どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

274

ラムの話が終わった。
その話を聞いて思った事がある。

「全体的にお前が興奮した話じゃないか! 侵入者がどうのと言う話がちっとも入ってこなかったぞ!」

だからそれを突っ込んでやった。
くっ……怖がって損した、だからその損した気持ちをぶつけてやる。

「どっどうしたシルク……確かにその通りじゃが、そこまで興奮せんでも良いじゃろう」

そしたら、ロアが困惑気味に俺を見て来た。
……しまった、少し熱くなりすぎたみたいだ。
落ち着こう、怖がってたのがバレるのは嫌だからな。

「あ、そっそうだな……悪い」

あははは、と苦笑い。
誤魔化せてる感じがしないがこれで乗りきろう。
くっ、皆の視線が俺に集中してる。
やはり、誤魔化せてないか? だったら……。

「えっえと、不審者が出たんだよな?」

話を戻そう。
かなり強引だが大丈夫だろう、変態的な内容で埋もれがちだが、ラムの話の本題はそれだ。

「あ、そうじゃ……わらわもシルクと同じ事を言ってやろうと思ったが、大変な事が起きたのぅ」

むぅ……。
と、呻きあごを触るロア、よしっ、上手く誤魔化せたみたいだ。
皆がざわつき始めた。

「ラム、それ本当です? 見間違いじゃないです?」
「何を言いますの! あたしはこの目で見ましたわっ! それに……あんな妙な格好をすれば嫌でも見間違える筈がありませんのっ」

おっおぅ……凄い力強く言ってな。
話しを聞く限りでは、裸で白い仮面を被ってたんだよな?
まぁ、裸なのは風呂場だからだろうが……なぜ仮面をつけている? その時点で十分怪しい、侵入者で変質者なのは間違いないだろう。

と言うか、ここに住む奴等ほぼ全員がそれに近い奴等なんだよなぁ……。
と思ってしまったが、その考えは首をふって振り払って考えないようにした。

「……むぅ」

って、どうした? 急にアヤネが難しい顔をしだしたぞ。
小声で「その人……知ってる様な気がする」と呟く。
それが耳に入ったのか、ロアが反応する。

「なっなんじゃと! それは本当かえ?」
「気がするだけだから分かんないけど……気のせいかな?」

偉くざっくりとした言いようだな。
まぁ、それがどうであれ……この問題、然程大きな問題でも無い様な気がするんだよな……。
だって、この城に侵入したとして何をする?

ここに住んで数ヵ月足らずだが、盗める物は何もないぞ?
目的が物じゃなくて魔物だとしてもそうだ。
ここには変態しかいない、だから盗んだり誰かが拐われる様な事は無い気がする。

いや、まぁ……城に侵入者が入ったのは大変だ。
だが、そう思ってしまうのだ。

それにアヤネと同じで根拠はないが……その侵入者、多分俺も知ってると思う。

「気のせいか……ふわっとしてるのぅ、確信が持てたらまた話すのじゃぞ」
「ん、わかった」

ロアはそう言った後、大きなため息をついた。

「これを言うのは、何度目になるか分からんが……ここ最近、変な事が続けて起こるのぅ。何かの予兆かえ?」
「……確かに、そうだな」

ロアに同意する。
確かにそうだ、幾らなんでも変な事が起きすぎてるよな……。
ロアの言う通り、何かの予兆だと考えても仕方ない。

「ロア様」
「なんじゃ、ヴァーム」
「その話が本当だとすれば、早急になんとかすべだと思います」
「……うむ、そうじゃのぅ」

うんうん、と頷くロア。
まぁそうだよな、幾ら盗む者も無い所に侵入者が来たとしても、侵入者されたら何とかしなきゃいけない。

「しかしのぅ、そやつは今何処に潜んでるかわからんからのぅ……と言うか、そいつは何時侵入したんじゃろな」
「あぁ、そうだな。今更だが俺もそう思った」

ロアに言われてはっとなったよ。
問題はそこだよな、最近侵入されたのか……それとも、何ヵ月も前に侵入されてたのか……後者なら、それに気付かず過ごしてた事になるから怖い。

「ラムよ」
「はい!」
「後で、そやつの容姿とかを再び教えてくれんか?」
「了解しましたわ!」

そんな話をしていると、ラキュが立ち上がった。
皆はそれに注目する、そして何も言わずに出ていこうとする。

「あ、ラキュよ。出ていくのなら気を付けるのじゃぞ? さっき話した様に変な奴がいるかもしれんからの」

それをロアがひき止めた。
そして注意を呼び掛ける、その呼び掛けに「分かってるよ姉上」と軽く返した後、ラキュは出ていってしまった。

ふむ……やっぱり様子が変だ。
体調でも悪いのか?
……と心配しつつ、俺も立ち上がった。
侵入者の事は大変だが、俺にはやる事がある。

店を開かないといけない、だからこれから行くのだ。

「じゃ、俺も行くぞ」
「え、ちょっちょっと待つのじゃ! シルク1人では危ない! 誰か一緒に……」
「大丈夫だ、もし出会したら全力で逃げるから」

ロアの言葉を遮って、俺もそこから出ていった。
さて、今日も店の経営を頑張ろう。

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