どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「弾けなさいデカ乳ぃぃ!」

狂気に満ちた表情で飛び上がりボールを激しく叩くヴァーム、凄まじい回転が掛かったボールはメェに向けて放たれる。

「ひっ! きぃ君ガード!」
「ばべっ!」

だが鬼騎を盾にして事なきを得る……しかし、鬼騎はたまったもんじゃない。
怒ろうとヴァームを鋭い目付きで睨むが、それを越える鋭い目付きをされ直ぐに目線を反らす。
鬼の睨みも黙らせるヴァーム……さっきから冷や汗が止まらない。

「潰す……あの不愉快な胸を! 私は! 潰したいっ!」

荒れ狂うメイドが超危険過ぎて観客達は声が出なかった。
なのでこの砂浜に聞こえる音は……ボールを強く叩く音と、そのボールが身体にバチィィンッ! と激しい音を立てて当たる音しか聞こえない。
まさに一方的、現在の得点は8対1……勿論8点入れたのは全部ヴァームだ。

「ふぅぅ……ふぅぅ……」

獣の様に肩を上下に動かしながらの息づかい、嫉妬と憎しみの目線をメェに向け「ふしゅぅぅ……」と小声で言っている、暴走モードに入ったヴァーム、ここに現れた。

「これ、ある意味目が離せない戦いだな」
「上手い事言ってる場合じゃないよ……僕とシルク君、次にあれと戦うんだよ?」

たっ……確かにそうだ、今度ヴァームとリヴァイと戦うんだよな? いっ嫌すぎる。

「次のサーブはわし、ここで何とかすれば……」

そんな恐ろしい事が起きているのに冷静にサーブする位置に向かう鬼騎、怯えるメェを見つつネット向こうに見えるヴァームを見る。

「……」

何かぶつぶつと言った後、ボールを空高く投げる。

「……っらぁ!」

バチィィンッーー
と強烈な一撃が放たれる!
放たれた場所はヴァームの真後ろ、あっあの状況で良くヴァームの方へサーブを放ったな……。

「ふふふふ……」

不気味に笑いながらヴァームはボールを追いレシーブ、そのボール追い掛けてリヴァイがレシーブ、そしたら鬼騎が前に出て来た! 同時にヴァームも前に出てくる。

「貴方には用がありません……デカ乳を出しなさい」
「かっかっ……そいつは出来ん!」

バチィィンッーー
バチィィンッーー

ヴァームがアタックした、そのアタックを見事にブロックする鬼騎、痛かったのか表情が少し歪む。
落ちたボールはリヴァイがフォローし、ふわっーーとボールが上がる。
そのボールをヴァームがトス、次に打つのはリヴァイだ。

「わりぃな、俺の嫁が迷惑掛けちまって」

そう呟きながら腕を振るう、当然鬼騎はブロックに入る、その後ろでメェはフォローの体制。

「……しっ!」

それに構わずリヴァイは手を振るった! またバチィィンッーーと音が鳴る。

「しまっ……めっメェさん!」

ボールはブロック仕切れなかった……まだ勢いが残ったままボールはメェの直ぐ横に強く叩き付けられた。

「すっすみません、メェさん……」
「気にしなくて良いですよ」

申し訳なさそうな鬼騎に対してメェは気にしていない様子。
「にひひぃ」と笑ってぽんっと鬼騎の肩に触れる、ほしたらビクンッーーと身体が大きく跳ねる鬼騎……物凄く顔が紅くなった。

「あっ……えっ! あっ……じゃ、気にしませんですます!」
「にひひ、是非そうしてくださいです」

怒りに狂うヴァームがいるのに微笑ましい光景が広がっている……少し心が和んだ、そんなこんなで試合は進む。


「ふふっふふふふっ……散れ巨乳!」
「行くです、きぃ君!」
「りょっりょうかい!」

相変わらずのヴァーム……さっきからヴァームのアタックを受ける鬼騎、もう手がパンパンだ。
なので、きちんとブロック出来ずにボールが反れて砂浜に落ちる……これでリヴァイとヴァームのチームが10点になった、つまり……メェと鬼騎は負けた。

「あぅぅ……負けたですぅ、水着パーティやですぅ」
「いっいや……まだそれは分かりませんぜ?」

負けた事に泣くメェ、それをなだめる鬼騎、そうだ……鬼騎の言うようにまだ分からない、水着パーティへの参加は最下位2組……この後最下位2組決定戦が開催されるだろう、そこで初めて開催する組が明らかになる、と言う風な事を考えた後……俺は一息つく。

「……やっと終わった、見てただけなのに疲れた」
「僕もだよ……姉上もアヤネも疲れてるみたい」

はぁ……と、ため息をつくとラキュがそんな事を言った。
本当だ……ロアもアヤネも疲れたのか「ふぅ……」と一息ついてる、それはギャラリーも同じだった。
やっと修羅場に満ちた一時が終わった……これで安心して試合が見れる、そう思った時だ、リヴァイがヴァームの方へ近付く。

「ヴァーム……俺等の勝ちだ、いい加減落ち着きやがれ」

そう言って肩をゆさゆさと揺らす。

「ふふっふふふふ……デカ乳、しょせん男は……デカ乳の方が……」

まるで呪いの様に呟くヴァーム、それを見たリヴァイは頭をかき、また口を開いた。

「俺は少なくとも……ぺったんこのお前が好きだぜ?」

そう言ってリヴァイはヴァームの横を通り過ぎた……その時、変化が起きた。

「…………え? リヴァイ今なんて…………っ!!」

ヴァームは自分の姿に驚いた、自分の胸を押さえて目を見開く。

「わっ私の胸が……むぐっ!」

そう、ヴァームの胸が無くなって、ぺたんっと平らになったのだ……それに驚いているとリヴァイは更に俺達を驚かせに来た。
ヴァームが胸を押さえた瞬間リヴァイは……ヴァームの唇にキスをしたのだ、それを見た俺達は口をぽかーんと開いてしまう。

「……っ、デカ乳デカ乳うるせぇな」

唇を離してヴァームのあごを少し上に上げる、ヴァームは若干頬を紅くさせている。

「ヴァーム、俺はな? お前の身体と……性格に惚れたんだ……だから自分を嘆くんじゃねぇよ」

その言葉を聞いて何かを言おうとしたヴァームにリヴァイはまたキスをした……優しくチュッとだ。
それを見たロアは「公衆の面前で破廉恥じゃ!」と言う、お前が言うな! 心の中で突っ込んだ。

「……たくっ、ヴァームはそのままが良いんだ、いい加減そのメイド服脱げよ」
「えっ! ぬっ脱げ……あっ……うっ……あぁっ!」

この後ヴァームは珍しく一頻り狼狽える様子を見せた後、声にならない歓喜の声を上げ海の家に走っていった……ちょっと可愛いと思ってしまった。

「……おい、みてんじゃねぇよ」

ぎろっ! と俺達を睨むリヴァイ、いや……これ見るなと言う方が難しいからな? とっとは言え、さっきのに比べれば可愛らしい出来事か……だが言える事は、試合が終わってもハチャメチャな展開が始まった……で、この後俺とラキュが試合をする訳だ、相手はリヴァイとヴァーム……さて、腹をくくるか。

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