どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「ついたな」
「うん、ついた。お外まだ明るいね」
「そうだな、あそこは暗かったからなぁ……時間の感覚狂うんだよなぁ、あと地上に来たときスッゴく眩しい」
「うん」

地上に出た訳だが、眩しさに、つい手で目を隠してしまう。
太陽を見てみると、少し日が傾いてる、だがアヤネの言う通り明るい。
だが、もうすぐ日が傾き夕方になるだろう。

なぁんて事を考えつつ城に着いた。

あぁ、余談だが……城下街地下から地上へ戻るとき、例の如くお姫様だっこされたよ。
で……そのままビョンッ! とハイジャンプした、人間が出してはいけないジャンプ力だった。

まぁ、今までの事を考えて……アヤネならこれくらい余裕だろうなぁ、なんて思った。
はい、余談終わり。

「お城着いたね」
「あぁ……」

さて、本題に戻ろう。
いま、まさに玄関扉を開けて入った訳だが……。
なんの気配もしない、そう言えば城下街を歩いてた時、誰にも出会わなかった。

これはあれだな、皆城下街地下に行ってるって事になるな。
つまり、今地上にいるのは俺とアヤネだけか。 

「取り合えず、どっか入ろ」

城に入ったら、俺をぐいぐい引っ張る。
どっかって……何処はいるつもりだよ、なんて思いつつ引っ張られていく。

あぁ、一応いっとくが……手を繋がれてるぞ。

「ロアの部屋に行かないか?」

一応こんな事を言ってみた。
そしたら、ふるふると首を横に振るうアヤネ。

「そこはダメ」
「え、なんでだ?」
「そこだと、なんかやなの」

なっなんか嫌って……なんで嫌なんだよ。
どっか入ろ? って言っただろ? 何処でも良いんじゃなかったのか?

そう考えてる内に、アヤネはきょろきょろしながら歩いてく。
……謎だ、謎の言動だ。

「どしたの?」
「あ、いや……。なにもないぞ」
「そか」

本当なら疑問を全部ぶつけたいんだが……。
まぁ……良いか、今日だけはアヤネの不思議な言動に付き合ってやろう。

「ここ入ろ」

なぁんて思ってたら、アヤネは立ち止まって、びしっ! と扉を指差した。
ほぉ……ここか、ここに入るのか。

「そうか」
「そだよ」
「なんの部屋だろうな……」
「入ってみれば分かる」

そう言った後、何故か誇らしげに部屋に入ってく。

「……普通の部屋だな」
「うん、ベットがあるだけ」

そう、アヤネが言った通りの部屋だった。
見ただけで分かる、ここは空き部屋だ。

「本当にここに入るのか?」そう聞く前に、アヤネは入っていった。
そして、なんの躊躇ちゅうちょも無くベットに座った。

「ふかふか」
「いや、ふかふかって……」
「シルクもすわって」

きゅるんっ、て感じに向けられた可愛い視線。
そして、手でベットをポンポン叩いてる。
なんかリアクションとか無いのかよ、そんな事を思いながら座った。

……あっ本当だ、柔らかい。

「このまま寝る?」
「いや、寝ない」

まだ明るいぞ? 寝るのは早すぎる。
と言うかそれ、一緒に寝るって事になるじゃないか……さらっと誘うんじゃない!

「えぇ……」

すっごい不服そうな顔してもダメな物はダメだ。

「今寝たら夜寝れないだろ?」
「っ! そうかも……。その考えは無かった、シルクは偉い」
「ははは……ありがと。褒めてくれて」

そんな事くらい考え付いてくれよな……。

「じゃ、お話ししよ」
「あぁ、それなら良いぞ」

そう言うと、アヤネは嬉しそうに微笑んだ。
……今日のアヤネの笑顔は、やけにドキッとするなぁ。

「じゃ、なんか話して」
「え」

急に話を振られても、なんにも話題はないぞ?

「なんにも無い?」
「あっあぁ……アヤネはなにかないのか?」
「ないよ」

おぉ、キッパリ言ったな。
そうか、無いから俺に聞いたのか……。

「……決めた」
「ん? なに話すか決めたのか?」
「違うよ。話す事ないから、ぽかぁんとしてるの」

ぽかぁんとか、誇らしげな顔で言ったから何事かと思ったら対した事じゃなかったな。

しかし、ぽかぁんとか。
言い方は可愛らしいが、ぼぉっとするって事だからなぁ……。

考える俺、頭を捻ってみる……他に何かやる事はないか?
……だめだ、なんにも思い付かない。
だから、俺は「そだな、ぽかぁんとしてるか」と答えた。

そしたら、アヤネはにへぇと笑った。
と言うことで、俺とアヤネは暫くぽかぁんとすることにした。

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