どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「……迷った」

初めて来た街だからはしゃぎすぎて走ってたら路地裏っぽい所に着いて帰れなくなり迷った、シルクのお店を出て5分も経ってないのに迷った、迷ったのは私の性じゃなく、私を迷わしたこのいりくんだ街並みの性に違いない! ぐぬぬっ、許すまじぃ……って怒ってる場合じゃない、私は迷ってるんだった。
どうしよう、と途方にくれるアヤネです、ふむ……腕を組んで考える私、こういう時は周りの人に聞くのが一番……なんだけど、歩いている人が見当たらない、ここは路地裏だから人通りが少ないから? それとも雨降ってるからかな? もう梅雨だもんね、仕方無い……誰だって濡れたく無いもん。

「ほんと、どうしよ」

どうしようも無くて上を見上げる、あぁ……このピンクの傘可愛いなと言う風な余計な事を考える、こんな事考えてる場合じゃないよね?

「……よしっ、ここは勘で何とかしよう」

困った時の勘頼み、やっぱり迷った時はこれが一番だよね?

「んー……こっち」

なので早速試して見る、初めは真っ直ぐ……三股に別れた道を真っ直ぐ……これで表通りに……戻れなかった、なんか行き止まりだった。

「鬼ごっこの途中だったら捕まってた……」

若干の恐怖を感じつつ戻る、次は左に行こうかな? 何か迷ったら左の法則って聞いた事がある、そうと決まればダッシュで元の場所に戻って左に行こうすぐ行こう!

「と言う事で……だぁしゅっ」

タタタァーー
軽快に走る私、曲門に差し掛かったら身体を傾けて曲がる! これが早くコーナーを走るコツと誰かが言ってた。
そう言う感じで曲がる私、傘持って走ってるから走り辛かったけど何とか曲がれた……ってあぁぁっ!

「……ほえ!?」

咄嗟に足を前に踏み込んでストップ!だって前に可愛い悲鳴を上げる小さな娘がいたから。
だから止まる、何としても止まる! だけど……ドンッーーとぶつかってしまった、痛い。
いつつ、盛大に後ろに向かって転けてしまった私……直ぐに起き上がってお尻を擦る……あっ、あの娘は大丈夫かな? 小さな娘だし心配……そういえばあの娘ハロインの時に良く見るカボチャの被り物被ってた気がする。
気になったのでその娘がいた方を向いてみる、すると空を見上げ倒れていた……頭にはやっぱりカボチャの被り物をしている、可愛い。
取り敢えず近寄ろう、そして軽く揺すってみよう。

「おーい、大丈夫?」
「んっ……だっ大丈夫……です」

あっ、声も可愛い……でも着てる服が黒のローブでなんか暗いなぁ……って思うのは失礼? そんな風な事を思ってたらゆっくりと動いたカボチャ娘さん、ぱんぱんっとお尻を叩いて私をじぃ……と見てくる、そして急に跳び跳ねる!

「ふっふわわわぁぁっ、ごごごっごめんなさいぃぃっ!」

その後は逃げちゃった、そんなに謝る事無いのに……あっ、折角人を見つけたのに道を聞くの忘れちゃった……うっかりしてた、さっきの娘走るの遅いね……まだあんな所にいる、よしっ! 走って追い掛けて道を聞こう、なら走ろう……私なら追い付ける!

「おーい、待ってぇ」

怖がるといけないから優しく声を掛けつつ追い掛ける、直ぐに後ろに追い付いてしまった、うん、やっぱり遅い……カボチャの被り物が重いからかな?

「おっ追い掛けてきましまぁぁぁ!」

あっ……速くなった、はっ! もしかしてこれは私に対する挑戦状かも知れない、道を教わりたくば私を捕らえてみよって感じの挑戦だ!間違いないっ、そうに違いない。

「その挑戦受ける……」

ぐっ、と拳を握り、ふんすーっ、と鼻息を出す、そして脚に力を入れ加速!絶対に捕まえて道を聞いてやる!

「待てぇ!」

よしっ、追い付いた!このままハグして捕まえてやるっ。

「なっなななっ何で追い掛けて来るですかぁぁぁ!」

と思ったら右に曲がって交わされちゃった……手強い、一旦立ち止まって息を調える、傘は邪魔なので地面に置いてまた取りに来よう。

今はあのカボチャ頭さんを捕まえないといけない! カッ! と目を見開き再びダッシュ!

「絶対に捕まえてみせる!」
「つっつつっ捕まえるぅぅっ!?、いっいやぁぁぁぁ!」

可愛い声して中々しぶとい……私が苦戦するなんてかなりの強敵だ、やる気が出て来た、だけど今気づいたら道が狭くなってる、これだと走り辛い……。

「はっはっはぁぁっ……うっうぅぅっ、まだ追っ掛けて来ますぅ……ぶつかったのは謝ったじゃないですか!止めてくださいぃ!」

あれ? 何かカボチャ頭さん泣いてる? いやいや気のせい、私に挑戦状を叩き付ける相手が無くなんてありえない、きっとこれは私を油断させる為の罠!

「そう簡単に騙されない!」
「騙してないですよぉぉっ、ばかぁぁぁ!」

むっ……バカって言われた、私を挑発するなんて対した度胸、やっぱり強敵だ。

「……あっ、この先は曲門」

とか思って前を見て気付く、カボチャ頭さんの前に言った通り曲り角がある、あそこはちょっと広い様に見える……はっ、だったらあれが使える! 勝機はこれしかないっ、ならあえて距離を取ろう。

「はぁ……はぁ……やっやっと諦めてくれたようですぅ」

ふふっ、安堵して油断してる様に見せるなんて流石だ、それでこそ強敵!

「でも、勝負はこれでお仕舞いだ!」
「しょっ…勝負!?なっ何の事ですかぁ!」

おぉっ、更に速くなった!だけど無駄……何故なら今から私は!

「勝負を決めに掛かるからっ!」

地面を思い切り蹴って加速!その際に水飛沫が上がった!

「ひっひぇぇぇっ!」

可愛らしい悲鳴を上げて曲がるカボチャ頭さん、ふふ……とくと見よ、私があまりに暇な時に編み出した技を!

三角トライ飛翔ジャンパーっ!!」

続けて私が曲り角に差し掛かる際、壁に向かって跳ぶ……その際、カボチャ頭さんの走る方向に身体を向け壁を蹴る、いわゆる三角跳び……それを格好良く言っただけの技だ、私のお気に入りでもある。

「ふぁぁぁぁっ!?」

でも、私のその行動に驚いたカボチャ頭さんはビックリして立ち止まった、ふふ……この勝負勝った!

「うっうっ……来るなぁぁ!」
「え?……」

あっ……カボチャ頭さんがカボチャの被り物を取った、何か頭の上に持ってきてる、うん……顔も可愛い、オレンジ色のふわっふわの短い髪の毛、鼻の頭付近にそばかす……それにジト目……ぎゅって抱き締めたいなぁ……と思った時だった。

「えぇぇぇいっ!」

カボチャ頭さん……いや、今はカボチャの被り物を取ったからそばかすさんがカボチャの被り物を投げた、私に向かってだ……あっ、これやばいかも。
ドスンッーー
鈍い音が響いた、わっ私の鳩尾みぞおちにかっカボチャが……。

「くぺっ……」

その衝撃で後ろに飛ばされる私、みっ鳩尾は……はっ反則……とか思ってたら次は。

ゴツンッーー

「ひぎっ!」

後頭部から地面に落ちてしまった、そして身体ぜんたいがドサッと落ちた、私は力なく前を向く、そこには何故か怯えた様子のそばかすさんがいた。
その娘はカボチャの被り物を拾って頭に被って何処かに言ってしまう、私は手を伸ばし捕まえようとするが……駄目、もう遠くに言ってしまった、うっうぅ……未熟だった、雨に濡れながら思う私、薄れ行く意識の中でリベンジを果たすと息づく……再開したら今度は私から挑戦状を叩き付けてやるっ、次こそ捕まえてやるぅ、覚悟しろっ! そう決心した私は雨が降る城下街の裏路地で静かに意識を失った……。

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