どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

23

仄かに暗くい洞窟の天井から水が、ぴちょんーーと滴る、その光景だけでどこか不気味な雰囲気を感じてしまう。
先程のべちゃべちゃした地面と違ってこっちは石の地面だから歩き易くなったが少し肌寒い、そこに俺とラムはいた。

「よしっ、やっと点いた……」
「これでお湯が沸かせますわね」

で今は料理をしている、何時もより遅い夕食……今日は湿地にある洞窟で野菜のスープと干し肉だ、因みに調理は俺がやっている、一人暮らしをしていて料理をしていたから多少だが腕に自信はある、だが鬼騎には負けるけどな……。
若干落ち込みつつ俺は火が付いた薪に鍋を乗せる、そこには既に水が入っている、どれもラムのリュックの中に入っていた物だ、因みに食材もきちんと入っていた、計画していた事にせよ用意が良すぎるだ。

「さてと、後は……」

手元にあった調味料を鍋に入れる、入れるのはコンソメの素、これ1つでどんな料理も旨くなる……と俺は思っている。

「しまった……野菜を先に入れた方が良かったか?」
「ふんふんふーんっ」

先に野菜を入れて置いた方が味がついたか? 今度鬼騎に聞いてみよう。
俺が試行錯誤している近くで準備をするラム、床にシートを引きその上に丸いクッションを置く、次に小さなテーブルだ、テーブルの上に食器を置く、ツイン縦ロールの髪を揺らしながら鼻唄混じりに手早く作業を進める、何だか楽しそうだな、俺は色々と悩んでいると言うのに……そう思いつつも調理を進める。

「やはり鬼騎程旨くは無いな……だがこれで十分か」

スープの味見をする、水が多すぎたのか薄味のスープになってしまった、だが俺が出来る料理の限界はここまでだ、スープは沢山作ったし干し肉があるから充分だろう。

「ラム、器を用意してくれ」
「はいですの!」

と言うか外で飯を食べるのは初めてかもな、出来れば洞窟とかじゃなくてもっと景色の良い所で食べたかったな。
そう思いつつラムから器を受けとりよそっていく、野菜とコンソメの良い匂いがする、食欲を引き立てる味じゃないか。

 「それでは頂きますの」
「あぁ、召し上がれ」

クッションに座り早速スープを飲むラム……うおっ! 凄いな……飲んだ瞬間喉からスープが透けて見える。

「そんなに見ないでくださいまし……恥ずかしいですわ」
「すっすまん……」

と言われても見てしまうな……スープはラムの腹部に行くとゆっくりと溶け込んでいく、スライムの体内ってどうなっているんだ? そんな疑問を抱きながら、俺もスープを飲む。

「……やっぱり薄いな」

これは失敗したな……次料理する時は気を付けよう、そう言えばこの水を用意したのはラムだ、城から持ってきたにしては冷蔵庫から出したての様に冷たかったが……どこから持ってきたんだ? 少し気になるから聞いてみるか。

「なぁ水って城から持ってきたのか?」
「え? 違いますわよ」

こくんっとスープを飲み干しラムが答える、ふりふりと髪の毛を揺らしパチンッーーと可愛らしくウインクしてくる、なるほど城から持ってきてないのか……だったらどこから持ってきたんだ?
……! 今俺の頭に「まさかな……」と思うような考えが過った、あいつはスライム……身体は液体だからそれを使って……いっいや、考えすぎか、だからラムよ……頼むから普通の答えを言ってくれ、水はその辺で汲んだんだよな?

「あたしに掛かった雨を体内でろして清水にしましたの、因みにキチンと上の口から出しましたわ!」
「俺……干し肉だけにしとくから後のスープは全部食べてくれ」
「えぇ! 勿体無いですのっ! 鬼騎さんに怒られますわよ?」

ぷくぅと膨れるラムに言ってやりたい、「阿呆かっ! 衛生的な事考えろ! 人間的な問題に引っ掛かりまくりだ!」と……。
だが言ったら絶対に「いやんっ!もっと罵ってくださいましっ」て言った後はぁはぁーーした息使いして興奮するから言わない、無駄に喜ばすだけだからな! 干し肉をかじりながら俺はラムを見つめ思う。

「あっ……旨いなこれ」

これは俺が作った物ではなく鬼騎が作った物だ、やはり料理の腕は確かだ…料理であいつの右に出る者はいないだろうな……その時だ、俺の身体に異変が起きた。

「……っ! 頭が痛い……」


突如感じた頭痛…雨が降ってるから気圧の性か? そう感じつつも俺とラムは食事を進める、因みにスープは全部ラムが飲み干した。

「ごちそうさまですの」
「あぁお粗末様……」

スライムから出た水で作ったスープ少し飲んでしまったが大丈夫だよな? 俺は食器の後片付けをしながら考える。
きっと大丈夫だ……そう信じよう、そう思って作業を進めるのであった。


「実は、夜に此処に来たのには理由がありましたの」
「その理由はなんだ? つまらない理由だったら流石にキレるからな?」

片付けが終り洞窟の奥へと進む俺とラム……横に並びながらそんな話をする、別に朝に来ても問題は無かったのではないか? そんな考えで一杯の俺に向かってラムは真剣な表情で語り始めた。

「今から探す物ですが、それは夜にならないと見分けがつかない代物ですの」
「ほぉ……だからあんな時間に出た訳か」

夕方に出て夜に着く……つまり丁度良かったと言う訳か、だったら最初から言ってくれれば良いのに…何で隠してたんだよ。

「そんな訳で早速探しますの!」
「いや……探す物は聞いてないから探し様が無いんだが?」

そんな俺の言葉を聞くと、「あらっ」と小声で呟き手を口に当てる、そして髪の毛を靡かせ語る……その仕草は必要か?

「あたし達が探すのはずばりっ」

さて、一体どんな物を探すんだ?

「夜になると琥珀色に輝く鉱石っその名も……ベッコベコーですの!」
「…」

……聞いた事の無い鉱石だな、て言うか誰だよその名前着けた奴! 喧嘩売ってんのか? って思うくらい、ふざけた名前だ。

そんな事をラムに言っても仕方ないので黙っておこう、じゃぁ今する事を軽くまとめるか、俺とラムはその謎の鉱石『ベッコベコー』を探す、特徴は夜になると琥珀色に光る石、割りと直ぐに見つかりそうだ、これなら直ぐに帰れそうだ。
……と言うかさっきから妙に汗が出てくる、頭痛もさっきより痛くなってるし少し寒くやって来た、まぁそれは雨に濡れたからだと思うが……少し心配になってきた。
さっさと見つけて城に帰ろう、もしかして風邪を引いたかもしれないからな。

「では張り切ってまいりましょう! あたしに着いて来て下さいましっ」

俺はラムの指示の元、後ろを着いて行く、さて……体調も可笑しい様だしさっさと見つけるか、しかしこの時……俺はあんな事になるなんて思いもしなかったのであった。

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