どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

313

ガチャ……。
ヴァームは俺を抱っこしながら扉を開けた。
そしたら俺をようやく下ろしてくれた、なのでその隙をついて逃げ……ようとしたけど、そうしようとする前に手首を掴まれたから出来なかった、くそぅ。

「シズハ師匠、ここにいたんですか」
「はぁい、ここにいたんですよぉ」

シズハさんは食堂にいたのか。
やっと見付けたか……ここまで来るのにどれだけ連れ回されたか……思い出すだけでも疲れるぞ。

「おはようぅ……あららぁ、しぃ君えろぉい服着てますねぇ、見てるとムラムラしてきますぅ」

今日もゆるぅい感じで喋ってる、聞いてて眠くなってくる声音だが……言ってる事を聞いたらそんな眠気なんて吹き飛ぶ。
艶かしい顔してなにいってんだ!

「あら、師匠もそう思いますか」
「はいぃ、思いますよぉ」

なんか親しげに話してる……だと。
あ、お互い近づいていったな……この間に逃げれそうだが、そう思うだけで逃げる事は不可能だからじっとてしていよう。

あ、それと鬼騎……俺を凝視するな。
更に「大変だな……」て感じの哀れみの視線を向けるのは止めろ!

「やっぱりぃ、サキュバスさんの衣装は最高ですねぇ」
「はい、シルク様はエロい服を着ると100%恥じらうのでそれを見越してこの服を仕立てました」
「わぁ……そこまで計算してたんですかぁ」
「有り難いお言葉です」

なっなんだ? 陽気に会話し始めたぞ……でも、話の内容は聞いててムカついてくるけどな。
更に言うなら、ヴァームの言ってる事は間違いじゃないから余計に腹立つ。

「あぁ、そうだぁ。ヴァっちゃん……私の事はぁ、師匠って呼ばなくて良いよぉ。気軽にシズハぁって呼んでくださぁい」
「いえ、それは出来ません。貴女は私の師匠なんです……シズハ師匠のお言葉で私はまた1つ成長したのです」
「ほへぇ、そうなんですかぁ……良かったですねぇ」
「はい」

で……この会話だが、今一話が噛み合ってない気がする。
いや、確実に噛み合ってないだろうなぁ。

はぁ……俺、もう帰って良いかな? それと早く着替えたい。
この服着てるのも嫌だが、なにより寒いんだよ。
これ、秋に着る服じゃないだろう……。

「あの、師匠っ!」
「はぁい」

ぐっ、と手をグーにするヴァーム。
その様子をにっこりしながら見るシズハさんは、自分の黒髪を揺らしながら返事した。

「これから一緒にシルク様で遊びませんか?」
「おいこら、何いってんだアホ」

このドラゴン……ニコニコしながらふざけた事を言いやがった。
俺で遊ぶ? その言葉不吉過ぎるわ! 一瞬で鳥肌たって突っ込んだぞ!

「あら、言葉通りの意味ですよ? あ……安心してください。ちゃんとマナーは守ります、触らずに撮影とポージング要求だけに止めて置きますよ」
「あのな、俺、毎回言ってるよな? やっぱり無駄か? 言っても無駄なのか? 俺はやりたくないって言ってるだろうが!」
「ふふふ、分かりますよ。嫌よ嫌よも好きのうちと言う物ですね」
「ぜっんぜん分かってない!」

くっそ……やっぱりこうなるのか!
まいっかいそうだ、正直同じ様な事の繰り返しで嫌になってきたぞ!

「わぁぁっ、しぃ君と遊びまぁす。取り合えずオセロしましょうぉ、あっ……チェスの方が良かったぁ?」
「シズハさん……少し黙っててくれ」

うきうきするシズハさんに優しく語り掛けた後、ヴァームをキツく睨んでやる。

「ふむ、睨んでくるサキュバスもそそりますねぇ……ついニヤけてしまいますよ。ふふふふ……」
「俺はこの展開がストレス掛かりすぎて、胃に穴が空きそうだ……」

手をグーパーしながらヴァームはにじり寄ってくる。
シズハさんは鬼騎に「チェス盤ありますかぁ」って聞いてる。
鬼騎は「いや、無いぞ」と戸惑いながら答えた。

あっちとこっちとじゃぁ、温度差がまるっきり違う……これが、マイペースゆるふわ人間とクレイジーコスプレ強要ドラゴンの違いか。

「さて、取り合えず写真だけ撮らせて貰いましょうか」
「断る!」
「あらあら、今までそう言いながら撮らせてくれたじゃないですか」 
「それは、お前が無理矢理撮ったからだろう!」

魔法とか色々使って身動き出来ない様にしてからとりやがって……勝手に起きた事をさらっとすり替えるな!

「?」
「いや、そうでしったけ? って感じに首を傾げるな、それが実際起きた事……」

なんだよ! 
と俺は言おうとした、だがその前にガチャっと扉が開いた。

誰か来た? それが原因で俺は口を閉じてしまう。
そして皆の視線は扉に向けられる。

「ふぁぁ……。おはよ皆、鬼騎取り合えずトマトジュースをたの……」

ラキュだ、いつもの服を着たラキュが欠伸しながら現れた。
とても眠そうに喋っていたが、俺達を見て喋るのを止めたな……そして3秒ほど固まった後、目をカッ! と見開き回れ右して後ろを振り向いて扉を蹴破って出ていってしまった。

その勢い、烈風の如し。
俺のこの格好を見て数秒で状況を悟ったか、だがな……。

「うわっ、やめっ! 離せ!」

少し行動するのが遅かったな、お前が出ていった後、直ぐにヴァームが追い掛けてったぞ。
その結果、簡単に捕まったな。

わぁわぁぎゃぁぎゃぁ騒いでる声が聞こえてくる、今物凄く抵抗してるんだろうな……だが、猫召喚で大人しくなるだろう。

そしたら犠牲者は俺だけじゃ無くなった訳か……よしっ。

軽くガッツポーズをする俺はくすっと笑う、正直ざまぁと思ってるよ。
ただ……犠牲者が増えたからと言って、状況はなんにも変わらないだけどな……。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品