どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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時刻はお昼前…何時もは程よく賑わっているんけど今の城下町は明るい内にも関わらず騒がしい、これは何かあったみたいだね…。

「もしかして祭りかな? いやいや……俺と言うイケメンを差し置いてそれは無いか?」

俺は完璧に丸く整った髪の毛を軽やかに手で撫でる、あっ……そろそろ紹介した方が良いかな?

「俺はニーズヘッグ…イケメンかヘッグと呼んでくれ」

華麗なるウインクをしつつ完璧に自己紹介を済ませる、俺は着ているエレガントな執事服を軽く払いながら1度周りの様子を見てみる。

「どぉこぉだぁ!男の娘ぉぉ!」

岩の巨人ゴーレムが、ずしんっずしんっと地響きを上げて走っている、やれやれ……これじゃ砂埃がついて服が汚れてしまう、何処かの家に避難したいね。

「腹ごなしに城下町に来たが…大変な時に来てしまったみたいだ
突っ走り魔王様は何を考えているのやら……」

やれやれと手を広げて苦笑する俺……こうやって魔物達の大運動会? を見ているのも面白いけどそろそろ移動しよう。

「と言っても宛は魔王城しか無いか…でも今はそこに行く気分じゃない、どうしようか?」

街中を爆走する魔物達を見て暫く考える、そう言えば前に来たメイド服の男の娘さん……名前は確かシルクと言ったかな? 彼とヴァームは店がどうのって言ってた、もう既に店は出来ているかもしれない……よし、彼に会いに行こう! そしてコスプレについて語り明かそうじゃないか!
思い立ったが吉日と言う奴だ、早速行こう! だが場所を知らない……。

「いや、心を落ち着かせれば息を吸うように分かる筈だ……こっちだ!」

神経を研ぎ澄ませ男の娘さんの店の場所の特定をした、俺は魔物達を軽く飛び越えその方向に向かう、ふふ……今行くよ!崇高なる麗しの男の娘さん!


「来たは良いけど……店は藻抜け殻……誰もいないね」

男の娘さんの店は直ぐに見付かった、看板に『雑貨屋シルク』と書かれてあったから直ぐに分かったよ、シンプルな店でとても綺麗だ、中に入ってみると俺が言ったように誰もいないって訳だ。

「留守か……しかし良い店だ、これはヴァームのセンスだな? 流石最強のドラゴン…常に俺の想像の斜め上を行くぜ」

きらんっと言う擬音が出そうな位、華麗に髪の毛を撫でる、この仕草最高にクールじゃないか……痺れるね。

「と、自分に酔ってる場合じゃない…」

改めて店内を見てみる、色んな商品を売ってある、あれは俺があげた牙だ、ちゃんと売ってくれている……ふっ嬉しいよ、ゆっくりと見渡しながら歩いていく。

「……?」

すると気になる物を見付けた、それは店の壁に張られた黒いボードに書かれた文字……ふふっ素晴らしいサービスじゃないか、その素晴らしい内容は次の通りだ。

・当店は男の娘が接客致します。
・素敵なお洋服取り揃えています!
・なんとっ、そのお洋服にお着替えしてくれます!
・別室で男の娘にお客様のお好みの服に着替えさせましょう!
・あっ因みに当店は雑貨屋なので色々買えます。

「素晴らしいサービス……今度是非とも来るべきだな」

微笑しながら俺は顔を押さえる……表情が緩みきってしまった、この顔はクールじゃないからな……隠さないと。

「あれが別室、あの中に衣装がある訳だ、ふふっなんて不幸…こんな時に男の娘さんがいないなんて……」

なんとか表情を元に戻し、扉を見付ける、間違いなく別室への扉だろう……一目見たいがそれは後の楽しみにしておこう、さて……この場合俺がするべき事は。

「当然留守番だ……クールなイケメンは店主が居ない店に出会したら留守番するのが鉄の掟さ」

華麗なる一人言を決め、店員が立つであろうカウンターに立つ、此処に立つとやはり雰囲気が違って見える……これが物を売る側の景色か……素敵じゃないか。
さて格好いい立ち姿で此処に来る人をお出迎えしないとね。

「では……格好いいポージングッ!!」

しゅばばっーーと格好いいポーズを決める、天に右手を上げ、左手で片目を隠し足をクロスさせる俺が考えた最高にクールな立ち姿……やはり痺れる憧れるぅ!

「顔付きはニヒルな笑みで固定…ははっ自分のセンスの良さが恐ろしい」

身を震わせポーズを固定……さてお客様は来てくれるかな? 来てくれる事を願って待っていよう、このポーズは皆に見せるべきだ! まぁ……こればっかりは神頼みだね。


「ははっ全く来ないよ!」

あれから30分、格好いいポーズで待っていたが誰も来ない……時間だけが虚しく過ぎていっただけ、だが俺はそんな事ではめげない! 何故なら……イケメンだからさっ!

「だが……そろそろ疲れた、一休みしよう」

イケメンにも疲れは来る、一旦手を降りそう。

「風がおれを此処に導いてくれた……」

と思った時だ、ガチャリっーーゆっくり扉を開けてお客様が入って来た、カウボーイが着てそうな服を着たダンディーだ……ほぉ、俺と同レベルのクールな男じゃないか。

「風がこう囁くのさ……この店に神風が吹くと」

男はシルクハットを被っていた、それで目元を隠し俺に向けて指をさし「ばんっ」と呟く……。

「その台詞……最高に決まってるじゃないか」
「ほぉ……君もそのポーズ…神風が吹いてる、お見逸れしたよ」

その男はカウボーイブーツをカチャカチャ鳴らしながら俺の方へやってくる、そして、ばんっーーと勢い良くカウンターに手を乗せてくる。

おれの名は、ゴッド息吹ブレス……よろしくな」

そして、パチンッと指を鳴らしシルクハットを指でくいっと上げ握手を求めてくる、ちらっと見える鋭い目付きの瞳は黒だった。

「俺はニーズヘッグと言うドラゴン……名はヘッグ、気軽にイケメンと呼んでくれ」

そう言って、くるっと一回転して握手に応じる、おぉ……ゴツゴツした手だ、幾つもの修羅を越えた物の手……。

「君は竜を語る者だね? 素晴らしい……気に入ったよヘッグ……いやイケメン」
「そう言う君も格好いいよ神の息吹……」

握手を終えて俺と神の息吹はお互いを見つめ合う。

「少し話をしようか……俺は君に興味が出た」
「ふっ……おれもだぜイケメン、いや風も一緒に言ってるぜ」

シルクハットの唾を下ろして言ってくる神の息吹……どうやら面白い事を話せそうだ…気持ちが昂るじゃないか。

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