どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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頑張って、ヴァーム。
そう心の中で応援して、元の席へ戻って椅子を二人の様子が見える向きに置いて座った。

さぁ、まずは姉上を起こすんだ、話しはそれからだ。

「…………」

あれ? なんか姉上の前で固まってるね。
ほら、いつも通り朝起こす見たいにやりなよ。

「とりあえず、肩でも揺すってみたら?」
「え、あ……はい」

そんな僕の言葉に気まずそうに答え、肩をゆさゆさ揺する。
そしたら姉上は「んー……」と口ごもる。
起きる様子はないね、どうやらヘッグの魔法が強めに効いてるみたいだ。

と言うかヴァーム……オロオロしてるね、いつもの冷静さはどこ言ったのさ。
そろそろ元に戻っても良いんじゃない? なんて思ってるたら、意を決したのかヴァームが屈んで方膝をつきロアの肩をゆさゆさ揺らす。

「ロア様、起きて下さい」

がくんがくん首が揺れるけど起きない、姉上の方は変わらずいつも通り、眠りが深いね。
さっきまで暴れてたから疲れたのもあるのかな?

でも、早く起きて貰わないと困るんだよね。
んー……どうしようか、僕の魔法で起こしてみる? あ、いや……その必要は無いみたいだ、今姉上の眉がピクッて動く。

「ロア様、ロア様」
「あぅぅ……むぅぅ、んー……なっなんじゃ、騒がしいのぅ」

むぅぅっと眉を潜めながら、コスコスと目を擦る。
姉上が起きた、それを見たヴァームは肩を揺らすのを止めた。

「あ、その……ロア様」
「ん、おぉ……ヴァームか」

眠たそうにしながら、むくりと上半身を起こし、立ち上がる、ヴァームも同じく立ち上がる。
さて、ここから話し合いが始まるね、もしかしたら姉上がまた暴れだすかもしれないけど……まぁ、その時は何とかしよう。

「えと、その……」

なんて思ってたら、ヴァームがもごもごと話し出す。
その様子を見て、姉上はじぃっと見る。

「ヴァーム」

そして、真剣な顔をして喋った。
「はっはい……」と応えるヴァームは下を向いた。
ごくっと唾を飲み込み、きゅっと目を瞑る、それを見てる僕は……姉上の様子をヒヤヒヤしながら見守った。
頼むから、また暴れだすなんて事は止めてよ……。

「……その、なんじゃ。暴れてすまんかった。一眠りして頭が冷えた……その、えと……つっついカッ! となったのじゃ。しっしかしあれじゃぞ! ヴぁっヴァームの方も悪いんじゃからな!」

と、そんな心配をしたんだけど……。
杞憂に終わったね、姉上……オロオロしながら謝ってるよ。

「え、あ……えぇ?」

そんな姉上を見たヴァームは戸惑ってた。
てっきり怒られる物かと思ってたもんね……でも、そうならなかった。
ヴァーム……これで分かったでしょ? 柄にもなく考え過ぎてたんだよ。

「まぁあれじゃ、難しい事は抜きにして……そのぉ……ごめんなさい!」

気まずそうに頭を掻いて、姉上は頭を下げた。
それを見てヴァームは更に戸惑った、小声で「えっ? えっ?」と言い続けてる。
そして、困ったのか僕の方を見てくる。

取り合えず落ち着いたら? と口パクで伝えると、伝わったのか知れないけど、すぅ……と息を吸った。

「あっあの、ロア様!」
「ん、なんじゃ?」

ぎゅっとスカートを握って、かっ! と目を見開いて……。

「私も、申し訳ありませんでした!」

勢い良く頭を下げながら謝った。

「おっおぉ。まぁ、お互い様じゃからな……気にしてはいかんのじゃ」

あまりに勢いが凄かったから戸惑う姉上。
苦笑いしながら言い、コリコリと頬を掻いた。

「あぁ……えと、ヴァーム? そろそろ頭を上げても良いぞ?」

そう言うけど、ヴァームは頭を上げない。
そんなヴァームを見て、姉上も僕を見てきた。
目が言っている「え? ヴァーム……いつもと様子が違わないかえ?」と。
その通りだよ、いつもと様子が全く違うよ。

「ロア様、私は……このままメイドを続けていいのでしょうか? それとも主を傷付けたメイドは去るべきなのでしょうか? どうか……お答え下さい」

そんなヴァームが頭を下げたまま言った。
姉上は「へ?」と呟いて少しの間ポカーンとする、だけど素早く。

「なっななっ! 何を言うんじゃ!お主が居なくなったら……誰が朝わらわを起こすんじゃ! あと、教えて欲しい事が沢山あるんじゃからな? じゃからそんなアホな事は2度と言うでない!」

早口でそう言いながらヴァームの顔を持ち、頭をぐいっと上げさせる。
くはは……予想通りの台詞を言ったね、でもヴァームの方は予想できて無かったみたいだ。

姉上の言葉を聞いて、呆けちゃってる。
ほら、姉上はハッキリ言ってくれたよ? だからヴァーム、メイドを続けなよ。

「……ロア、様」
「え、ヴァーム? 泣いてる? お主泣いておるのか? うぇぇぇぇっ、なっ泣いておるぅぅぅっ」

くははははっ、ほんとだ。
声は出してないけど泣いてるね、何処まで何時もと違った態度を見せれば気がすむのさ……とは思うけど、今は何も言わないよ。

安心したんだよね、嫌われる覚悟で、姉上の為に色々したんだ。
でも、嫌われなくて、むしろ此処に居て欲しいと言う風な事を言われて安心したんだ。
だから姉上、そんなに戸惑わないで受け止めてあげてよ。

「え、おっ……うぉぅっ、ヴァーム? なっなんで抱き付いてくるのじゃ? あ……うぅぅっ、こっ困ったのぅ」

きゅっと抱き付いて来るヴァームに困りはしてるけど、しっかり受け止めてあげてる姉上は少し照れながら困った。
まぁそう言わないで暫くそうさせてあげなよ。

「らっラキュ……わらわはどうすれば良いんじゃ?」
「取り合えず暫くそうしてたら?」
「えっえぇぇ……」

マジでぇ? と続けて苦笑いした。

そんな僕の言葉にむぅぅ……と唸る姉上、唸りながら色々考えてるのが分かる。
で、その結果……。

「やれやれ……何がなんだか知らぬが、暫くこうしてるかの」

そう言ってヴァームの頭を優しく撫でた。
くふふふふ……微笑ましいね、これで早くも姉上とヴァームの件は落ち着いた。

はぁ……なんかどっと疲れたよ。
そう思い、僕はガクッと肩を落とした、取り合えず……ヴァームが落ち着くまで様子を見てようか。

そのあとの事も色々しないといけないからね……それが全部終わったら、姉上に文句言ってやろ、僕を叩いたのも謝れってね。

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