どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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私は、むぅちゃんから話を聞き終わった。

シルクがロアが好きなのは知ってた。
何故なら、それはらっ君に聞いたから……。

でも、むぅちゃんが話した事は初耳……私は驚いて声が出なかった。

シルクとロアは昔会っていた?
2人で結婚の約束をした?
なにそれ、そんなの私は知らない。

シルクは何も言わなかった……。
私はその話を信じたくなかった。

「驚いて何も喋れませんか? 今話したのは全て事実ですよ? まぁ……少しややこしい話になっていますがね」

……確かにややこしい。
昔ロアは、ナハトと名乗っていた。
それは、まだ約束を果たしていないからだそう。

実名を使わなかったのはなんで? 私はそう思ったが、そんな疑問よりも、むぅちゃんの話した事が衝撃的過ぎて、そんな考えは吹き飛んだ。

「この事実を知ったとしても、貴女はシルク様の事が好きですか?」

むぅちゃんの言葉がエコーが掛かった様に聞こえる。
シルクの事が好き? それは勿論好き、それは揺るがない。

「大好き……」
「そうですか、ぶれませんね……」
「そこが私の良い所だと想ってる」

むぅちゃんを睨んでると、突然ため息を吐き出した。

「圧倒的に不利なのは分かった筈ですよね?」
「だからと言って、シルクを諦める理由にはならない」

その言葉はハッキリと言った。
動揺は隠せない、だけどハッキリと言った。
それだけは言わないといけないと思ったから。

「それは決意と言う物ですか? なぜそこまでシルク様を思うのです?」
「優しいから、可愛いから、ぶっきらぼうな事言ってるけど、その言葉には優しさがあるから……他に理由は沢山あるから、まとめけど……シルクの全てが好き」

初めて会った時から、今に至るまで嫌いになった事は無い位好き……その思いを伝えた。

それを聞いたむぅちゃんはソファにもたれ掛かる。

「物凄く想ってるんですね……そこだけはロア様と互角ですか」

むっ……気にくわない。
気持ちだけ互角? 他は負けてるの? 出会った時間はこっちの方が長い……だけど、シルクとはあまりドキドキした事になってないから……むぅちゃんの事が少し当たってるから腹立つ。

なので、聞いてみた。

「ロアはなんでシルクの事が好きなの?」
「……まぁ、聞かれるとは思っていましたよ。良いでしょう、お話します」

ふぅ……と、優しく息を吐いたむぅちゃん。
普段かはシルクに抱き付いてるロア、抱き付く位好きなのは分かる。
 
だけど、ロアとシルクが会った理由が分からない。 
どういう事があって2人は出会ったの?どうやって、私より濃い時間を過ごしたの? 

その全てが気になった。

「それはロア様が人間界の様子を魔法を使って見ていた時です……」

魔法……。
そう言えば、ロアやらっ君達は魔界から来た、そこから人間界の様子を見たって事だよね?

「その頃のロア様は大変幼くて人間界の色んな景色を見て、その全てに興味を示しました」
「なるほど……」

幼い頃の好奇心は凄まじいからね……そうなるのは仕方無いかも。

「珍しい物を見付けると、常時側に仕えてた私にお話してくれました」

むぅちゃんは、嬉しそうに笑ってる。
大変微笑ましい話だけど、聞きたいのは、そう言う話じゃない。

「と、その時です。ロア様が突然顔を赤く染めたのです」
「…………」

私は息をのんだ。
きっとここから、私の聞きたい話が聞ける気がしたからだ。

「気になった私は、ロア様が見ていた景色を覗いて見ました。そこには……1人の可愛らしい男の娘の人間がいました」

……シルクだ。
シルクは、ちっさい時から男の娘だったから間違いない。

「ロア様は他の人間も見ていたのに関わらず、その人間を見た時だけ、顔を赤く染めたのです……意味は分かりますよね?」
「うん、分かるよ……」

それは、ロアはシルクに一目惚れしたと言う事だ。

「そこからです。その人間に興味を示したロア様が……努力をし始めたのは」
「……努力?」

むぅちゃんが言った"努力"と言う言葉……それが私の胸に引っ掛かった。

「……その事もお話しますよ。ですから、良く聞いてくださいね?」

私は息を飲んだ。
……むぅちゃんからどんな言葉が出るのか気になるからだ、だから姿勢を正した。

それを見たむぅちゃんは、軽く深呼吸した後、話始めるのだった。

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