どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「おぉ、色んな葉っぱがある」
「あんま騒ぐんじゃねぇですよ?」

色んな薬草の香りが漂う、少し薄暗くて古い建物……薬屋に来てるです。

「ね、これ食べれる?」

古い店とか関係なしに、とたとたと店内を小走りするアヤネ。
全く、落ち着きがないですね……。
あんまり走ると床が抜けるですよ? この床、歩いただけでギシギシ言うですから。

「それ、マンドラゴラですね……根は調理すれば食べれるですけど、葉は食べちゃダメです、死ぬです。と言うか、本当に食べるんじゃねぇですよ?」

ちらっ、とアヤネの方を見て答えてあげる。
マンドラゴラって言うのは、根の所が人間の顔になってて、引っこ抜くと「ヌワァァァッ!!」て感じの悲鳴をあげる毒草です。

あ、でもメェが言ったように毒なのは根だけです。
葉は生食可能です、きぃ君曰く、漬け物って言う物にすると美味しいらしいです。

因みに根の方は、上手くやれば薬になるです。
生で食べると、口から火を吐いて死ぬです。

「ふぅん……あれは? ただの木だね」
「あれはトレントの枝です。鍋で煮込めば火傷、擦り傷、に効く樹液がでるです」

まぁその樹液……とても染みるです。
塗られた本人は堪ったもんじゃなかったです、メェは本気で怒られたです。

……と、そろそろ薬を買わないとダメです。
これを買った後もメェはする事が山程あるですよ!

「こうして見てみると、なんか面白い……全部気になってくる」
「にひひ、わくわくしてきたですか? お薬って面白いですよ?」

アヤネの奴、興味津々です。
まぁ興味を持たれるのは医者として嬉しいですね……にひひひひ。
アヤネって結構、メェと同じ趣味を持ってるかもです、色々言っちゃったですが、仲良くなれそうです!

「いや、気のせいだった……やっぱりカレーのスパイス見てる方が良い」

前言撤回、興味は食の方……期待して損した。
て言うか、カレーのスパイス見ても絶対分かんないです! 直ぐに「見るの飽きた」とか言うに違いないねぇです。

「ねぇ、メェちゃん」
「なんです? メェはスパイスの事は専門外ですよ?」

じぃっと、薬の材料が置いてある棚を見つめるアヤネ。

「違う、そじゃなくて……これ買い終わったらちょっと良い?」
「いっいや……それは難しいです、寄り道したの知ったらメェ達、ヴァームに怒られるですよ?」

一応メェ達はヴァームの許可を得て、こうして薬の材料の買い足しが出来てるです。

あの時にきっちり言われたです。
「寄り道したら……どうなるか分かってますよね?」って睨みを効かされながら言われたじゃねぇですか! それでも寄り道する気です?

そっそれならメェはで1人で帰るですよ?

「大丈夫、直ぐに済む」
「いや、直ぐに住むとかそう言う問題じゃないです……」

少しでも道草したって思われたらただじゃすまない……アヤネもヴァームの恐さは知ってる筈です。
だから分かって欲しいんですけど……無理です?

苦笑いしながらアヤネを見つめると、アヤネは、ふぅ……と息を吐いてこう言ってきたです。

「分かった。じゃぁ後で話す」

あ、分かってくれたみたいです。
はぁぁ、よかったぁぁ。

「そうですか、なら早く買うですよ」
「ん」

分かってくれたなら、さっさとやる事をやろう、そんな訳で素早く薬の材料を買っていく。
買ったものは、アヤネに持たせてるです。


……で、買い物が終わったメェとアヤネは魔王城へと帰っていく。
そこで、気になった事を聞いてみたです。

「アヤネ、さっきメェに聞こうとした事ってなんです?」

あの時は、寄り道がどうのとか言ったですが……やはり気になるです。
だからこうやって、歩きながら話してるです、これなら寄り道する事なく帰れるです。

「……」

アヤネは無言のまま、メェを見てくるです。
え、なんです? そんなに見つめんなです。

「やっぱり……告白は直ぐにすべき」

さらっ……。
アヤネの髪の毛が風で揺れる。
それと同時にメェの心も揺れた……アヤネのこの言葉、もしかしなくても、さっきの事を聞いてるのは分かってるですが……メェは遇えて聞いた。

「……えっえと、いきなり何の事です?」
「赤鬼君に告白しなくて良いの? 先延ばしにすると誰かに取られるかもしれない」

どくんっ……。
メェの心が大きく揺れた。
まただ、またアヤネが唐突に変な事言って来たです。

まっ全く、場の空気や話の流れを読まない奴です。
そんな事いきなり言われたら……滅茶苦茶困るですよ!

そう思いながら、メェは知らない内に早足になってたです。

「私、好きな人いるから分かる。取られるときっと悲しい……だから、もっと好きってアピールした方が良い」

……メェの気持ちを知らないで、簡単にそんな事言うなです。
こっ告白て言うのは、その……こっ心の準備とか必要なんです!

めっメェはまだ……その、そう言うのは、まだ出来てないです。
だっだから……まだ日が経ってからでも大丈夫です。

ぎゅっ……。
自分の着てる白衣の裾を握って下を向く。
ふぅ……ふぅ……、全く、アヤネの性で変な汗かいて来たですよ。

こんな事なら、一緒に買い物に行くの頼まなきゃ良かったです。
そんな事を思った時だ。

アヤネは少し大きな声でメェに言って来たです。

「私はシルクと結婚したい。メェちゃんはどうなの? 好きな人と結婚したくないの?」

っ!! 
けっ、結婚!? まだ付き合ってもないのに、そんな事考えてるですか?

いっいや、それを言うなら魔王様もですけど……きっ気が早いんじゃなですか?

「あ、今……どきってした。図星だね」
「めぎゃ!? ちっ違うです! こっこれは……そのっ、おっ驚いただけです!」

真っ赤になりながらそう叫んだ後、メェは走り出したです。

「あっアヤネ! 無駄話してないで付いてくるですよ!」
「あ、待って……」

走ったメェを追い掛ける為にアヤネも走る。

うぅ、普段何にも考えて無い様に見えて、アヤネは色々ときづいちゃってるですね。

メェがきぃ君の事好きだとか、告白出来てない事とか……。
それってつまり、メェの事を心配してるですか? なっなら余計なお世話です!
まず自分の心配をするですよ!

メェは……自分のペースできぃ君に告白してやるです! それは絶対に心に誓ってる。
つまりこれは、揺るがない決意って奴ですっ。
だっだから……その時は精一杯頑張るですよ!

メェは自分を鼓舞した……でも、毎回こうやって自分で自分を応援するだけで行動には写せてない……こんな調子でメェは、本当に告白出来るですよね?

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