どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「バカなの? 続けて良いに決まってるじゃん」

僕の言葉を聞いて、思考停止したのか、ポカーンと間抜けな顔をしている。

まぁた普段見せない顔を見せちゃって……中々面白いね。
ポカーンとした顔のヴァームを見て、クスクス笑ってやる。

「なっ、ななっ、なんで笑うんです?」
「面白いからだけど?」
「こんな時にからかわないで下さい」

くふふふふ……。
ほんと面白いなぁ、珍しくむきになっちゃって。
冷静に喋ってるみたいだけど、慌ててるの丸分かりだからね?

「からかってるつもりはないよ」
「……」

じとぉっと睨んでくる。
そんな疑いの視線向けないでよ、ほんとにからかってないんだからさ。

「あ、あと……突然バカとは何ですか。失礼です」
「普段から僕の意思関係無しにコスプレさせにくる相手に失礼とか言われてもねぇ……」
「茶化さないでくれますか?」

あらら、睨まれちゃった。
茶化したつもりも無いんだけどね……。

「私は真剣に言ったんです。だから……きちんと真面目に答えて下さい」

んー……そんな難しい顔されてもなぁ。
さっき言ったのって、全部真面目に答えたんだけど、分かってないらしいね。

やれやれ、じゃぁまた言ってあげようかな、今度はちょっとキツめにね。

「返事は同じさ。続けて良いよ、そんな事聞かないでよ、このバカ」

睨みをすえての言葉、ヴァームは少し驚きつつそれを聞いた。
聞き終わったら「なぜ……なんですか」と小声で呟いた。

そして、勢い良く僕の方を向いて

「私はロア様を傷付けたんですよ! そんなの従者がする事じゃありません!」

心の底から叫んできた。
ふぅん……驚きだね、ヴァームの口からそんな言葉が出るとは思わなかったな。
普段、何考えてるか分かんなかったのに……今は何考えてるか手に取る様に分かるよ。

「あのさ、難しい事言ってるけど……」

案外ヴァームは、姉上の事を……。

「メイドを続けたいって思ってるならさ……そんな事言わない方が良いんじゃない?」
「っ!?」

大事にしている。
だから姉上の為に裏で色々していた、まぁ……その行動は誉めらる事じゃないけど……姉上を思っての行動だった。

「ん? 図星かな? 随分驚いてるね。あぁ……あとさ、普段色々迷惑かけて素っ気ない態度する癖にいっちょ前に悔やまないでくれる? いつも通りに何事も無かったように振る舞ってよ」

その事、僕は分かってるよ。
同じく、姉上の事が大切なんだ、だから姉上には好きな人と結婚したいと思ってる。

でも、姉上は色々と手が掛かるからね……色々心配になってくるんだよ。
僕だってそうだ、いつ誰かに取られるんじゃないか? と思ってヒヤヒヤしてる。

「それにさ、ヴァームがメイドを止めるなんて言ったら、姉上……超驚いた後、何がなんでも引き留めようとしてくるよ?」

ヴァームもそうなったんだ、だからアヤネを焚き付けたりした。
姉上が大事で大事で仕方無かったからそんな事をしたんだ。

それと、さっきから色々言ってるけどさ……。
止めたいなら「続けて良いのでしょうか」なんて聞かないよね? ヴァームの場合、本気で止めようとするなら何も言わず置き手紙だけ置いてどっか行きそうだもん。

そうしないって事は残りたい、でも……自分は酷い事をした。
だから姉上が怒って出ていけって思ってるかもしれない、でも出ていきたくない……自分じゃどうしようも出来ないから僕に聞いてきたんだ。

……て、あらら。
口をパクパク明け閉めしちゃってるね、それに顔も真っ赤っかだ。
すっごい戸惑い様だ、レアなヴァームだね。

「なっ何を……いっ言って、わっわた、私は別に……」

途中口ごもってもごもご言ってて何言ってるか分かんない。
意外だなぁ……ヴァームって思い詰めるタイプなんだ。
真っ赤になって僕を見つめてくるヴァームを見てそう思った。

「まぁさ、色々と思い悩むより直接本人に聞いたら良いんじゃない?」

そう言い終わった後、姉上が寝てる方を指差す。
その指差す方を見て、ドキッ! としたのか、軽く身体が跳ねるヴァーム。
そして「ほっ本人に……聞く?」と呟く。

いやいや、どんだけ緊張してんのさ。
普段のヴァームならすぱっと聞けるでしょう? まぁ……いまはその普段通りから掛け離れてるから無理か。

仕方無い、手助けしよっか。
そう思って立ち上がり、ヴァームの方へと歩く。
きょとんとするヴァームを無視して、彼女の手首を持ち立ち上がらせる。

「え、らっラキュ様?」

その後、背中に回って姉上の方へと押していく。
なんか「え、あ、やっやめてください」とか言ってるけど無視だ、さっさと姉上を起こして話し合うと良いよ。

「頑張って、見守ってるからさ」
「…………」

そんな言葉を掛けると、じとぉっと睨んできた。
睨んでないで早く話したら? 時間が経つと、どんどん言い辛くなってくるよ。

だからさ、ささっと今の気持ちを伝えればいいさ。
僕は後ろで応援してるからさ……だから頑張って、ヴァーム。

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