どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

343

さて、あれから何10分か経った。
その間に色んな話をした、例えば……ハロウィン楽しいねとか、最近ヘッグを見ないねぇとかそんな話だ。

言われて気付いたけど、本当に見ないな……ヘッグ、今頃どこで何してるのかなぁ?

なんて事を考えたりしてたら、充分に疲れが取れた。
これで、アヤネかロアに連れ回されても1回だけなら耐えられる体力になった。
出来ることなら、そんな事あって欲しくないけどな。

「シルク、そろそろ歩く?」
「んー……そうだなぁ」

なんて事を考えたら、アヤネが聞いてきた。
おぉ、なんかそわそわしてるなぁ……もういい加減に歩きたいんだろうなぁ。

そりゃそうか、自分の意思を我慢して俺の意見を聞いてくれたしな。
……そんなに我慢するなら1人で歩き回ればいいのに、なんて思いつつ、こんな言葉を掛けてみる。

「疲れもとれたし、歩こうと思ってる」

それを聞いた瞬間、明らかに表情が変わった。
目を名一杯開いて、口元が緩む、凄く嬉しそうだ。

「ほんと?」
「ほんとうだ」
「そか。じゃ、すぐ歩こ」

シュタッ! と元気良く立ち上がったアヤネは、鼻息をむふぅ……と吹き出す。
そして、俺に早く立つように手をパタパタさせる。

そんなアヤネを見て、俺はゆっくりと立ち上がった。

「どこいく?」
「どこ行こうかな……」

歩こうと決めたは良いが、何処行くかは決めていない。
さて、どうしようかな?

って……また手を繋いで来た、手を繋ぐの好きだなぁ。

「実は、私に良い考えがある」
「ほぅ、良い考えか」

誇らしげに胸に手まで当てて、自信満々だな。
その良い考えってのは、どんな考えなんだ?

「ハロウィンらしい事、しよ」
「……えっえと、え?」

はっハロウィンらしい事?
一瞬、どういう事か考えたが……だめだ、全く分からない。

「あのね。休憩してる時、気付いたの」

ほぉ、何に気付いたんだ?

「ハロウィンらしい事してない……って」
「さっき、お菓子食べただろ? あと仮装してるし……ハロウィンらしい事はしてると思うが?」

それ以外に、らしい事ってあるか?

「まだしてない事、あるよ」
「してない事か」

はて、それはなんだろう? 腕を組んで考えてみる。
んー、えぇと……うん、ダメだ、何の事かさっぱりだ。
分からないから聞こう。

「それってなんなんだ?」
「お宅訪問して、お菓子もらうやつだよ」

そしたらキッパリ答えてくれた。
あぁ、言われてみればそれはしてないなぁ。
と言うか、今の言い方……かなりざっくりした説明だな。

「昔、一緒にやったでしょ?」
「やったな、あの時のクッキーは美味しかった」
「うん、私もそう思う。という訳で……やろ」

いや、そんな好奇心に溢れた顔で言われてもなぁ。
流石にここの住民は用意してないだろう、それにお宅訪問して「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ」って言った所で「じゃぁ、悪戯してください!」て言われるに決まってる。

だからお断りだ。
だがしかし、今のアヤネ……すっごいわくわくしてる。
ふんっ、ふんっ……て鼻息を荒くしてるし、早くやりたいのか、その場で足踏みしてる……。
これを断ったら、物凄く悲しい顔をして「やろぉよ……」とくずりはじめる。
そうなると、厄介だ……さぁどういうべきか?

そう考えて頬を掻いてると、アヤネがクスっと笑った。

「なぁんて冗談、本気にした?」
「…………なんだ、冗談か」

ふっふっふぅっ……と笑う。
まるで「してやったり」と言わんばかりの顔だ。
あぁ、盛大にしてやられたよ。

「次言うことはほんと。聞きたい?」

意地悪な顔から一変して、きょとんとした顔になる。
手で、猫みたいに「にゃんっ」とやっている。

その仕草に「可愛いなぁ」と思いながら、俺は悪戯に笑ってこう言ってやった。

「聞きたくない」
「え」
「冗談だよ」
「っ、むぅ……。してやられた」

はっはっはっ。
してやったりだ、さて……さっきのお返しもこれくらいにして、話を聞くか。

「で、本当の事ってなんなんだ?」
「意地悪したから教えない」

つんっ、とそっぽをむかれた。
いやぁ……それは御互い様だと思うんだけどなぁ。

「悪かったよ」

そう思ったけど、謝罪の意味を込めて、頭をぽんぽん叩いた。
そしたら「ふわぁ……」て嬉しそうな声をあげた。

……なんか、ちょっぴり悪い事をしてる気になった。

そんな罪悪感を感じてると、アヤネはこっちを見た。
若干頬が紅い……さっきのが恥ずかしかったんだろうな。

「いまの、気持ちよかったから教えるね」
「そっそうか。それは良かった」

敢えて、なにが気持ち良かったのかは聞かないでおこう。

「じゃ、言うよ?」
「あぁ、言ってくれ」

勿体つける様に、アヤネは大きく息を吸う、そして勢い良く……。

「お城戻ろ」

こんな事を言い出した。
しっ城に……戻る、だと?

「なんで?」
「そうしたい気分だから」

なっなるほど、気分か……。

「シルクは戻りたくない?」
「んー……どうだろう?」

よぉく考えてみる。
このままここにいても、正直やる事がない。
と言う事をふまえて、こう答える事にした。

「じゃぁ、そうするか」
「ほんとっ」

おぉ、嬉しそうだ。
だからと言って俺に抱き付いてくるのは……やっ止めてほしい。

「じゃぁ、ごぉごぉぉ」

陽気な声でアヤネは話したあと、アヤネは俺の手を繋いでくる。

「あっ……ゆっくり歩くから心配しないでね」
「いや、それは良いんだが、手を離せ」
「やだ」

にまぁって笑うアヤネは、言った通りゆっくり歩く。
はぁ……、いつも手を繋ぐのはあれか? お約束的な奴なのか?

そんな風な事を考えた後、呆れる。
……まぁ、今日は俺に合わせてくれてるから、手を繋ぐくらい我慢するか。

その時だ、ある事が脳裏に過った……。
それは、勝手に帰った事、ロアにバレたら後で煩いよな。

まっまぁ、それはあれだ。
その時は素直に「勝手に帰ってごめん」と謝ろう。
謝っても許してくれるか分からないけどな。
ま、なるようになる事を願うしかないか……。

「どうやら魔王は俺と結婚したいらしい」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く