どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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皆がオムレツとかを食べ終わり、お皿洗いもすんだ。

「お疲れさん。後は俺がやっとくから、アヤネはもう行くと良い」
「ん、そうする」

今この場にいるのは、赤鬼君と私だけ。
他の人はそれぞれどっかに行っちゃった。
ロアとむぅちゃんの行き先は分かんない。
シルクはお店を開けに行くって言って、ラムちゃんがその手伝いをするって言ってた。

そしたらシルクが、物凄く渋い顔してた。
あれは嫌な事をされた時にする顔だ。

でもラムちゃんはそんなシルクに寄り添って強引に連れてっちゃった。
シルク「ぎゃぁぁっ」て叫んでた、大丈夫かな?

で……メェちゃんは医務室に言った。
この部屋を出ていく時に赤鬼君を見て頬を赤く染めて手を振ってた。
赤鬼君もそれを見て恥ずかしがりながら手を振ってた。

まるでカップルみたい。
もしかして、昨日何かあったのかな? またメェちゃんに聞いてみよう。

……そして、最後にらっ君。
らっ君は街を歩いて回るって言ってた。
つまりお散歩だね、今から私も行くからもしかしたら会うかもしれない。

「じゃ、行ってきます」
「おぅ、気を付けてな」

それだけを言って、私も部屋から出た。
さぁて、めい一杯休憩して頑張ろう。
そして、シルクを振り向かせるんだ!

心の中で強い決意を言った後、私は玄関へと掛けて行った。


「良い天気、葉っぱが紅葉してる。綺麗」

さて、場所はうつりかわり城下町のどこかに私はいる。
たぶんここは表通り、だって道が広いし魔物さん達も一杯歩いてるもん。

「まっすぐ走ってきて良かった。今日はこの辺を歩こ」

そう決めた私は言った通り歩く。
この街の表通りは歩いた事無い、だから良い店が見つかるかもしれない。
見付かったら、シルクとのデートの時に一緒に行こうそうしよう。

という訳で見てみよう。
すたすたすた、歩きながらお店を凝視する。
本当に色んなお店がある、お花屋さんにパン屋さん、あっ……あそこはこの前、シルクとロアが一緒に入ってた喫茶店だ。

あそこは止めよう、ロアと関わりのあるお店はダメ、他のお店を探さないと……。

「……お店探すの難しい」

とは思うものの、やはり難しい。
どんなお店が良いか分かんないもん、あっ……シルクが気に入るお店って言うのは第一の条件、第二条件はロアと関わりが無いお店、後は何でも良い。

そう言うお店を探してるんけど……中々見付からない。
ロアはここの偉い人だから、殆どのお店が第二条件に引っ掛かってそう。

だから決められない。
うぅ……ここに住んでないから分かんない。
こんな事なら誰か連れてくるんだった。

「ねぇ……道の真ん中で立ってると迷惑だよ」

なんて嘆いてると、後ろから声が聞こえた。
いけない、邪魔になってたみたい、謝らないと……そう思い後ろを振り替える。

「っ! らっ君!?」
「やぁ」

後ろにいたのはらっ君だった。
いつもの黒の服を着てる。

えっえぇ……なんでここにいるの? あ、そう言えばらっ君は街を散歩するって言ってた。

つまり私を見掛けて話し掛けたって事かな?

「いやぁ、偶然君を見掛けてさ、悩んでる様だったから声掛けて見たんだけど……迷惑だった?」

ほら、やっぱり私の予想通りだ。
ふふふっ、賢いなぁ私は。

「え、なっなんでドヤ顔するのかな?」
「何でもないよ。迷惑でも無いから気にしちゃダメ」
「そっそう。なら良かったよ」

取り合えず、自画自賛するのは後。
私は今良い事を思い付いた、だからそれをやろう。

「らっ君」
「ん、なんだい?」
「街を案内して、ロアが知らない所を希望する」

らっ君はここに住んでる人、だから住んでる人に聞けば良い。
我ながら天才的な発想だ。

「え、街の案内?」

きょとんとする、らっ君。
そんな表情も束の間、人差し指を顎に当て難しい顔をして考える仕草をとる。

え、もしかして断られるのかな? それは困る。
断られたらしつこくお願いしよう。

「別に良いよ」
「ほんと?」

良かった。
にっこりと笑って引き受けてくれた、らっ君は優しい人だなぁ。

「ただし」
「え」

らっ君は突然、悪い笑いをする。
うっ……なんか怖い。

「今朝、なんで料理をしたのか話してくれたらね」

ぽむっ、と頭に手を乗せられて言われた。

なんで料理を作ったか。
その理由は、皆には秘密にしておきたかったのに……言わなきゃ案内しないって言われた。
どうしよ、凄く困った。

内心焦った私は伏せ目になり手をぎゅっと握る。
………これは仕方ないかもしれない、だって案内して貰わないと分からないもん。

それに相手はらっ君だ。
らっ君は悪戯好きな所があるけど、なんやかんやで優しい所もある。
だから安心……とは言えないけど、言っても良いんじゃない? と私の心が言っている。

だから言おう。
そう決断した私は、らっ君に訳を話した。

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