どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

345

ぽけぇ……としつつ、アヤネと話したりして暫く時間が経った。
流石に何もしないで、じっとしてるのが耐えられなかったのか……アヤネがやたらと話し掛けて来た。

それに俺は付き合っている。

「ひまぁ……」
「ちょっ、つつくな!」

気だるげに話して、俺の横腹をつんつんしてくる。
くっくすぐったい……暇だからって、変なちょっかいをかけるんじゃない!

「暇なら、また城下町地下へ行くか?」

言っても聞かないだろう、そう思ってこんな提案して見た。
だがしかし、首を横に振った。

「それはめんどくさい」

城下街地下からここに戻ってくるのは面倒くさくなかったのか?
と、突っ込んでやりたいが……言わないでおこう、言ったら「それはそれ、これはこれ」って言いそうだからな。

「じゃぁ……なにかするか?」
「なにするの?」

あぁ……。
そう言われると困るなぁ、言い出しっぺだが、なんにも思い付いてないんだよなぁ。

コリコリ頭を掻いて考える、なにをしようか……。
頭の中で色んな案を浮かべてみる。
あれでもない、これでもない、それでもない……。

そんな感じに考えて答えが出た。
その間約15秒、その間にアヤネはそわそわしてた。
小声で「なにするのかな?」って言ってた。
ハードルが上がるから止めてくれ。

「取り合えず……しりとりするか?」

あまりにも暇な時にする事上位に上がりそうな事を言った。
言ってみてあれだが……この案はないわぁ、幼馴染み同士でしりとりとか……なに考えてんだよ、他にあっただろ他に。

「する、したい、やりたい、やろ!」

ところが、まさかの食い付き!
両手をぎゅっと握ってやる気を見せる、心なしか目の奥が闘志の炎で燃えている。

かなりの予想外だ、まさかこんなに乗り気とは。
いやまて、これって俺を気づかって演技を……って、それはなさそうだな。
だって「はやくはやく」って催促してくるんだ。

そうか、そんなにやりたいか、じゃぁ……やるか。

「えと、じゃぁ……しりとりの"り"から始めるか」
「いや、"し"からが良い」
「ん? 別にいいぞ」
「ありがと」

ふむ、別に何処から初めてもいい気がするが……そこから始めたいならそこから始めるさ。

「ね、私からで良い?」
「いいぞ」

さて、しりとりが始まる。
思えばアヤネと、しりとりをしたのは初めてかも知れない。
だから強いのか弱いのか分からない……さぁどうくる?

って、なにを俺は考察してるんだ。
暇潰しなんだから軽くでいいだろ……。

「じゃ言うよ?」
「あぁ」
「シルク」
「……ん?」
「次はく」
「………………は?」

え? は? へ? ちょっ……え?
思わず「は?」と言ってしまったが……こんなの言わずにはいられない。

「えと、アヤネ? 今のって俺の名前……」
「人名はダメって言ってない」
「あ、そっそうだな……」

うっうん、確かにそうだ。
あぁビックリした、少し意表を突かれたな、まさか俺の名前を言うとは。

少しドキッとしたのを抑え息を整える。
えぇと……次は"く"だったな。

胡桃くるみ

シンプルなのを言ってみた、さぁ次はどうくる?

「みか……みつ

いま、みかんって言い掛けたな、完全には言ってないから見逃してやろう。
で……次は"つ"か。

「土」

短い言葉を言ってみた、特に意味はない。

「ち……ち……」

むむむぅ、と頭を抱える。
そこまで考える事はないと思うけどなぁ。
ちの付く言葉って沢山あるぞ? 例えば"地底"とか"地上"とか……。

考えるアヤネをじぃっと見る、答えが出るのを待つ。
そう言えば時間制限とか決めてなかったな……まぁそこら辺は適当な感じにしよう。

どうせ暇潰しだからな。

「あっ!」

……ん? どうやら思い付いたみたいだな。
さぁどうくる?

「チーズ」

あ、そう言えばそれがあったな、俺の大好物なのに忘れていた。
まぁそんな事はおいといてだ、次は"ず"だな。
うぅむ、地味に難しいのが来たな。

「……食べてごめんなさい」

なぁんて考えてたら、こんな事を言ってきた。
その瞬間、俺は「え?」と呟いた。

いや、だって……いきなり謝ったんだ。
ビックリもするだろう。

「えと、アヤネ?」
「次は"い"だよ」
「えぇ!?」

いっいやいや、文字て! そんなのありか?
これは抗議だ! 断固抗議だ!

「アヤネ、文字は……」
「文字がダメって言ってない」
「ぐっ……たっ確かにそうだが……」

ふっふに落ちない。
だがしかし、正論だから仕方な……くらないな、いくらないんでもアウトだアウト!

「文字はダメだ!」
「……どうしても?」
「そっそんな顔しても……」
「……ダメなの?」

くっ、なんて目をするんだ。
子犬が餌をねだる様な目をしやがってぇぇ……。

「わっ分かったよ、だが今回限りだからな?」

そんな言葉を聞いた時だ、一瞬にして顔が明るくなった、変わり身早いなぁ。

「ほんと? ありがと、あと……ほんとにごめんね」

はぁ……俺って甘いなぁ。
あと、謝るんなら言わないでくれよ。
なんて思いつつ、俺は言葉を考える。

と、そんな感じで俺とアヤネのしりとりはアヤネが飽きるまで続いた。

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