どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「おっお茶……です」
「あ、ありがと……」
「けっケーキ……です」
「うん、ありがと……クーも食べなよ」
「え、あっ……うっうぅ……はっはひ!」

さぁて、どうしようかな……。
まさか、こんな事になるなんて思いもしなかったからなぁ……なんにも良い考えが思い付かないよ。

「あ、あのっ、らっらららっら……」
「……呼び捨てが言い辛いなら自由に呼んでくれて良いよ」
「すっすいません、らっラキュ様」

……お互い向かい合わせに座って気まずぅい雰囲気。
どう城に帰るか考えるのもそうだけど……今どうするかも考えないといけない。

取り合えず、覚めないうちにこの紅茶は飲もう。
………うん、美味しい。

僕が紅茶を飲むと、クーも紅茶を飲んでた。
片手で被り物を持ち上げて器用に飲んでる……けど、とても飲み辛そうだ。

飲むときだけ被り物をしないで飲めば良いのに……とか思いながらティカップを置いてケーキをパクリ。

うん、これも美味しい……。

「らっラキュ様!!」
「ん、なにかな?」

えらく大声で呼んできたね。
なんだろう、ふんっ……ふんっ……って荒い呼吸をしてる。

「おっ御代わりは、いっいります……か?」
「あ……あぁ、うん……もう要らないかな……今飲んだので5杯目だし。お腹がたぽたぽだよ」
「そっそうです……か」

クーの紅茶は美味しい、茶葉はなんなのかな? と気になりつつも何杯も出される度にくぴくぴ飲んでたんだけど……うん、流石にもう入らないね。

なので断ったんだけど……下向いちゃったね。
そして黙っちゃった……僕も黙って、ケーキを食べる。

あぁダメだなぁ、このままだとお互い黙ったまま紅茶とケーキを食べると言う気まずい時間が続く。
気まずい、そうなると非常に気まずい……。

「ねぇ、少し聞いて言いかな?」
「ひぇっ!? あっ……はっはいっ、どっどうぞ」

なので話し掛けてみた。
案の定驚かれたけど、このまま話を続けよう。

「その被り物なんだけど……」
「っ、すみません!! あっあたいコレが無いと……うっ上手く……喋れ……無いんです」
「あ、そうなんだ……」

聞きたい事とは違ったんだけど……被り物を被る理由が聞けてしまった。

「えと、そうじゃなくて……その被り物はさ、手作りかな?」

目と口の部分の所に穴を開けたカボチャの被り物……これは店に並んでる物では無いと思うんだけど、気になって聞いてみた。
すると、クーは暫く間を開けてカクカクと首を縦に振った。

えと、これは手作りって事なのかな? となると……凄いね、自分で作ったんだ……器用なもんだねぇ。

「ふーん……じゃぁ、相当大きなカボチャをくり貫いたんだね」
「はっはい……がっ頑張りました」

ぎゅぅ……っと手で被り物押さえ恥ずかしそうにしてる。
なんか、その仕草可愛いね……まぁ、そんな事恥ずかしいから口にしないけど。

「らっラキュ……様? かっ顔が……紅い……ですよ?」
「ん、あぁ……気にしなくて良いよ」

顔に出ちゃってたか、こほんっ……と咳払いして誤魔化した後、僕はくすりっと笑う。

「あとさ……そのくり貫いたカボチャの中身ってどうしたの?」
「へ!? あっ……うぅ、その……りょっ料理に……つっ使いました」
「へぇ……そうなんだ」

料理に使ったか……すっぽり顔が入るくらいのカボチャだからねぇ、相当な数の料理が出来たんだろう……。

「何の料理作ったの?」
「あ、はい……えと……じっ自分なりに……かっ考えて、けっケーキとか、おっお茶とか……つっ作り……ました」
「ケーキ……それにお茶か。カボチャってお茶になるんだね」
「はっはい……こっ香ばしくて……おっ美味しい……ですよ」

はぁ……初耳だ。
これ、あの脳筋が聞けば驚くんじゃないかな? 料理の事毎日調べてるし……あと最近、人間界に行く計画があるから、それを期に人間界の料理法とかに興味を持ってたしね……。

今度教えてあげよう。
そして、「あれぇ? 料理の事調べてる癖にそんな事も知らないの?」と笑いながら言ってやろう。
クーに聞くまで僕も知らなかったけど……まぁ、それは隠して言ってやろう。

「っ……ひぃ!」
「ん? どうかした? 急に驚いたりして」
「え、あ……らっラキュ様……きょっ凶悪な……わっ笑い方して……ましたから……うぅ」

きょっ凶悪? 確かにさっき笑ったけど……そんなに凶悪な顔はしてない筈だ。

「失礼だね、至って普通の笑顔だよ」
「え? あっ……はっはい、そっそうですか」

……なんかふに落ちないけど、理解してくれた。

と言うか今、会話できてないかな?
被り物してない時は、ガッチガチになって会話にならないけど今はそうじゃない……。

さっき言ってたけど、被り物をすれば会話は出来るんだね。

「くふふふ……」
「えあ!? なっなななっ、何か……おっ可笑しかった……ですか?」
「ん? あぁ……まぁね、ちょっと可笑しかったかな」

僕がそう言うと、「へぇぇ!?」って言った後、身体を退けどらせて驚く。

「クーはあれだね、目線を感じなければちゃんと話せるんだね」
「っ! ごっごごごっ、ごっごめんなさい! あっあたいっ、ひっ必要以上にしっ視線が……きっ気になる、まっ魔物……なんです。おっ可笑しい……ですよね? へっ変ですよね? しょっ……正直に……言って……良いですよ」

ひっ低いトーンで謝って来た。
それに……ふむ、視線が気になる……か。
だから僕と初めてあった時も緊張してたんだ。

つまりあれだね……僕の勝手な予想は半分当たってた訳だ。
極度の緊張性かと思ったけど……そんな理由があったんだね。

「こっこの被り物を被ったのも……しっ視線を防ぐ……為なんです。でっでも! こんなの可笑しいですよね? 皆はこんな被り物してないのに……あっあたいだけ……こっこんな事して……ダメ……ですよね。だっだからたまに被らないで外に……出るん……ですけど、けっ結果は……ダメダメなんです」

このままじゃダメだと思ってるんだ。
やっぱりそうだったね……クーは自分なりに変わろうと頑張ってる。

今の話を聞いて心にぐっと来たね……だからこそ僕は、クーと友達になりたいんだ。
だから僕は優しい表情をしてこう言ってあげた。

「なに言ってるの? 良い事じゃないか、被り物をすれば喋れる。何も喋れないのよりましでしょ?」

他の奴等から聞いたら勝手な意見だろうね。
でも良いんだ、まずは出来る事からすれば良い……そこから成長すれば良いんだ。

「素のままでダメならさ……素のままで喋れるまでその被り物はすれば良いよ。他の奴等の事なんて気にする必要無いよ。そう言う風にさ、考え方を変えてみよっか」



淡々とながぁく話をした後、それを聞いたクーは「……え」と小さな声を漏らした。
あ……これはまずったかも、ちょっとクサイ台詞だったかなぁ。
え? 何言ってんの? とか思われたかな? なんて思っていると……次の瞬間、思いもしなかった事が起きたのだった……。

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