どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

202

突然こんな事聞いたら、え? ってなるかもだけど、聞いて。
今物凄く背中にやらかい感触が当たってる、それとおでこが冷たい。
あっ……私の頬っぺた、誰か触ってる、確実に誰かに何かをされてるっぽい。

超むにむにしてくる、すっ少しくすぐったいかも。

「……ネちゃん」

ん? 声が聞こえる。
なんか聞き覚えがあるそんな声……あっ、なんか、かっ身体が、ゆっ揺れる。
誰か揺らしてる? 

「アヤ……ちゃ」

あっ、また声が聞こえた。
今度は私の名前を言ってる事が分かる。
と言う事は起きた方が良いって事だよね……でも、なんか今はこうやって柔らかい感触に触れられたまま眠っていたい、そんな気分。

だから、この声は無視して寝よう、おやすみぃ。

「こらっ、起き掛けたのに、寝るんじゃねぇですよ!」

ベチッ!
「いっ……」

うっ、平手打ちで頭を叩かれた。
それに驚いて目を開けてしまう。
するとそこには、私を見下ろすメェちゃんがいた。

「痛い、頭打たなくて良いのに」

取り合えず、叩かれたので文句を言っておく。
そしたら、ビシッと指をさされた、人に指を指すのはダメなのに。

「うっせぇです、アヤネちゃんはそれ位の事をしやがったんです! 激しく反省するです!」

ん? 私……何かしたっけ? メェちゃん、怒ってるみたいだから、しっかりと思い出そう。

……あっ、そう言えば私、メェちゃんの、胸もんで叩かれたんだった。
これ、悪いのは私だ、つまり謝らないとダメ、だから私は上半身だけを起こして謝る。

「ごっごめんね……気持ちが抑えられなかった」
「全く、そんなんじゃ皆に嫌われるですよ? ちゃんと自制心を持って、接しないと後悔する事になるですよ?」

激しく睨まれてる。
その視線が痛い、そっそれと……メェちゃんの声が私の心に強く響いた。

「アヤネちゃんは、もっと我慢を知るべきですっ、メェなんて、新しい薬が出来た時、人体実験したいけど、多少は我慢してるですよ!」

むんっ、と胸を張るメェちゃん。
凄く誇らしげな顔……凄い自信たっぷり。
きっと、メェちゃんは、きちんと我慢してるだろうなぁ。

「で、どうです? 痛みは去ったですか?」
「え? あっ、うん……大丈夫」
「そぅ、それは良かったです」

……。
さっきまで睨んでたのに、笑顔になったメェちゃん。
もっもしかして、さっきの事はもう許してくれたの? だとしたら、メェちゃん凄く心が広いね。

「だったら、更にお説教できそうですねぇ」
「…………」

うっ……。
まだ許してなかった、また睨まれちゃった。
グリグリっと頭を押さえ付けられる。
私は涙ぐんでメェちゃんを見上げる、正直言うと……そろそろ許して欲しいなって思ってる。

「さぁ、アヤネちゃん? 覚悟は良いです?」

あぁ、普段は可愛いメェちゃんが、ちょっぴり怖く見える。
私は、これからお説教されてしまう……でっでも、これ以上お説教されたら、身体に良くない。
そう私の心が言っている。
ここは、なんとしても回避しよう。

さっきの肉体的な事じゃなくて何か別の方法をして……ね。

という事で、私は必死に考える。
メェちゃんの説教が始まる前に、色々と考える。
……! これ、使えるかもしれない。

「あの、メェちゃん!」
「わわっ、なっなんです? 急に大声だしてっ、これから説教始めるから、静かにするですよ!」

そうはさせない。
私が考え付いた作戦で、説教を回避する! 反省はしてるから、許してね、メェちゃん。

「今から外に行こっ、私はそんな気分」

すくっ、とベットから立ち上がり、きょとんっとしてるメェちゃんをお姫様抱っこする。

「…………めきゃっ! なっななっななななっ!」

あっ、メェちゃん、顔が紅くなった。
今なら、私の考えた作戦でどうにかなりそうだ。

じゃ、早速……実行開始!

「だから、私と一緒に外に行こ」

そんな私の言葉に対して、何か言いたげなメェちゃんを無視して、その部屋から走って出て行く。
扉は申し訳ないけど、ドンッ! と蹴破った。

そしたら「あぁっ、メェの部屋の扉がぁぁっ」って叫んだけど……今はスルーしておいた、重ねてごめんね。

「ちょっ、あっアヤネちゃん! いっ今すぐ降ろすですよ! 降ろさないと酷いですよっ!」

ごめんね、それは出来ない。
そう、心の中で返事しながら廊下を走る。
そして、窓の前で立ち止まる。

……下は屋根、この高さなら屋根を伝ってまた下に降りれば外に行ける。
私の作戦を完璧に遂行するなら、ここから出るのが一番っ。

あっ、そろそろ、私の作戦を伝えておくね。
その作戦は……なんか外に出れば怒りなんか、吹っ飛ぶんじゃない? 大作戦……。

ふふふ、外は色んな物がある。
それを見ればメェちゃんは目を輝かせて、怒りなんて忘れる筈です。

「ちょっ、何ニヤニヤしてるです? あっあと、なんで仕切りに窓の外を見てるです? おっ恐ろしい事考えてないです?」

メェちゃんが何か言ってるけど、これもスルー。
……よし、確認は済んだ、窓の鍵は開いてる。

「え? なっなんで窓あけるですか? なっ何してるですか?」

この窓は左右に開くタイプ、これなら全身、身を乗り出せる。
即ち、跳び込みが出来やすい窓って事、この窓を作った人は天才だと思う。

「あっ、あの……窓の冊子に乗るのはいけないと思うですよ? メェ、怖いです……って、ちょっ、何前のめりになってるですか! そっそもそも、なんでさっきから黙ってるですか! 何か喋るですよ!」

さっきから、メェちゃんが騒いでる。
いや、慌ててるのかな? ふふふ、そんな想いも外に出れば吹き飛ぶ、だから……もう少し我慢してね、メェちゃん。

「よしっ、安全確認はもういいか、じゃ、行こ」
「いっ行こ? どっ何処にです? まっまさか、そこから外に出るつもりじゃないですよね? 外に出るなら、きちんと玄関から出るですぎゃめぇぇぇぇっ」

私は、窓から軽く跳ぶ。
そしたら、自然と身体は下に落ちていく。
風が全身を駆け巡った、同時にメェちゃんの目から涙が溢れて、それは上へと上がって行く様に見える。

そう、泣く程外に行くのが嬉しいんだ。
これは作戦成功と言っても良いかも知れない。

ふふふ、良い作戦を立てた私を褒めてあげたい。

顔を弛ませる私はメェちゃんを見てみる。
そしたら白目を向いていた、どうやらはしゃぎ過ぎて、意識を失ったみたい。

ダメだよ? 意識は常に保ってなきゃ、もしかしたら、危険が迫ってるかもしれないんだから。
その時、意識を失っちゃ対処は出来ない。
後でメェちゃんには強く注意しておこ。

……さて、そろそろ着地の事を考えよう。


作戦で外に出ちゃった私、折角だからこのままメェちゃんと、外を満喫しよう。
そしたら、よりメェちゃんの怒りが何処かに飛んでっちゃう筈、と言う訳で……今日はメェちゃんと、お散歩だっ。

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