どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

270

ちゅんっ……ちゅんっちゅんっ。

小鳥がさえずってる、その声が聞こえ、もどもどと顔を動かしながらベランダの方を見てみる。

カーテンの隙間から光が差し込んでいる。
それを開けたら、きっと清々しい朝の景色が広がってるんだろうな……これで安眠できていたら、もっと清々しいと思ってただろうな。

「うぅ、あぁぁ……眠い」

ふぁぁっ、と大きな欠伸をしてしまう。
いつの間にか朝になってたみたいだ、俺は昨夜色々あって眠れなかった……別に恐くて眠れなかったとかそう言うのじゃない。
昨夜は……その……あれだ、色々と寝辛かった、だから寝れなかったんだ。

あ、そうだ……昨日ロアが隣に居なかったんだが、いつの間にか隣にいた。
それに気がついたのは今さっきだがな。

「いつの間にか、抱きついて来てる……な」

くっ、相も変わらず抱きつくのは変わらない。
強引に押してみても、ロアはびくともしない、安らかな顔で寝息をたてている。

……今日は、このままでも良いかな。
だって、今俺は凄く眠たい。
何時もなら引き剥がそうと頑張ってる所だが……今日はそれはしなくて良い。
と言うかする気が起きない、だって眠いもの。

「……」

多少の恥ずかしさはあるが、寝てしまおう。
という訳でおやすみなさい……ぐぅぅ。


「んっ……んんっ、ふっあぁぁ……眠い……のじゃ」

わらわは眠い目を擦りながら身体をもどもどと動かす。
うぅ……眠い、凄く眠い。

今、目が覚めてしまったが……まだ眠気がある。
わらわの朝は何時もこんな感じ、眠さに負けて二度寝してしまう。

今日も眠気には勝てん、と言う事で二度寝するかの……と思ったが、目の前の光景を見て驚いてしまう。

「おぅっ、しっシルク……」

シルクじゃ、シルクがおる。
そう言えば、わらわは寝る時にシルクを抱いて寝てた気がする。
あぁ……つまり、そのままの状態で朝を迎えてしまったと言う事じゃな。

驚きはしたが、眠気は吹き飛ばない。
それよりも、気持ちがドキドキしてきおった……わらわが抱き付いたにせよ、こっこれは恥ずかしくはある。

毎日こんな感じで朝を迎えてはいるが……うむ、やはり筈かしい。
だからと言って、シルクを抱き締めるのはやめんがな、それとこれとは話は別じゃ。

「……ふむ、やはりシルクは……可愛いのぅ」

と、ここで目の前にいるシルクをじっくり見てみる。
可愛い寝顔じゃ、すぅ……すぅ……と可愛らしい寝息をたておって……くっ、いかんっ、可愛すぎて良からぬ気持ちが沸き上がってくるのじゃ。

「普段はつんっとした顔じゃが、今はどうじゃ、優しい顔ではないか。あぁ……たぎるっ、この顔を見ているとたぎってしまう!」

いや、もうたぎってるのじゃ!
だって、眠気が吹き飛んでおるもの。
くふふふ……こうなったらやる事は1つじゃな、このまま抱き締めたまま過ごすのじゃ。

という訳で……ぎゅぅぅっと抱き締めるのじゃ。
シルクが起きん程度に軽くの……むっはぁぁっ、良い匂いじゃのぅぅ、さいっこうじゃぁぁっ。

すんすんっすんっすすんっ、と言う感じに嗅ぐ、犬か! って言われる位嗅ぐ。

こっこれど男の娘の香り……シルクの香り!
あ、今のわらわ変態っぽいの。
少しだけ自重するかの……匂いを嗅ぐのは少しだけにしておくのじゃ。

これで起きてしまっては至福の時間が終わってしまうからのぅ。

と、その時じゃ……わらわはとある事に気がついた。

シルクは朝は早く起きる人じゃ、毎回起きて直ぐに可愛く騒ぐからのぅ……それがわらわの朝の日課みたいなものじゃ。

しかし、しかしじゃ! 今日はそれがない。
こうやって、シルクを抱き締めると言う幸せな時間を過ごしておる。

「…………まぁ、それはどうでもいか」

幸せなのは変わり無いからのぅ、何も文句は無いのじゃ、という訳で暫くはこのままでいるかの。

「くふふぅ、幸せなじゃのぅ……」

という訳で、わらわはこのままでいる事にした。
多分、ヴァームがこの部屋に来るじゃろう……じゃが、それまでは抱き付いていよう。

シルクよ、そう言う訳じゃから起きるでないぞ? 出来れば長く抱き付いていたいからの。


この後、暫くしてシルクが起きて「おわぁぁぁっ!?」と驚いた。
くふふふ、いつもの朝の光景が見れたのぅ、わらわはそれを見て微笑んだのであった。

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