どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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タッタッタッーー
一定のリズムを刻むかの様にわらわは走る、なぜ走ってるのか?それは今勝負の真っ最中だからじゃ! そんな勝負が始まって暫くしたにも関わらず、スタートダッシュを決めたアヤネにわらわは追い付けないでおった。

「くっ…アヤネの奴、結構足が速いのぅ」

右は城壁、左に平地や木……そんな景色がある、前にはアヤネがおってわらわはそれを追い掛ける形になっておる、わらわが言った様にアヤネは足が早くて中々追い付く事が出来ん。
わらわは結構足が速いと思ったのじゃが……やはりわらわのこの大きな胸が邪魔でスピードが出ないんじゃな?
ぷるんぷるんーー
と揺れて走り辛くて敵わんのじゃ、くっこの胸さえ無ければもっと速く走れたものを! そんな事を考えてついある事を口に出してしまう。

「あぁ……胸の無い者が羨まひぃぎゃぁ!?」

とその時じゃった。
シュバンッーー
わらわの足元に刃の様に鋭い羽が突き刺さる、咄嗟に止まり足に突き刺さると言う事はなかったが……あっ危なかったのじゃ、一歩でも踏み込んでおったら足に突き刺さる所じゃった。
いっ一体誰がこんな事を……わらわは走りながら上を見上げる、羽は上から放たれた物……じゃから上を見れば犯人が誰か分かる筈、空を見てみると誰かが飛んでいる様じゃ……じぃーっと目を凝らして見るとその正体が分かった。

「ヴぁ……ヴァーム……」

遥か高かくに翼をはためかせるヴァームがいたのじゃ……あんな高くからわらわ目掛けてスナイプしてくるとは……と言うか何故わらわがこんな目にあったんじゃ?

「……あぁ、分かったのじゃ!きっとわらわが胸の事を言ったから怒ってるんじゃな? 全くうすっぺぎゃぁぁぁ!」

また羽が飛んで来た、今度はわらわの肌をかすって地面に突き刺さる……この一撃、確実に当てに来おったな? おっ恐ろしい従者じゃ……奴の耳は地獄耳、これからは胸の事は口に出してはいけぬな……黙って走るのが良いじゃろう。
冷や汗を流すわらわは真っ直ぐ前を向く……そう今は勝負の真っ最中、ヴァームの事を気にしていては負けてしまう。

「じゃっじゃが……この胸が邪魔すぎて上手く走れぬ」

育ちが良いのか悪いのか……望んでもいないのに大きくなった胸は確実に走る邪魔をしてくる。
本当に無い胸の者が羨ましい……アヤネにはまな板だの何だの言ったがあれは嫉妬じゃ、羨まし過ぎて言ってしまったと言う奴じゃ、あっ! アヤネの奴わらわの方をチラ見しおった、余裕かましおって……腹立つっ、追い付けるのものなら追い付いてみろとでも思ってるんじゃろうか? くぅぅ腹立つっ物凄く腹立つのじゃ!

「石でもぶつけてやりたい……が、そんな事をすればヴァームが黙っておらんじゃろうな」

上空には恐ろしい監視者がおる、妨害行為とかした瞬間私わらわは一瞬にしてお仕置きされてしまうじゃろう……ヴァームのお仕置きは洒落にならん位どぎついからのぅ……石投げ以外で何か方法が無いか考えるのじゃ。

「まずは……加速するのじゃ!」

第1にした事は加速っ、本当は終盤でドヤ顔しながらアヤネを抜き去り「ばぁかぁめぇ」と挑発しつつ奴の己の未熟さを叩き付けるのに取っておこうと思ったのじゃがこのままじゃ負けてしまいそうなので今加速するっ、あっ……別にスパートを掛けるのではないぞ?
すこーし走る速度を加速するだけじゃ。

「とっ言うわけで……だぁーしゅっなのじゃ!」

少しだけ加速するわらわ、おっ……追い付けそう、アヤネの直ぐ後ろまで距離を詰めたやったぞ! くふふふ……所詮人間、わらわの走力に掛かればどうさも無いことよ。
わらわはしたり顔を浮かべアヤネを小馬鹿にする、くふふふ……このまま抜いてしまおう、そしてその際渾身のドヤ顔を見せて計画通り「ばぁかぁめぇ」と言ってやるのじゃ! そう思ってわらわはアヤネを追い抜く為に左からまわって抜こうとする、が……。

「でぃふぇーす」

それに合わせてアヤネがわらわの行く手を阻む……少しイラッとしたが冷静になって今度は右に……。

「でぃーふぇーんす」

……おっ落ち着け、こういうのはキレたら負けじゃ、今度は左……と見せ掛けて壁際の右側から抜く!

「ん、通るの?どうぞ」

ん?なんじゃ……また道を防いで来るかと思ったが素直に退きおったぞ? ははーん、さてはアヤネの奴、わらわの魅力に気付いてシルクに見合うのはわらわじゃと悟ったな? 初めからそう思えば良い物を……そうと分かればさっさと抜いてやろう、その素直さに免じてドヤ顔は止めておいてやるのじゃ。
わらわは更に少しだけ加速してアヤネの右側を通る、丁度抜き去ろうとした……その時だ。

「と見せ掛けてたっくる!」
「はべっ!あだっ!ひぶっ!」

アヤネがショルダータックルして来た、肩をどんってぶつけてきおった! その衝撃に悲鳴をあげ、足がつまずき壁にぶち当たって悲鳴を上げ、その流れで顔から転けて悲鳴を上げるわらわ、まさに負の3連コンボ……。

「ばぁか」

そして止めの一撃、アヤネの「ばぁか」と言う一言、ドヤ顔で言われた、わざわざ立ち止まってわらわの方へ近付いて良く顔が見える様に言いおった……満足したのかアヤネは直ぐに走っていきおった。
わらわは身体を震わせる……くふっくふふふふ……おっおちっ落ち着け……キレたら……キレたら負け……負け……くっ!

「あんのアホ女ぁ、貴様はわらわをキレさせたぁっ、その報いを受けるのじゃぁぁ!!」

うん、我慢とか無理じゃ……あそこまでされて黙っていられるのは誰もおらん……よってキレる、勝負をつける前にアヤネを転けさせなければ気がすまん……よって。

「これより貴様を転ろげ回しやるからなぁぁっ!」
「……あっそ」

わらわの怒号も何処吹く風……アヤネは気にせずわらわの先を走る、くっ奴め小馬鹿にして気おる、だがのぅアヤネ……それが油断と言うものよ、今に見ておれ! わらわは「あっ」と驚く方法で貴様を転けさせてやるからなぁぁぁ! という訳でわらわの戦いが今っ始まったのじゃ!!

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