どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
382
「どうぞ、紅茶です。熱い内にどうぞ」
「ありがとう感謝するよっ」
さて、話しは半壊した部屋を例の如く魔法で治し、突然現れたヘッグとフドウと言う人間にお茶を振る舞う所から始まる。
ヴァームがティーカップをテーブルに置くと、ヘッグがヴァームにウインクしてはにかむ。
相変わらず徹底したイケメンアピールだ、久し振りに見てもイライラするね。
「…………あつっ」
で、フドウの方はティーカップを持ち、紅茶を飲もうとするんだけど……熱かったらしい。
あんな大きな身体をして厳格で恐そうな顔と雰囲気を出してるのに可愛い所がある、ちょっとしたギャップだね。
そんなフドウが、カリカリと綺麗な短い黒髪をかく。
うん、見たところ……年端のいった男だ。
でも、瞬時に強いって分かる程のオーラを持ってる。
この人が、アヤネの父上……なんだよね。
さっき、さらっと言ってたけど間違いないんだよね?
「なぁ……そろそろ聞いて良いか?」
「なんだい?」
どかっと椅子に座ってる鬼騎がヘッグを見る。
それに鮮やかなウインクをして答える……一々それやらないとダメなのかな?
「その……助かったんだけどよ、なっなんでお前さんが此処に来たんだ?」
「あぁそれか。うん、それはね……そこにいるフドウって人に会って色々あってここに来たのさっ!」
なるほど、色々ねぇ。
格好良く言ってるけど説明がざっくり過ぎだね、あとさっきから……。
「ふぅ……ふぅ……あつっ、くっ……猫舌には辛い」
紅茶に息吹き掛けて冷まそうとしてる、このフドウって男…見た目厳格そうなのに何処か残念さを感じる。
流石、アヤネの父を名乗るだけはある。
「その色々を聞いてもよろしいですか?」
あ、そうだね。
それは気になる、ヴァームは良い事聞いたね。
それを聞いたヘッグはクスリと笑い、持っていたティカップをテーブルに置き脚を組む。
「あぁ、別に構わないさ。だけど……その前に、魔王様が暴れた理由、聞かせて欲しいな」
じっと睨み据える様に低音ボイスで言ってきた。
まぁ……偶然ここに来て、姉上が暴れるのを止めたとはいえ気になるよね。
よし、ここは僕から話そうか。
チラリと部屋の隅に寝かせてある姉上を見て、僕は事の発端を話し始める。
◇
その話しを聞いた後、ヘッグが難しい顔をして、こめかみを押さえる。
「ふぅん、なるほどね…。ややこしい上に話が思い。イケメンには荷が重いね」
やれやれって感じで手を広げるヘッグ。
言ってる事は意味不明だけど、喧嘩を止めに来てくれたのは助かったよ。
「あのときは本当にありがとね」
「ふっ、礼には及ばないさ。イケメンとして当然の事をしたまでさ」
ニヒルに笑うヘッグはまたウインクをした。
……うん、もうこれについては何も思わないようにしよう。
「しかしヴァーム…君にしてはらしくないね。何か思った事があったのかい?」
そんなヴァームの発言にピンっと来る。
そうだ、ヘッグの言う通りらしくない……。
「別に、何もありませんよ」
「おいおい、喧嘩の切っ掛けをつくったんだろう? 今更言わないってのはダメじゃないかい?」
つんっとした態度をとるヴァームにヘッグの軽い態度。
下手すれば火に油だけど……ヴァームは怒る様子がない、それ所かヘッグの言葉を聞いて、ぎゅっと唇を噛む。
「確かにそうです、けど……」
言い難そうに顔をしかめる。
「まぁ、言い辛いだろうね。久々に来た奴が何言ってんだと言うかもだけど、言わせておくれ。全てを話して楽になりなよ」
優しく微笑むヘッグは、そっとヴァームの手に触れる。
すると、ピクリと身体が動いた。
「まぁ、どのみち……話さないとダメなんじゃないかな? ずっとこのままって訳にはいかないからさ」
確かにヘッグの言う通りだ。
だけど……いま、ヴァームが素直に話してくれるのか? とてもじゃないけど言いそうにないよね。
……ん?  ヴァームにしては珍しく大きく息を吐いたね。
そして「確かに、そう……ですね」と呟いた。
……どうやらヴァームなりに色々考えて話す事にしたみたいだ。
「ロア様を怒らせたのは……ただイラついただけですよ。好きな癖に周りの事を気にするロア様の事が」
うん、確かに姉上は周りを気にしてたね。
でも、それでなんでヴァームが怒る必要があるんだろ? その事を口にしようとしたら、続けて話し出す。
「シルク様が好きならば、周りの事など気にせず、直ぐに告白すべきなんです! それをロア様はアヤネさんの事を気にしてしようとしません」
……ヴァームが悲しい表情をした。
あんな顔をするヴァーム、始めてみた。
きっと今、感情をさらけ出して話してるんだろう。
「もしかしたらアヤネさんに取られてしまうかもしれないのに……ロア様はそんな事を思う様子なんてありません!甘いんですよロア様は!」
ダンッ! と床を強く踏むヴァーム。
完全に感情が向き出しのヴァームに皆は黙ってその様子を見守る。
「あんなにシルク様を思っているのに……他人に横取りされるなんて可哀想じゃないですか! 私は従者として、ロア様には好きな人と結婚して欲しいんです!」
そんなヴァームは、目に涙を浮かべていた。
さっき厳しめな事を言ってたみたいなのに、違った事を言ってる。
もしかして、これは……ヴァームの本音なのかな。
「だから……なんでもしましたよ。アヤネさんを失恋させる為にね」
…………え、ちょっ、え? 待って、今聞き逃せない事を言った。
アヤネを失恋させる為に、なにかしたの? そんな驚きの発言に続けてこう言いだす。
「ラキュ様はご存知ですよね? 私、アヤネさんに『その恋、諦めてくれませんか? お願いします』と言ったんです。そしたら急に頑張り初めて焦りました……ですが、アヤネさんは失恋しました、私の思惑は成功したんです」
あぁ、思い出した。
随分前、確かメェと鬼騎が付き合った後、アヤネとヴァームが話してたね、それを僕は隠れて聞いていた。
あれって……アヤネを失恋させる為の行動だったんだ。
てっきり、諦めさせる為にあんな事を言ったのかと思ってたんだけど……そうじゃなかったんだね。
「勿論、アヤネさんがシルク様に告白して、それで付き合ってしまうと言う恐れがあるのは分かってました。ですが……そうはならない自信がありました」
それ……凄い自信だね、そうなる可能性はおおいにあった筈なのに。
「何故なら、シルク様は自分が好きな相手の事は裏切らない人だからです。普段の行動からそう察しました……なのでシルク様を信じて計画を決行しました」
そう、だね。
シルク君は確かにそう言う所がある、ほんと一途な人だよね……。
「その結果、告白は失敗。アヤネさんは私の思惑通り失恋しました……それなのにロア様はあろうことかアヤネさんを心配しています! 何故なんですか? 今が、アヤネさんが失恋した今がチャンスなのに!」
泣き叫ぶように言い放ったヴァームは、がくっと膝から床に崩れ落ちる。
そして……がくっと下を向いた。
「ふふっ……自分でも言ってて笑える位最低ですね、結果人の恋路を邪魔した結果、ロア様と喧嘩して……ラキュ様に怪我を負わせてしまいました。私は……従者失格ですね」
「ヴァーム……」
そんな彼女に僕は語りかけた。
彼女なりの想い、それが大きく伝わった、口では姉上の事を軽くディスる時があるのに……そこまで姉上の事を思ってたんだ。
正直驚いた、だから、なんて言って良いか分からずに言いよどんでしまった。
その時だ、ずっと静かに座っていたフドウが静かにスッと手を高々と上げた。
そんな突然の行動に、え、何事? って感じにそっちを見ると、フドウはコホンッとせきばらいし……。
「すまん、話に割り込むようだが……我の娘、失恋したのか?」
そのフドウの言葉に全員が「あ」と声を漏らした。
膝を崩し嘆いているヴァームでさえも「あ」と声を漏らす。
しまった、そう言えばこの人がいたんだった。
その事をすっかり忘れていた僕達は「いや、今それ話すタイミングじゃないでしょ!」と言う事より「えっえと、どう……説明しようかな」と深く悩んだ。
えっえぇっと……困った、ほんっとに困った。
これ……どうすれば良いんだろう?
「ありがとう感謝するよっ」
さて、話しは半壊した部屋を例の如く魔法で治し、突然現れたヘッグとフドウと言う人間にお茶を振る舞う所から始まる。
ヴァームがティーカップをテーブルに置くと、ヘッグがヴァームにウインクしてはにかむ。
相変わらず徹底したイケメンアピールだ、久し振りに見てもイライラするね。
「…………あつっ」
で、フドウの方はティーカップを持ち、紅茶を飲もうとするんだけど……熱かったらしい。
あんな大きな身体をして厳格で恐そうな顔と雰囲気を出してるのに可愛い所がある、ちょっとしたギャップだね。
そんなフドウが、カリカリと綺麗な短い黒髪をかく。
うん、見たところ……年端のいった男だ。
でも、瞬時に強いって分かる程のオーラを持ってる。
この人が、アヤネの父上……なんだよね。
さっき、さらっと言ってたけど間違いないんだよね?
「なぁ……そろそろ聞いて良いか?」
「なんだい?」
どかっと椅子に座ってる鬼騎がヘッグを見る。
それに鮮やかなウインクをして答える……一々それやらないとダメなのかな?
「その……助かったんだけどよ、なっなんでお前さんが此処に来たんだ?」
「あぁそれか。うん、それはね……そこにいるフドウって人に会って色々あってここに来たのさっ!」
なるほど、色々ねぇ。
格好良く言ってるけど説明がざっくり過ぎだね、あとさっきから……。
「ふぅ……ふぅ……あつっ、くっ……猫舌には辛い」
紅茶に息吹き掛けて冷まそうとしてる、このフドウって男…見た目厳格そうなのに何処か残念さを感じる。
流石、アヤネの父を名乗るだけはある。
「その色々を聞いてもよろしいですか?」
あ、そうだね。
それは気になる、ヴァームは良い事聞いたね。
それを聞いたヘッグはクスリと笑い、持っていたティカップをテーブルに置き脚を組む。
「あぁ、別に構わないさ。だけど……その前に、魔王様が暴れた理由、聞かせて欲しいな」
じっと睨み据える様に低音ボイスで言ってきた。
まぁ……偶然ここに来て、姉上が暴れるのを止めたとはいえ気になるよね。
よし、ここは僕から話そうか。
チラリと部屋の隅に寝かせてある姉上を見て、僕は事の発端を話し始める。
◇
その話しを聞いた後、ヘッグが難しい顔をして、こめかみを押さえる。
「ふぅん、なるほどね…。ややこしい上に話が思い。イケメンには荷が重いね」
やれやれって感じで手を広げるヘッグ。
言ってる事は意味不明だけど、喧嘩を止めに来てくれたのは助かったよ。
「あのときは本当にありがとね」
「ふっ、礼には及ばないさ。イケメンとして当然の事をしたまでさ」
ニヒルに笑うヘッグはまたウインクをした。
……うん、もうこれについては何も思わないようにしよう。
「しかしヴァーム…君にしてはらしくないね。何か思った事があったのかい?」
そんなヴァームの発言にピンっと来る。
そうだ、ヘッグの言う通りらしくない……。
「別に、何もありませんよ」
「おいおい、喧嘩の切っ掛けをつくったんだろう? 今更言わないってのはダメじゃないかい?」
つんっとした態度をとるヴァームにヘッグの軽い態度。
下手すれば火に油だけど……ヴァームは怒る様子がない、それ所かヘッグの言葉を聞いて、ぎゅっと唇を噛む。
「確かにそうです、けど……」
言い難そうに顔をしかめる。
「まぁ、言い辛いだろうね。久々に来た奴が何言ってんだと言うかもだけど、言わせておくれ。全てを話して楽になりなよ」
優しく微笑むヘッグは、そっとヴァームの手に触れる。
すると、ピクリと身体が動いた。
「まぁ、どのみち……話さないとダメなんじゃないかな? ずっとこのままって訳にはいかないからさ」
確かにヘッグの言う通りだ。
だけど……いま、ヴァームが素直に話してくれるのか? とてもじゃないけど言いそうにないよね。
……ん?  ヴァームにしては珍しく大きく息を吐いたね。
そして「確かに、そう……ですね」と呟いた。
……どうやらヴァームなりに色々考えて話す事にしたみたいだ。
「ロア様を怒らせたのは……ただイラついただけですよ。好きな癖に周りの事を気にするロア様の事が」
うん、確かに姉上は周りを気にしてたね。
でも、それでなんでヴァームが怒る必要があるんだろ? その事を口にしようとしたら、続けて話し出す。
「シルク様が好きならば、周りの事など気にせず、直ぐに告白すべきなんです! それをロア様はアヤネさんの事を気にしてしようとしません」
……ヴァームが悲しい表情をした。
あんな顔をするヴァーム、始めてみた。
きっと今、感情をさらけ出して話してるんだろう。
「もしかしたらアヤネさんに取られてしまうかもしれないのに……ロア様はそんな事を思う様子なんてありません!甘いんですよロア様は!」
ダンッ! と床を強く踏むヴァーム。
完全に感情が向き出しのヴァームに皆は黙ってその様子を見守る。
「あんなにシルク様を思っているのに……他人に横取りされるなんて可哀想じゃないですか! 私は従者として、ロア様には好きな人と結婚して欲しいんです!」
そんなヴァームは、目に涙を浮かべていた。
さっき厳しめな事を言ってたみたいなのに、違った事を言ってる。
もしかして、これは……ヴァームの本音なのかな。
「だから……なんでもしましたよ。アヤネさんを失恋させる為にね」
…………え、ちょっ、え? 待って、今聞き逃せない事を言った。
アヤネを失恋させる為に、なにかしたの? そんな驚きの発言に続けてこう言いだす。
「ラキュ様はご存知ですよね? 私、アヤネさんに『その恋、諦めてくれませんか? お願いします』と言ったんです。そしたら急に頑張り初めて焦りました……ですが、アヤネさんは失恋しました、私の思惑は成功したんです」
あぁ、思い出した。
随分前、確かメェと鬼騎が付き合った後、アヤネとヴァームが話してたね、それを僕は隠れて聞いていた。
あれって……アヤネを失恋させる為の行動だったんだ。
てっきり、諦めさせる為にあんな事を言ったのかと思ってたんだけど……そうじゃなかったんだね。
「勿論、アヤネさんがシルク様に告白して、それで付き合ってしまうと言う恐れがあるのは分かってました。ですが……そうはならない自信がありました」
それ……凄い自信だね、そうなる可能性はおおいにあった筈なのに。
「何故なら、シルク様は自分が好きな相手の事は裏切らない人だからです。普段の行動からそう察しました……なのでシルク様を信じて計画を決行しました」
そう、だね。
シルク君は確かにそう言う所がある、ほんと一途な人だよね……。
「その結果、告白は失敗。アヤネさんは私の思惑通り失恋しました……それなのにロア様はあろうことかアヤネさんを心配しています! 何故なんですか? 今が、アヤネさんが失恋した今がチャンスなのに!」
泣き叫ぶように言い放ったヴァームは、がくっと膝から床に崩れ落ちる。
そして……がくっと下を向いた。
「ふふっ……自分でも言ってて笑える位最低ですね、結果人の恋路を邪魔した結果、ロア様と喧嘩して……ラキュ様に怪我を負わせてしまいました。私は……従者失格ですね」
「ヴァーム……」
そんな彼女に僕は語りかけた。
彼女なりの想い、それが大きく伝わった、口では姉上の事を軽くディスる時があるのに……そこまで姉上の事を思ってたんだ。
正直驚いた、だから、なんて言って良いか分からずに言いよどんでしまった。
その時だ、ずっと静かに座っていたフドウが静かにスッと手を高々と上げた。
そんな突然の行動に、え、何事? って感じにそっちを見ると、フドウはコホンッとせきばらいし……。
「すまん、話に割り込むようだが……我の娘、失恋したのか?」
そのフドウの言葉に全員が「あ」と声を漏らした。
膝を崩し嘆いているヴァームでさえも「あ」と声を漏らす。
しまった、そう言えばこの人がいたんだった。
その事をすっかり忘れていた僕達は「いや、今それ話すタイミングじゃないでしょ!」と言う事より「えっえと、どう……説明しようかな」と深く悩んだ。
えっえぇっと……困った、ほんっとに困った。
これ……どうすれば良いんだろう?
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