どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「ふぅん、なるほどね」

らっ君は納得したのか、うんうんと首を縦に振る。

「自分もシルク君の為に動こうとした訳か……」
「そゆこと」

私、むぅちゃんと話してて思ったんだ。
あのままじゃいけない、ロアが頑張ってるんなら、私も頑張らなきゃって……。

側にいるだけじゃダメなんだって思った。
だから動いた。
料理はその思いの行動の1つ、他に思い付く事があったらやるつもりだ。

「くふふ、普段は変な言動が目立つけど……頑張ってるね」
「……それ皮肉?」
「いや? 誉めてるんだよ?」
「ほんと?」
「ほんとほんと」

とてもそうは見えない、だってクスクス笑ってるもん。
あれは悪い事を考えながらする笑い……だと思う。
だから信用しない、疑いの視線で見てやる。

「良いよ、案内してあげる」
「っ!」

ぱっ、と表情を変えちゃう私。
だってらっ君が嬉しい事を言ってくれたもん。

「ただし、するのは案内だけだよ。あくまで僕が応援してるのは、姉上だからね」
「ん、それでも良い。案内してくれなるならね。ありがと」
「うん、どういたしまして」

相変わらずストレートな物言い。
だけど、してくれるなら何でも良い。
……そう言えば、らっ君は海に言って洞窟に私と2人きりになった時にもそう言う事を言ってた。

……それほどロアの事を大切に思ってるんだね。
良い弟だね。

「じゃ、行こっか」
「うん」

そう言って先に進むらっ君、私はそれに着いていく。
あ……そう言えばあの事を言うの忘れてた。

「らっ君」
「ん、なに?」

私が話し掛けると、らっ君は立ち止まった。
そして振り替えって私の方を見る。

「ロアが知らない場所を案内して」
「……難しい注文だね。姉上は魔王だから城下町の事は知り尽くしてるよ?」
「うっ……。そっそう」

言われて見ればそうかも。
ロアは魔王、乳デカでスタイル良くて、とても魔王に見えないのに……やはり街の事は知り尽くしてるんだ。

だったら私の計画は、やる前から終わってる。
……やる気が無くなった、こんなの街を見て回るのは無駄だ。

仕方ない、シルクとのデートは他の所でやろう。
それと、気を引く為の行動は他のとこで頑張ろう。
という訳で、頼んでおいて申し訳ないけど、らっ君には「やっぱり案内は良い」って言おう。

そう思って口を開いた時だった。
らっ君が先に話してきた。

「いや……あったよ。姉上が知らない所。あっ、正確にはあまり知らない場所だね」

……っ! なっなんですと。
私は目をきらきらと輝かせる。

「それほんと?」

興奮気味にらっ君に近寄り、がしっと肩を掴んで問いただす。
そしたら、困まりながらも「ほんとだよ」と言ってくれた。

「じゃ、そこ。そこ案内して!」
「うん、いいよ」

そう話した後、らっ君は再び歩きだした。
ふふふっ……このまま、らっ君に着いてけば今後の計画の為に行動できる。

そしたら、シルクは喜んでくれる……筈!
不確定だけどやる価値はある、だから私は頑張る!

ふんっ、ふんっ。
そんな感じに鼻息を鳴らしてらっ君の後を着いていく。

……暫くすると、路地裏を歩きだした。
人通りも少なくなってきた、私が思うに……もうこの場所がロアの知らない場所なんじゃないかな? と思うくらい人気が無い場所。

きょろきょろと辺りを見渡してみる。
……うん、見事に1つもお店がない。

と、この時だ。
私の脳内にピンっと来るものがあった。
あれ? この道……通った記憶がある。

えと……何時だったかな? 多分最近? の話だと思う。
いや最近じゃ無かったかもしれない。

えぇと、うぅんと……っ! そうだ思い出したっ!

「城下街地下一階に行く道だ!」
「うぉっ、ビックリした」

再び立ち止まり身体をびくつかせるらっ君。
驚いた顔で私を見てくる。
あ、驚かせちゃった? ごめんね。

「ね、今から行くところ……城下街地下一階だよね?」
「うっうん、そうだけど?」
「やっぱり」

ふふふ、私の記憶も捨てたもんじゃない。
賢いぞ私っ!

「えっえと、胸はってドヤ顔してる所悪いんだけど……先を急がない? 時間が無くなっちゃうよ」
「っ! それはいけない。早く行こっ」
「え、ちょっ! 先に進まないでよ。あっ! そっち道違う戻ってきて!」

後ろかららっ君が何か言ってるけど気にしない。
ふふ、そうか城下街地下一階か。

あそこは常に真っ暗な所だけど、けっして嫌な所じゃなかった。
不思議でいて、地上とは違う雰囲気が楽しめる場所。

そう言う所でデートするのも良いかもしれない。
よぉしっ、今日はらっ君に頼んでそこを詳しく教えて貰おう。

そんな事を思いながら私は掛けていく。
全てはシルクの為にっ、必ず好きになって貰う為にっ、頑張るぞっ! 私っ!

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