どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

287

スタっ……。
軽快にジャンプし、僕は城下町地下から地上へと戻った。

「……はぁ。やっと解放してくれた」

ポツリと語った後、空を見上げてみる。
うわっ、もう真っ暗じゃん……こう暗いと地上に戻ってきた感じがしないよ。

なんて、とぼけた事言える程元気ならさっさと城に帰ろう。
きっと今頃姉上が「ラキュが帰ってこんっ! 弟が不良になってしまったのじゃ! ヴァームっ、今すぐちょい悪風の男の娘の服装を調達せいっ!」って言ってる頃だろう。

そうはさせるか、そうはさせない為にも早く帰ろう。

…………え、恩返しはどうなったのか?
それ、言わないとダメ? スッゴク大変だったから言いたかったんだけど……言わないとダメなの?

まぁ……そうだよね、気になるよね。
じゃぁ、全部話したら長くなるからざっくりと言うよ……。

えと、まず始めに「お茶……ですっ!」と言われてお茶を貰ったね。
茶葉は魔界に生えてるマンドラゴラを使ったんだって。

で、次に「お茶菓子ですっ」って言われて、エデンの果実が出てきたよ。
正直焦ったね、だってコレ……天界の果物だもん。
これ、どうしたの? って聞いたら、自称イケメンさんのドラゴンに種を貰って育てたって言ってきたよ。

もう絶句したね。
だって天界ってあれだもん、魔界の遥か上空にあって行くのしんどい位遠い所だもん。

それにその自称イケメンさんはそこに行ったって事だよ。
と言うか、そのイケメンって……ヘッグの事じゃないよね? まぁ、そんな事はおいとこう。

で、折角だから食べようって思った訳だよ。
その果実の見た目は、皮剥いてない状態の色は白、それが金色に輝いてて丸いんだよ。
因みに、エデンの果実は木に生える果物だよ。

クータンに出された物は皮が剥かれた状態だった。
三日月の形で出されてたよ、人間界の事が書かれてる本の中に載ってたリンゴと良く似てたよ。

で、いざ食べてみると……うまいのなんの。
果汁がぶわぁぁっ、食感シャリッジュワァァァ……って感じだったよ。
え? 良くわかんない? ごめんね食レポ下手くそで。

まぁ味の感想を言うと、とっても甘かったよ。
でも、しつこい甘さじゃなくて爽やかな甘さ……って言うのかな? そう感じたよ。

で、あまりに美味しかったから「君も食べたら?」って言ったら「あっ、えと……毎日食べてるから……いっ良いですっ」と返ってきたんだ。

そうか、毎日食べてるんだ……まじで?
え、うそ……これ、一応高級品だよ? あまりに美味しいから禁断の果実って言われてる位の高級品だよ? 天界の住人が独占してんじゃない? て言われるくらい出回らない高級品だよ? って心の中で思ったあと聞いて見たんだよ。
「そっそうなんだ……天界には良く行くの?」ってね。

そしたら……「あ、いえ……育てたのが沢山……あっあるん……です」と来たもんだ。
「えぇっ!?」って声が出たね。

それ、天界の住人が聞いたら「まじかっ!」って驚くくらいの事しでかしたんじゃない?
これ、売れるよ? 売り物に出きるよ? それくらい美味しいもん。

実際、天界の住人が魔界に降りてきて売ってるもん。
すっごく高いから金持ってる魔族しか買わないけど……売れるからね?

……と、僕が驚いたって話しは良いんだよ。
で、取り合えず落ち着いて食べてたら。

「くっ口直しに、なっ何か食べますか?」と優しく聞かれたんだ。
時計見てみると、お昼前だったんだ、うわっ……すっごく長居してるじゃんって思った後、「お昼近いからもう帰るよ、色々ありがとね」って言ったんだ。

もう充分恩を返して貰ったからね……恩を上げた覚えはないけど。
その事実があるから、これ以上何かされると罪悪感とか色々出てくるから帰ろうと立ち上がったんだ。

その瞬間、シュバッ! と素早くクータンが僕の目の前にやってきて強制的に座らされたんだ。

で、顔を近付けて……「かっ帰っちゃ……だっダメ……です」
って、空いた穴からこひゅぅ……こひゅぅ……って息使いが聞こえる位すっごい低い声で言われたんだ。

それ聞いて彼女の必死さを感じたよ。
で、脳裏に……今買えったら城まで付いてきそうだと。

だから「あ、うん……」と困りながら答えた後、座り直したね。
なんと言うか……凄い迫力を感じたよ。

……まぁ、そんな事を感じながら時間が経っていったんだ。

そこからは多分察したと思うんだけど……恩を返すってレベルじゃないくらいもてなされたよ。
何度も何度も「あ、いやもう良いから、もう充分だからっ」と言ってもダメ。
「いっいや、あの……ダメです!」の一点張り。

何がダメなのさっ、ダメって言うのがダメなんだよ! と怒ろうと思ったんだけど……あまりの押しの強さに怒る余裕なんて無かった。

まるで、お酒を無理に進める上司みたいだったよ。

まぁ……そんな事があって今の時間になった。
帰り際に「こっこのご恩は、いっ一生……わっわわっ忘れませんっ!」って言われた。

それ、僕の台詞……。
盛大にもてなされたから、こっちも何か返さないとダメなんじゃないの? って言う思いと、あぁ……怪我させた上にこんなにもたなされてしまった……と言う罪悪感で一杯になったよ。

正直言うと、彼女とはもう会いたくない……嫌いとか苦手とかそう言う理由じゃない。
……また、あのおもてなし地獄が来るんじゃないか? と言う恐怖からだよ。

……これで分かった? 僕はこんな事になってたんだよ? 分かったらこの話しは終わり。

さっさと城に帰ろう。
魔法でパパっと帰りたい所だけど……多分僕の部屋にはヴァームがいると思うからやっちゃダメだ。

だからと言って玄関から入ると姉上に捕まる。
そして「偉く遅く帰ってきたのぅ……まさか、彼女でも出来たんじゃあるまいなぁ? 問い質してやるのじゃっ!」って感じの尋問が始まる。

……うっわぁそんな尋問めんどくさい、帰りたくないねぇ。
どうしよう、今日は野宿して朝帰りする? いや……そんな事したら余計に事態は悪化する。

……仕方ない、本当は帰りたくないけど、一番マシであろう姉上に尋問ルートを選択しよう。
はぁ……いっぱいもてなされたけど、散々な1日になっちゃったね。

深ぁい深ぁいため息を吐いた後、僕は城へと帰っていく。

この後、姉上の尋問どころか、遅く帰って来た事の罰を兼ねての強制的にコスプレされる事態になったのは言うまでもない……。

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