どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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こんなに静かなメェさんは今までに見た事がない。
いつもなら、俺と出会ったら飛び付いてくる彼女。

だが、今日はそれをしなかった。
ここに来たときから静かっだった、食べている時も静かだった。

そんなメェさんに違和感を感じたか、と言われればハッキリと感じたと言える。

内心焦った。
今日はどうした、メェさんは調子が悪いんか? ラキュにからかわれてる時もそれで頭が一杯だった。

……先程から静かだ静かだと思っとるが、もう1つ気になっとた事がある。
そうつは、メェさんの雰囲気だ。

いつもの天真爛漫、元気娘の雰囲気は何処へやら……今日は静の雰囲気を出しておる。
服装は何時もと同じなのに……全く違って見えるのは何故だ?

それは、何時もと顔つきが違うからか?
皆に料理を振る舞ってるとき……それらで頭が一杯だった、だから今日の料理は美味しかなかったかもしれんな。

そう、反省した時だ。
皆は口々に「ごちそうさま」と言って部屋から出ていった、だが……メェさんだけは残っていた。

そして、メェさんは……潤んだ目をして俺を見つめてこう言ってきた。

「……きぃ君」

熱のこもった喋り方、俺の心が大きく揺らいだ。
うっ美しい……なんて艶っぽい目をしてるんだ。
くっ……あまりの美しさに身体が震えてきおった。

とっ取り合えず返事をせんとダメだ。

「なっなな、なんですかい?」

くそっ、いつもいつも俺はメェさんと話すときには、震え声になっちまう。
だっだが……仕方無い、そうなっちまう程に、俺は……メェさんの事が好きだからな。

「ちょっと、お話しないですか?」

頬を赤く染めて、俺を見つめてくる。
お話……おっ俺と? ふっ2人きりで?

……頭の中でそんな事を考えると、俺は色々と意識してしまった。
なっ何の話をするつもりだ? わざわざ2人きりになってする話ってなんだ? あぁっ、ダメだ……緊張で何も考えられない!

「……にひひ、顔真っ赤ですね」
「え、あっ……うぅ」

俺を見て、面白そうにくすっと笑うメェさん。
すると……隣の椅子をぽんぽん叩き出す。

「こっち来て話すです……」

どきっ……。
まさか、まさか……隣に座る、おっお誘いを受けるとは思わんかった。
今だ、ぷるぷる震える身体を抑えて、俺はゆっくりとメェさんの隣に行く。

……いや、待てよ。
俺はメェさんの隣に座るんだよな?
……いっ良いのか? お誘いを受けたとは言え、座って良いのか? いや良いんだろう、だってお誘いを受けたからな。

もっ問題は座った後、どうするかだ……。
メェさんは何を話す? 俺はどんな心の持ちようで聞けば良い?

って……落ち着け、メェさんが話す内容は、何時も見たいに筋肉の話に違いない。
10年越しの付き合いだから間違いはない。

……だとしたら、変に緊張してる俺はバカみたいだ。
かっかっか、どうやらラキュの言葉の性で変に意識しちまったようだな。

いかんいかん、ここはメェさんの隣で盛大に緊張はするが、変に意識せずに話を聞こうじゃねぇか。

厨房からメェさんの隣に行くまでの間、そんな考えをまとめた俺は、メェさんの隣の席に座った。

「にひひひ、相変わらずぷるぷる震えてるですね」
「えっ! あっ……すっすみませんですます」

座った瞬間突っ込まれた。
まっ、まさか震えてる事を見抜かれるとは……流石はメェさんだ、身体の変化は小さくとも見逃さないと言う訳か。

立派な医者だな。

「……きぃ君」
「はっはい」

そんな事を思ってたら……メェさんが俺の頬を触ってきた。
……やっ柔らかい、なんて細くて柔らかい指なんだ。
そして暖かい、その暖かさから優しさを感じる事が出来る。

「メェは、メェらしい服装で、メェらしい態度で、メェらしく気持ちを伝える事にしたです」
「…………え」
「だからこそ……メェの普段着、白衣で告白するです。そっそれが……きぃ君との繋がりでもあるですから」

気持ち、繋がり……。
メェさんがそれを言った瞬間、一瞬だけ意識がとんだ。

その間にメェさんは、俺に顔を近付けてくる。
近い、顔が近い……どんどん近付いてくる。

「めっメェさん!? ちっちか……うむっ」

近い、そう言おうとしたら手で口を押さえられた。

「きぃ君、好きです。メェはきぃ君を愛してるです」

……は?
あっあい……して……る?

「次は、行動で……伝えるです」

真っ赤な顔をしたメェさんは、押さえた手を退けて……俺に一瞬だけのキスをした。

一瞬だけでも分かる。
柔らかく、熱く、甘いキス……一瞬だったとしても、それは鮮明に伝わる。
俺を一瞬で挙動不審にさせるには充分過ぎる行動だった。

ガタッ!
椅子を揺らして驚く俺を優しく見つめて、メェさんは髪の毛を手でとかした。

「つっ次は……きぃ君の答えを聞きたい……です」

次は……おっ俺が、つっ伝える……番?
突きつけられた言葉に俺は座ったまま、口を押さえて元々赤い顔を更に真っ赤にさせる。

間違いなく、人生で最大の勇気を振り絞る場が訪れてしまった。
俺は……俺は……どんな行動をとればいいんだ?

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