どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

129

「……と言う訳でわらわとシルクは暫く海に行く事にした、夏と言えば海じゃろう?」

あれから数分後、身体中ボロボロにされたロアはヴァームを呼んで奴等を自分の部屋に呼びさっきの話を皆にした……。

「まぁ……僕は別に良いと思うよ?」

ロアを睨み付けるラキュ、さっきあんな事されたもんな……根に持って良いと思う。

「私は反対」

俺の隣に座るアヤネ、腕に抱き付いてロアを睨む……痛いから離して欲しい。

「まぁ……話しは良くわかったが城はどうするんだ?」
「きー君と同じく気になったです」

鬼騎とメェが当然の疑問を放った……そう思うのは当たり前だな。

「はっはっはっ、2人きりで海なんて……実にクールじゃないか」

あっ、いたんだなヘッグ……いつもの事ながら無駄に格好をつける奴だな、今だって変なポーズを取ってる。

「様々な意見が出ましたが如何致しますの?」
「どうなさりますかロア様」

そして最後にラムとヴァーム……皆が皆ロアを見る、彼女は静かに目を瞑り静かに呼吸して再び目を開けた。

「わらわの答えはただ1つ、何がなんでもシルクと海に行く! これは誰にも譲れんっ、城等他の奴に任せておけばいいのじゃ」
「駄目な魔王だな……」

魔王の公務を他人に任すとはな……前代未聞だろう、呆れた目をしてたらロアがもう片方の腕に絡んでくる。

「その様な顔をするな、わらわと共に過ごしいくところまでいくのじゃ、あっこの場合のいくはぜっちょ……」
「少し黙れ」

すかさずロアの口を手で塞ぐ、ヴァームが「シルクさん、塞ぐなら手ではなく唇でですよ」とか言ってるが無視する。

「……相変わらずうぶじゃのぅ、可愛い奴め!」
「可愛い言うな!」

皆の前で恥ずかしいんだ、顔が紅くなるだろうが、うっ…皆の視線が集まった、こっち見るなよ。

「ですがロア様? 本当にどうするんですか? ロア様がいないとなると色々と駄目なのでは?」

ここでヴァームの正論、だがロアは動じる事なく静かに答える。

「別に問題は無かろう? わらわは仮がつく魔王じゃし」

そう言えばそうだった……だけどなロアよ、俺は行くなんて一言も言ってないからな?

「そう言う訳でよろしくなのじゃ!」
「よろしく出来ない、勝手に話を進めるな!」

もういく前提で話してるじゃないか! ふざけるなよ? たださえ城の生活で色々あるのに2人になったら確実にストレスで倒れるぞ。

「むぅ……文句ばっかりじゃな」
「文句を言われないとでも思ったか?」

本当に気楽な奴だ……と言うかそろそろ腕を離して欲しいんだが?

「おい魔王、勝手に話を進めるな」

お? アヤネが声をあげた、良いぞもっと言ってやれ。

「行くなら私の筈、何言ってんの?」
「いや、お前が何言ってるんだよ」

だめだ、この話し合いに終わりが見えなくなってきた、誰か何とかしてくれよ。

「あの……ロア様?」
「ん、どうしたヴァーム」

ヴァームが頬に手を当て困った表情で話す……これ以上変な事を言うなよ? 

「身の回りの世話は出来るのですか?」
「……はえ?」

あっロアが俺の腕を離してくれた、なんか呆けた顔になったが……あぁもしかしてこれはあれか? ヴァームが助けてくれる流れか?

「朝はちゃんと起きれますか?」
「……」

ロアはかたかた震え始める。

「きちんと3食料理を作れますか?」
「……ぐ」

ロアの顔から汗が吹き出て来る、動揺が見え始めた。

「お部屋のお掃除は毎日出来ますか?」
「……ぐぬっ」

ヴァームに一言言われる度に表情が苦しい物になってくる。

「それとロア様? 適度な……」
「あぁぁぁぁっ! 煩い煩いうるさぁぁい! でっ出来るっわらわは出来るのじゃ! この前料理も作ったし掃除もした! 寝起きは……ひっ昼まで寝るから問題は無い!」

 遂にはキレた、立ち上がって地団駄を踏んだ。

「ロア様……」
「なっなんじゃ?」

ぽんっーー
肩に手を乗せヴァームが優しく微笑んだ、怖がりながらもロアが聞き返す。

「私も一緒に行かせて頂きます」
「なっ!」
「……おい、本格的に行く流れになってるぞ? 俺の話し聞いてるか?」

助けてくれると思ったら余計に事態が悪化したな、どうしよう……。

「ふふふ……勘違いしないで下さいね? ロア様の事は信頼してるんですよ?」

にこにこ顔のヴァーム、おい……これあれか? 俗に言うと詰んでる状態じゃないか?

「でっでは何故そんな事を言うのじゃ! わらわのスイートな作戦を邪魔する気か!」
「いえいえ違いますよ?」

俺の心境など何処吹く風か? ヴァームはにこにこ顔をキープしたままこう言ったのだ。

「正直言えば海には行きたいのです、楽しみは皆で分かち合うべきです! という訳で皆で行きましょう!」

その言葉を聞いた瞬間、皆は当然……。

「「っ!!」」

驚きの声を上げた……一斉にこれ以上ない位のシンクロだ。

「個人的にも久し振りに会いたい方もいるのでロア様のお話を聞いた時には失礼ながら丁度良いと思ったのです」
「えっ……ちょっ……ヴァーム?」

もう完全に固まってしまった……フリーズと言う奴だ。

「場所等の手配は私に任せて下さい、なので皆様は海に行く準備をしてください、はい解散!」

うん解散じゃない、俺は行くと一言も言ってないぞ? 皆も同じ事思ってるんじゃないか?

「わっわらわの、計画が……くっくふふふ……完全に失敗してしまったのじゃ」

でも……ロアと2人きりで行く事にならなかった事でよしとしよう、逃げないと決意したが、いきなりこれはキツいからな……ヴァームには少しだけ感謝しておこう。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品