どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

383

「アヤネは失恋したのか? そこのところ、詳しく話して欲しい」

あぁどうしよ、困ったなぁ。
すっごく言い辛い事を聞かれちゃった、くそぅ……不用心すぎたね。

「黙ってないで、何か言って欲しいのだが?」

ジロリと睨んでくるフドウ。
くっ……その視線、突き刺さる見たいで痛いね。
無意識に目を反らしちゃったよ。
と言うか、視線キツすぎじゃないかな……一気に空気が重苦しくなったよ。
そのせいで誰も喋らないでいると、痺れを切らしたのか、フドウは脚を揺らす。

「……」

そして、そんな彼も黙ってしまった。
あぁ、いつも明るいヘッグでさえ冷や汗流して黙ってるんだから、より気まずくなってる。

どう説明しようか? って! そもそも言うタイミング可笑しくない? そりゃ親としては娘の失恋した話しは気になるだろうけどさ……空気読もうよ!
それとあんた、見知らぬ魔物に囲まれて良くそう言う事言えたね……ある意味度胸があるよ。

そんな事をしかめっ面になりながら思う、そんな時だ。

「あぁ……そこのメイドさん」
「え、はっはい……なんでしょう?」

フドウがごほんっと咳払いした後、ヴァームに話し掛けた。
話し掛けられたヴァームは、先程の嘆きの表情から一変して、きょとんとした表情になる。

「床に座るのは……良くないぞ。きちんと椅子に座りなさい」
「へ? あ……はっはい」

うっうぉぅ……。
なんか色々と掛ける言葉が間違ってはいる。
あ、でも……結果ヴァームを気遣ってるね、突発的に変な事は言うけど、悪い人じゃなさそうだね。

それに……この人がアヤネの父って言う事が改めて分かったよ。
さっきまでの行動の全てがアヤネに似ている、いやアヤネがフドウに似てるのか。
なるほど、この父あってアヤネありって事だね。

「あ、あと……紅茶が熱い。なんとかしてくれ」

まぁ、それを抜きにしてもフリーダム過ぎるね。
さっきから、自分の思った事しか言ってないっぽい。
紅茶が熱いなら暫く置いておきなよ。

「あぁ……えと、少し良いかな?」

と、その時だ。
ヘッグが、すっと手を上げて話し出す。

「そろそろ、ここに来た経緯を話したいんだが……良いかな?」

あ、そう言えば……それを聞いてない。
すっかり忘れていたよ。
フドウにアヤネの事を話す前にそれを聞いて置きたいね、とてもじゃないけどアヤネの話をしてからヘッグの話を聞く気になれないね。

確実に重たい雰囲気になるだろうしね。
だったら聞こうじゃないか、この気まずい雰囲気を変える為にもね。

「あぁ、良いんじゃない? 皆もいいよね?」

僕は、にっと笑いながら言うと、口々に「良いんじゃないか?」と「構いませんよ」と声があがる。
それを聞いたヘッグは頷いて「では、話そうか……」と言ってニヒルに笑う。

「待ってくれ、その前にアヤネの事を聞きたい。失恋したとはどういう事だ」

だが、その話を絶ち切るかの様なこの発言。
低い声で凄む様に話してくる、瞬時に怖さが身体を駆け巡った……。
話を変える事なんて出来なかった……まっまぁ、考えてみれば当然だね。
そんな大事な話し、誤魔化せる訳がないんだ。
ここはきちんと話さないといけない、と言うか話さなくてもどのみち知る事になるんだ。

だったら今話そう……。
皆がそわそわするなか、僕はそう思い立った。

「分かった。僕から話すよ」

ふぅ……と息を吐いて、フドウの目を見る。
鋭い眼でこっちを見ている、くっ……身体が震えるね。
見られただけだと言うのに、なんて威圧感だ。
魔物を震えさせるなんて……流石はアヤネの父上だ、恐ろしく強いんだろうね。

そんな事を感じながらも、僕はアヤネの事を話した。

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