前のめりにして驚かせるものじゃった。

「そうだよ、家に帰ろうとしたけど迷ってお腹減って力尽きた所を助けられたみたいだよ」

なんともアヤネらしい倒れ方じゃ、普段なら笑い飛ばしてた所じゃが…流石に笑える空気ではないの。

「…アヤネさんは今どうしているのですか?」
「ん? あぁ…クーが様子見てくれてるよ」

ヴァームの質問にさっと答えたラキュ、そのあとヴァームは手で口元を押さえ。

「そうですか」

そう呟いた。
何やら言いたそうな顔をしておるが…言わんのぅ、さっきまで腹の立つ事ばかり言うておったのに。

「まぁ…何はともあれ、無事で良かったのぅ」
「そうだね」

恋敵とは言え、急に居なくなれば心配はする。
じゃが、ラキュの話を聞いて一安心した…問題は1つ解決じゃな、そう思いながら胸を撫で下ろす。

「この事は、シズハにも言うつもりだよ」

ん? あぁ…そうじゃな、シズハも心配しておったしの

「うむ、そうじゃな…そうした方が良いな」

なので、こくりと頷きながら答えた。
これを聞けばシズハも一安心するじゃろう、そして…様子を見に行くじゃろうな。

「さて、話は終わりなんだけど。ここに来てからもう1つだけ話題が出来たんだけど…良いかな?」

等と考えておったら、ラキュが、わらわとヴァームを交互に見ながら話してきた。
むっむむぅ…なんかすごぉく睨まれておるのぅ。
やっやはり話しと言うのはアレかの? わらわが怒って魔力を吹き出した件の事じゃろうなぁ。

「あれはわらわの性ではない」
「まだ何も言ってないんだけど?」

大体の話の流れは察して先に答えてやったが、睨みが強くなった。
むぅっ、姉をそんなに睨むものではないぞ?

「いやぁ、大体聞かれる事は察したからのぅ」
「ふぅん。じゃぁ…それがあってるか聞くけどさ、この部屋で何があったの? 急に異様な魔力を感じたから急いで戻ってきたんだけど…なんでヴァームと一触即発みたいな事になってるの?」

ぐっ、やはり分かっておっか…。
まぁ、部屋の外にまで魔力が吹き出てたと言ってたしのぅ、聞かれるのは当たり前か。

「どうやら、察した話の内容とあってたみたいだね」
「あぁ、まぁ…うむ」
「そう。じゃぁ、何があったか話してくれない?」

ラキュは笑顔で問い詰めてくる。
くぅ、めっちゃくちゃ恐いのぅ…こっここは誤魔化さず答えた方が良さそうじゃ。

「その、えと…ヴァームがじゃな…」

じとぉっとヴァームを睨みながら、さっきの事をラキュに言った。
それを話してる時、ヴァームは何も言ってこんかった、反論するかと思ったが…冷静を保っておる。
くっ、また腹がたって来たのじゃ。

「…なるほどね。それで怒ったんだ」
「そうじゃ! シルクの悪口を言ったんじゃぞ! 怒って当たり前じゃろう!」

ラキュの肩をバシッ! と叩いて言ってやる。
そしたら痛そうに肩を擦りながら「気持ちは分かるよ」といってきた、そして続けて…。

「でも、それで暴れるのはどうかと思うよ? 姉上の魔力は強力なんだからさ…」
「それは分かっておる! じゃがそれは、ヴァームが怒らせる事を言ったからそうなったんじゃ!」

じゃから、わらわは悪くない! 責めるならヴァームの方じゃ。

「でも、気を付けないとダメだよね?」
「しかし!」
「ダメ…だよね?」

顔をずいっと近付け威圧してくるラキュ。
笑顔なのに眼だけ笑っておらん、凄まじく恐いのじゃ。

「うっうむぅ…そっそうじゃの」
「分かれば良いんだよ」

その迫力に負け、低い声でそう言った。
そしたら、頷いて微笑んだ。

「ヴァームも、言葉には気を付けなよ」

そうした後、ヴァームの方を向いてそう言う。
すると……。

「私は間違った事は言ってません…」

ふいっと横を向いてこんな事を言ってきた。
これを聞いたわらわとラキュはピクリと眉を動かす。
こやつ…自分の非を認めん気か? くっ、従者にここまでされたのは初めてじゃな。
わらわの中で良くない感情がフツフツ沸いて気おるわ。

「また怒らせてしまいましたか? では、そのついでに正直に申します」

そんなわらわの気持ちを察したのか、ヴァームはすくっと立ち上がり、わらわを見てくる。

「ロア様…。臆病にも程があります、昔に言った言葉は嘘なんですか? シルク様を想う気持ちは嘘なんですか? そもそもロア様は…本当にシルク様が好きなんですか?」

ヴァームが話終えた瞬間、わらわは勢い良く立ち上がった。
好きじゃよ! 好きじゃからこんなに悩んでおるし、ヴァーム(きさま)の言葉に怒っておるんじゃろうが!

「こっこの! 言わせておけばっ!」

声を震わせヴァームを睨み殺さんとばかりに睨み付ける。
そして、ヴァームに殴り掛かった。
じゃが、それはラキュによって止められる。

「姉上! ちょっ、やめ……くっ、おっ落ち着きなって!」

必死にわらわを羽交い締めにして抑えるが、わらわはそれを振り切ろうと暴れ、徐々に前へと進む。

そんな暴れまくる中、ヴァームは今だ冷静を保っておった。
なんでじゃ、なんでそんなに冷静なんじゃ! くそっ、くそっ、くそっ! 許さぬっ、許さぬぞ! ヴァームっ!!

心の中で怒りの叫びをあげ、わらわはラキュを力一杯振り払い、怒りの赴くまま……暴れた。

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