どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

279

「そっその……アノネ、ラキュ君……正直ニナラナイト……だっダメ」
「はっはぁ……」

クー、今良い事言ってるんだけど……なんと言うか、喋り方と緊張でガチガチの表情で台無しになってる。

と言うか……もう本格的に心配になってきた。
汗が滝のように出てるじゃん、ここはもう一度被り物を被れって言おうか……。

と、それを言おうとした時だった。

「あぁもうっ無理! 限界っ!」

クーは、急に大声をあげた後、立ち上がり、自分で投げ飛ばしたカボチャの被り物の所へ、ばびゅんっと凄まじい速さですっ飛んで行く、多分僕が今まで見てきたどの生物よりも早いね……。

って、それはどうでも良いとして……ほら、やっぱり限界だったじゃないか。
今、シリアスな雰囲気になってたのに、ゆるぅい感じになってしまった。
だから無理しないで被れって言ったのに……。

「はぅぅ……。やっぱりコレがないと、あたいはダメダメになちゃう……」

ため息を吐きつつ、何事も無かったかの様にクーは元の場所に座り一息つき僕を見てくる。

「えっえと、自分の……きっ気持ちには、素直に……ならないと、だだっダメだよ」
「あ、えと……。それはもう聞いたよ。と言うか、それ被っても言葉のぎこちなさは消えないんだね」
「うっ……ほっほっといてよ」

あ、拗ねたね。
被り物被って良く分からないけど、じぃっと睨まれてる気がするよ。

「……話を戻すけどさ、自分の気持ちに正直にって言うけどさ、僕はいつも正直だよ?」

自分の気持ちには嘘をついた事がない、僕は自分の思った通りに行動してる。
って……これだと好き勝手行動してる見たいに聞こえちゃうかな?

そう自分で思ってると、クーはふるふると首を振った。

「いっ今の……ラキュ君に、かっ限っては……そうじゃ、ない……よ」
「今の僕?」

まさか、僕は何処も変わりがないよ。

「いっ何時ものラキュ君……なら、明るく笑って行動……してる。たまに他人をからかって、それを見て笑って……悪戯っ子みたいだった」
「ちょっと待って、僕ってそう言うイメージなの?」
「うっうん、そう……だよ? えっえと、はっ話を続ける……ね」

え、ちょっ!
慌てて何か言ってやろうとしたけど、クーは構わず話し続けて行く。
僕はからかいたくてからかってるんじゃない、いかにもからかい安そうな物が目に入った時にだけ面白がってからかってるだけだよ?

その辺を間違えないで欲しいね、悪戯っ子とは全く違うよ。

と……そんな話は今は良いか。
余計な事はおいといて、クーの話を聞こう。

「……今のラキュ君、いっ色々考え過ぎてて、その……ダメになってる」
「え、だっダメになってる? 僕が?」

僕の問い掛けにクーは静かに頷く。
ダメになってる……か、そう……なのかな? そう言う事って自分じゃ分からないよ。

「うん……色々考え過ぎてて、ダメになってる」
「えっえーと……どういう事?」

クーが何を言いたいか分からない。
何を伝えたいのかな?

「えっえとですね、つっつまり……じっ自分のお姉さんの恋愛を……ラキュ君が気にする必要は……ないって事、だよ」

クーの言葉を聞いた瞬間、頭がカッと熱くなった。
僕が気にする必要はない? なにそれ、どう言う意味で言ってるのかな……。

「それ、どう言う事かな?」

怖がるクーは、びくっと身体を震わせる。
怯えさせたのは申し訳ないけどさ……その言葉、僕にとっては怒る言葉だからね。

納得できる言葉を聞くまで問いたださせて貰うよ。

「クー、しっかり説明して貰えるかな?」
「………」

あ、黙っちゃったね、と思った時だ……。

「お姉さん……の恋愛だし、他人がして良いのは、おっ応援だけ……あたいはそう思う」

直ぐに話した。
……して良いのは応援だけ?
周りが手助けしないと、姉上は……告白しない。
未だに自分にはまだ足りない所があるとか言って頑張り続けてる。

これ以上頑張らなくて良いのに。
あれ以上どうしようって言うのさ……そのままシルク君に告白しても大丈夫。
自分の気持ちを伝えても大丈夫、それなのに姉上はそれをしない。

いや、姉上だけじゃない……シルク君もそうだ。
気付いてあげてよ、これ以上姉上を頑張らせないでよ!

……応援だけじゃダメなんだ、それがクーは分かっていない。

「僕はそう思わないんだけど?」
「……ラキュ君がロア様の事、だっ大事にしてると言うのは……わっ分かったよ」

その気持ちが分かってるなら、そう言う事……言わないで欲しいな。

「……ほんと、らしくない……ね」
「いやいや……らしくないって、僕は何時も通りだよ?」

いてもと違う、何度もそれは聞いた。
だけど、僕はいつも通り、何も変わらないよ。

少し苛立ちながら話していると、クーが静かに息を吐いて。

「……ちっ違うよ。きっ気づいてないの? 何時ものラキュ君なら明るい顔してるのに……今のラキュ君、とっても難しい顔……してるよ」

こう言ってきた。
クーのその言葉を聞いた瞬間、え? となり自分の頬を手で押さえてしまう。

「ラキュ君とは友達だし、そっそう言うのは……分かるよ。ねぇラキュ君、あたいが昔言われた事を言うね……」

クーは、すぅ……と一息着いてから再び話してくる。

「かっ考え方……変えて見ようよ」
「考え方を……変える?」

それを聞いた瞬間、頭に昇った熱がすぅっ……と引いていく。
考え方……そんな事、僕は言ったかな?

……それよりも、今の声音。
被り物で顔は隠れているけど、きっと今のクーの目は、とても澄んだ目付きをしてるんだろうな……。

そう感じてしまう優しい声音だった、同時に昔を思い出してしまう。
そうそれは……僕が初めてクーと出会った時の事だ。

僕の頭の中で、あの時の思い出が映画の様に写し出されていった……。 

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