どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「じっ実は……ですね。いっ今、ロア様とヴァーム……さんが来てるんです」
「え?」
「へぁ?」

わたわたするクーの言葉に驚きの声が出てしまった。
えっ……えと、姉上とヴァームが来てる……だって?
その事実を確かめようと、クーの背後を覗こうとした時……。

「なんじゃ? 客でも来たのかえ?」
「私達に構わず対応してくれて構わないですよ」

姉上とヴァームの声が聞こえた、どっどうやら本当に来ているらしい。

って、うぉぅ! アヤネが凄い睨んできてる。
えっちょっ、なっなんで詰め寄ってくるの? こっ怖いんだけど……。

「ロアはここの事を知らないんじゃ無かったの?」

……あ、そうだ。
確か、アヤネにはロアの知らない場所は此処等辺だって事で案内してたんだ。
なのにロアに出会して言い寄られてるんだね……察したよ。

「えっえとね、僕はあまり知らないって言ったんだ。全く知らないって事じゃ無いんだよ?」
「…………」

うっ、すっごい疑いの視線。
疑われてるなぁ。

「あっあの……」

苦笑いしながら後退りしてると、クーが話し掛けて来た。
すると、アヤネが「なに?」って感じでクーを見る。

「ひぅっ! えっえと、あっあの! たっ立ち話もなんでしゅから……その、なんですから、なっ中にはっはいりましぇんか?」

所々噛みまくりながらだけどそう言ってくれた。
ナイス助け船、これに乗らない手はないね。

「うっうん、そうさせて……」
「入らない」

貰おうかな? と言おうと思ったけど、遮ってきた。
あぁ、逃げ道を遮られた、アヤネは僕の腕をがっちり掴んできてる。
逃がさないつもりだ……中に入って誤解を解きたかったんだけど……どうやらダメそうだね。

すると、クータンはびくっとなり、急にしょんぼりする。

「そう……ですよね、入りたくありませんよね。そりゃそうですよ、こんな根倉な魔物の家になったら、あたいみたいに根暗で陰気な性格になっちゃいますよね……。ふふふ……良いんですよ? あたいが根暗なのは何時もの事なんです。あぁ……自分が惨めですねぇ、大地に生まれ変わって一生下から上を見る人生を送りたい……」

そして、長々とネガティブ発言を始める。
もうあれだよ、どよよーんって感じに落ち込んでるよ。
て言うか、良くそんな長くネガティブ発言出来るね……もっと自分に自信を持てば良いのに……。

呆れる僕の横でネガティブモードのクーを見て、アヤネは焦りだす。
だけど、それも最初だけで直ぐに、にこっと笑って優しく話し掛ける。

「クーちゃん、そんな事言っちゃダメ。家に入るから、元気出そ?」

わたわたしながら、クーの両手をぎゅっと握る。
それを見たクーは、びくっと反応し、「あ、うぅ……急なボディタッチはダメですぅ……」と小さな声で話す。

……うん、クーのネガティブモードはなんとかなった。
これもアヤネのお陰だね。
こう言うフレンドリーさがアヤネの良い所だよね。

なんて、心の中でアヤネを誉める。
そしたら、口をぷるぷるさせながらクーが「えっえと、暗くて地味な部屋ですけど……どっどうぞ」と言って案内してくれる。

なので、ありがたく入らせて貰う。
一歩家に入ると、まず目につくのはクーの趣味であるアンティークの家具、そしてテーブルに置かれた紅茶と美味しそうなシフォンケーキだ。
見ただけでふわふわなのが分かる、きっと甘くて美味しいんだろうね。

で、テーブルの周りに置かれたソファーに座る2人の魔物。

……うん、やっぱりいたね。
声が聞こえたから確実にいると思ったよ。
姉上、ヴァーム……なんで君達がここにいるのさ。

僕がくすっと笑うと、ソファーに座って、紅茶を飲んでいる姉上が僕をじぃっと見てきた。

「変な所であったのぅ、ラキュ」
「それはこっちの台詞だよ」

普段なら、ここには来ない筈なのに……もしかして、ここに何か用があるのかな? いや、あるからここにきたのか。

「あらアヤネさん、今日はラキュ様とご一緒ですか?」
「……見た通りだよ」

なんて話してると、ヴァームとアヤネが会話してた。
どことなくギスギスした雰囲気を感じた。
確実に昨夜の事が原因だろうね……。

もう、2人の間でバチバチ火花が散っちゃってるもん。
……もしかしなくても、今鉢合わせしちゃいけない人達なのかもしれないね。

「あっあの、ラキュ君はトマトジュースで……いっ良いですか?」
「あ、それで良いよ」

腕を組んで、染々考えつつ、クーの言葉に応える。
そうした後、僕はソファーに座った。
正面には姉上がいる。
それを確認したら、アヤネが隣に座ってきた。
勿論、アヤネの正面にはヴァームがいる。

で、座ったのは良いんだけど……誰も喋らない。
うん、気まずいね、どうしよっかこれ。

「あっアヤネさんっ、飲み物は、こっ紅茶で……いっ良いですか?」
「うん、いいよ。あっ……お砂糖沢山入れてね」
「わっ分かりました……」

気まずい雰囲気を打ち消すかの様にクーが話してくれた。
でも、その会話が終わった瞬間……また静かになった。

あぁ、どうしよっかなぁ? と思ったとき。
姉上が再び、紅茶をゆっくり飲み、ティーカップをテーブルに、とんっと置く。

「えと、取り合えず……何か話さぬか?」

とても気まずそうに話してきた。
そしたらヴァームがくすりと笑った、それに対して「なっ何を笑っておるのじゃ!」と声をあげる。

「ふふ、申し訳ありせん……必死に場を盛り上げようとする様が可笑しかったのでつい笑ってしまいました」
「くっ……ヴァーム、貴様は物事をハッキリ言い過ぎじゃ」
「ハッキリ申上げないと、ロア様は分かってくれないでしょう?」
「おっおまっ! 遠回しにわらわをバカだと言っとらんか?」
「……少し」
「むきぃぃっ! なんじゃこの従者! すっごい腹立つのじゃぁっ!」

あ、場が盛り上がった。
その瞬間に、クーが静かに飲み物と小さなお皿とフォークを持ってきてくれた。

「ゆっゆっくり、していって……くっくださいね」
「うん、ゆっくりさせてもらうよ」
「クーちゃんも座ろ。私は今、いっぱいお話したい気分」
「えっ、あっ、はいぃっ! でっでは自分の分の飲み物とってきますねっ!」

前でぎゃいぎゃい言い合ってるけど、こっちはのほほんとしていて平和だね。
そう思いつつ、グラスに入ったトマトジュースを飲む。

うん、美味しい……暫くこの味を堪能した後、姉上とヴァームを止めよう。
それから、色々と話をしようかな……。

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