どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

168

「という訳でここに来たんだ」

クータンことクーの家に着いた、部屋は変わらず薄暗くてアンティークに溢れた空間だ。

で、僕とアヤネはソファーに座っている、クーも同じくソファーに座っている。
テーブルには美味しそうなクッキーがある。

それを摘まみながら僕はここに来た経緯を軽く話す、そしたらわたわた慌ただしく両手を動かしながら言ってくる。

「そっそんな……あたいの方も……その、悪かったですよ? これ……投げちゃいましたし……」

こんこんっーー
カボチャの被り物を叩くクー、彼女はいつもこれを被っている。
その理由は恥ずかしいしからだそうだよ?

「違うよくーちゃん! 悪いのは私!」
「ふぇ!? あっ……そっその……あの……うぅ」

素早くソファーから立ち上がってテーブルを回り込んで勢い良くクーの側へ座るアヤネ。

……思い立ったら直ぐ行動する人だね、そう思いつつ僕はアヤネに近付いて……。

ぺしんっーー
軽くチョップした、あのままいったら確実に終止がつかなくなる……早い内に止めないとね。

「アヤネ、ちょっと落ち着こうか」
「……ぶたなくてもいいのに」

僕を睨みながらも少しクーから距離を取った。
やれやれ……そう思いながら僕は元に位置に戻る。

「……くーちゃん」
「あっ、はい……えと……」
「私はアヤネ、よろしくね」
「そっそう……ですか、よろっ……よろしく……お願いします」

……なんだろう、このやり取りちょっと面白い。

「追い掛けてごめんなさい」

ペコリっーー
立ち上がって深く頭を下げるアヤネ、それを見たクーは同じ様に立ち上がり勢い良く頭を下げる。

「こっ此方こそごめんなさい! カボチャぶつけちゃいました……ほっ本当に……ごめんなさい!」

つまりお互いが頭を下げてる状態になってる、あぁ……これって謝罪合戦になる流れだ。
また僕が止めないと……そう思って立ち上がる……そしたらクーの被り物が少しずれたのが見えた。
あっ……これ、不味いかもしれない。

「そうさせたのは私、だから私が悪い」
「ちっ違います! あたいが悪いんです!」

2人は更に頭を下げる、そしたらまたクーの被り物がずれていく。

「ちょっと2人共、その辺にしといた方が……」
「らっ君は黙ってて!」
「ラキュ君は静かにしてて下さい!」

いや、静かにしてたらダメなんだよ。
よし、無理矢理にでも2人を引き剥がそう……じゃないと、新たな被害が生まれる。

「私が悪いっ」
「いいえ……あたいが悪いんです!」

取り合えず頭を上げて話しなよ……。
そう心で突っ込みながら2人の側へ近寄る、このまま頭を上げるようにして被害を防ごう、そう思ってクーの頭をポンッと叩いた。

「取り合えずさ、頭あげたら? このままだと……あっ!」

話がすすまないよ? そう言おうとした……そしたら、ポロンとクーの頭が……じゃなくてカボチャの被り物が落ちた……。
側にはアヤネ、この後どうなるかは……分かりきっている。

ゴンッ!!!
「ごめんなざっ!」
ドサッ……。

鈍い音を立ててアヤネはその場に崩れ落ちた、後頭部にカボチャが落ちたからだ。
僕は右手で顔を覆う、あぁ……止められなかった、と言うかこれ、引き金引いたの100%僕だよね?

「あっアヤネちゃん? 今変な声を……あっあれ? 頭が軽くな………ひゃっひゃぁぁぁ!?」

クーの顔は小顔、ジト目でソバカスがある。
そんなクーは違和感を感じる、そりゃそうだよ……被り物が脱げたんだから気付いてしまう。

自分の顔をペタペタと触り、オレンジ色のふわふわした短い髪を揺らしながら叫ぶ、そしてダッシュで部屋の隅に行く。

「あっあわわわ……あわわ……やっやっちゃいました、あたい……殺っちゃいましたぁぁぁ!!」
「いや、殺ってないよ?」

思わず突っ込む僕、アヤネの方を見ると……。
うつ伏せのまま身体をビクンビクン震わせている、その側にはカボチャがアヤネに寄り添う様に落ちていた。

「ぜっ前科持ちに……なってしまい……ました、あっ……あはは、洒落になりませんよ……ふふっははっ……あっあたいなんて腐ってしまえばいいんです……そして肥料になって罪を償うんです……あはは……あはは……あはははははっはは……あはははははははっ!」

まずい……クーが完全ネガティブ思考になって狂った様に笑っちゃった。
アヤネはアヤネで動きが止まっちゃった、大丈夫? 大丈夫だよね? これ……気絶してるだけだよね?

「………」
「あはっあははははっ! あはっ! あははははっ!」

もう困惑を通り越して恐怖だよ、くっ……あの時僕がしっかりしていればこうはならなかった!

「……って、今は悔いてる場合じゃないよね」

今は現実を見ないとダメだ、で……この現状を解決しないといけない。
頑張れ僕、いつもクーがこうなった時になんとかするのは僕じゃないか!

やってやる、やってやるさ……。
と、自信をつけながらクーを励ましにいった、僕の戦いが今始まった……。

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