どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

397

凄く賑やかな食事が終わった。
いやぁ……あんなに賑やかな食事は人生で初めてかもしれん。

その後、わらわは自室へと戻る。
シルクはフドウと何処かへ行ってしまった。
フドウはシルクに一体何の話しをするのか? それが分からんから不安で仕方無い。

ぶっちゃけ隠れて聞きたいが、大事そうな話しをするっぽいので我慢しておく。
とりあえず、妙な話をしない事を願っておくかの。

「ぅぅぅぅ、腹は満たされたが、悩みは増すばかりじゃなぁ」

はぁ……やれやれ、悩みっぱなしで疲れたのじゃ、決めた。
今日は直ぐに寝よう、そうと決まれば、ヴァームに伝えねばならんな。

うぅぅっ、さっきの事もあるから、話し辛いのぅ。
じゃが話せねばならん、そもそも、わらわから仕掛けた事なんじゃ、話し辛いとか思ってはいかん。

「……ん?」

おぉ、前からラキュが歩きてきおった。
早々に食べ終わって何をしてるのかと思えば、こんな所を歩いておったのか。
てっきり部屋に戻っておるのかと思ったわ。

「姉上、話があるんだけど……良いかな?」

すれ違い様にそう言われた。
話しか、ラキュも話があるのか? もしかしてさっきの騒動の事かのぅ? うむっ、確実にそれじゃろうな。

「話と言うのは、今からかえ?」
「うん」

なるほど、今からか。
別にこれっと言って用事はない。

「時間はあるぞ」

だから頷きながら、そう答えた。

「そう。良かった」

か細く笑ったラキュは、指を鳴らす。
そしたら棺桶が現れおった、これはあれじゃ、ラキュお得意の棺桶ワープじゃな。

「お先にどうぞ」

そう言いながら、棺桶の蓋を開ける。
なので、そこに足を踏み入れる……うぐっ、この全身がグワングワン揺らされる感じっ、相変わらずこのワープする感じは慣れんなぁ。

ん? そんな事を感じておったら景色が変わった。
どうやらワープ出来たようじゃな、それを確認した後、棺桶から出て来たわらわは数歩歩く。

辿り着いたのは……ラキュの部屋の様だ。
前に何度か入った事があるが……全く部屋の様子は変わっておらぬ。
壁も赤、床も赤、家具も赤、何もかもかもが赤、あっ……いや、唯一赤じゃないのは、部屋で育ててる未熟な緑色トマトだけじゃな。
それ以外は全部赤、こうも赤いと落ち着かんのぅ。
トマトが好きじゃからと言って、やりすぎじゃろう。

まったく、弟のトマトジャンキー振りには困ったものじゃ。

「とりあえず、そこのソファに掛けてよ」
「っ、おっおぉ……」

ラキュが遅れて入ってきおった。
とりあえず、ラキュの言う通りトマト型のソファに座る。
ぅおっ……結構柔らかい、身体が軽く沈んでしまった。

「姉上、トマトジュース飲む?」
「え、あ……貰おう」

ここに来れば必ず貰えるトマトジュース、普通は水かお茶じゃろうと思うのじゃが……凄く旨い、なので不満はない。
だからラキュの部屋に来たときはトマトジュースを貰っておる。

「はい、どうぞ」
「ありがとう」

コトッ……と、テーブルに置いた後、ラキュもソファに座る。

「…………」

黙ってしまったのぉ。
何か話すんじゃないのかえ? まぁ、何か思うところがあって話し辛いんじゃろう。

じゃったら話すまで待とうではないか。

って、んう? ラキュの奴、ずぅっとわらわを見ておらんか? いや、見ておる、間違いなく見ておるのじゃ。

なぜ見る? と言うか睨んでおらんか?

「ねぇ」
「ん?」

低い声で話し掛けられた。
え、なに、なんか怖いのじゃ。

「なにか、僕に言うこと無い?」

んあ? 言う事? はて……なにかあったかのぉ?
腕を考えて見る、ラキュに言わねばならぬ事、うぅむ……ダメじゃ、なんも思い付かん。

なのでわらわは渋い顔をして「むぅぅ」と唸る。
その時、少し部屋の空気がピリリとなった来たのぅ……そう感じた時。

ラキュが口を開いた。

「そう。なにも思い付かないんだ」
「うっうむ、すまぬな」

おおぅ……。
こやつ笑っておる、じゃが明るい笑いではない。
なんと言うか……目だけは笑ってない、そう言う笑顔じゃ。
なっなに? 怖いっ。
そんな顔、せんでくれんかのぅ。

「姉上、さっき暴れた時……僕を殴ったの覚えてる?」

ん、さっき暴れた時じゃと? んー……いやぁ、あの時は本当に怒っておったからなぁ……ぶっちゃけ詳しくは覚えておらん。
しかし、ラキュは殴られたと言った……わらわ、怒りに我を忘れても弟にそんな事をする筈が……。

……あ、いや、まて。
今更じゃが、色々と思い出せて来た。
うぅぅむ、んー……あぁ、あれじゃな、わらわを止めようとした時、わらわやらかしておったな。
ラキュの言う通り……殴った覚えがある。

まっまずい……これはまずい、殴った上、その事を忘れたとなっては火に油を注ぐ様な物……これは相当怒らせてしまったようじゃ、だってラキュの奴、ずぅぅっとわらわを目が笑ってない笑顔で見てきおるもん。

これ、謝って許して貰えるのかのぉ。
許して貰えんかったら……どっどうしよう。

いや、悩むまでもない。
直ぐにラキュにしっかりと謝ろうかの、話はそれからじゃ。

「どうやら魔王は俺と結婚したいらしい」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く