どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

95

風呂に入って暫く経った、もう視界が汗で滲んできてしまっている、目に汗が入って痛い……くそっもう逆上せる寸前だぞ? てっきりヴァーム辺りが気付いて何とかしてくれると踏んでいたが……全くそんな様子は無い、あまりに待ちすぎてもう俺とアヤネは黙ってしまった。
あぁ……早く何とかなってくれないか? このままだと茹で上がってしまいそうだ。

「シルク」
「なんだ?」

ん、アヤネが俺を突っついてきた……流石に黙ったままでいるのに耐え切れなくなったらしい。

「さっきの続き……聞きたい」

少し頬を赤く染めて聞いてきた。

「続き?」

はて、何の事だろう……少し思考して見たら直ぐに分かった、途中で切り上げたあの話か……アヤネも気になってるだろうし話そう。

「……アヤネ」
「何?」

と思ったが、改まって話すとなると恥ずかしいな……だっだが話さないと駄目だからな……よしっ、話そう! その時だ、バンッ!と風呂場の扉が開かれる、当然、俺とアヤネの視線はそちらに向く、そこには……。

「脱出成功なのじゃぁぁ!」
「ろっロア!」

一糸纏わぬ姿のロアが現れた、盛大に胸を張って隠すべき所も隠さずに丸出し……もう何から何まで見えてしまっている。
瞬時に俺は目線を反らしたのだがアヤネが直ぐ様「見ちゃ駄目」と手で俺の目を覆ってくる、来てくれたのはヴァームじゃなくてロアか……と言うか良く逃げ出せたな、これはヴァームも此処に来るのは時間の問題かもしれない、俺の周りの人は恥と言う物を知らないのか?

「何の様?」

あっ、目の前が真っ暗で良く分からないがアヤネが喋った。

「むっ……貴様も此処にいたのか」
「いちゃ悪いの?」

ヒタヒタと足音が聞こえる……多分だがロアが近寄って来たんだろ、って2人共声のトーンが低いが……これってまた喧嘩する流れだよな?

「勿論悪いのじゃ」
「そう……」

ぐっ……とアヤネの手に力が入って来る、おいっそのまま目を潰すなんて事を間違っても起こすなよ? いや、それよりもアヤネよ……俺の後頭部に貴女のお腹当たってるぞ?

「そう……ではない!さっさと離れんか!」
「やだ」

むにょん……柔らかいのが俺の頭に乗った、最近ボディタッチが過激になってきてるよな?

「おいっお前等」
「その不愉快な胸、押し付けないで」

俺の意見はまた無視か……言葉を遮られてしまったじゃないか、何も見えなくて何が起きてるか不明だが……何か大変な事が起きるのは確実だ!

「ふん……それはあれか?わらわの胸が羨ましくてひがんでおるのかえ?」
「勘にさわる笑顔……別に羨ましくない」

ぎぎぎっ……物凄く目を押さえ付けて来た「痛い痛い!」と叫ぶが俺の声はスルーされている、あっそれと顔にロアのお腹が当たって匂いが直に感じる、痛いのと良い匂いで頭が可笑しくなりそうだ。

「ほぉ?」
「なに、喧嘩売ってるの?」

むにょんって、ロアのお腹がより押し当たる、相変わらずロアは平気でこんな事してくるよな……っそろそろ手を離して欲しいな……力が強くなった。

「勿論、売っているのじゃ」
「……むか」

起こって「むか」って言う人初めてだ。

「そもそもシルクは巨乳好きじゃ……それは間違いない」
「違う、シルクは貧乳が好き……」
「おい、何勝手に話を進めてるんだ」

きょっ巨乳だの、ひっ貧乳だの勝手にそう言う好みを俺に押し付けるな!

「ふんっ、巨乳は貧乳に出来ないピーーが出来るのじゃ!」

おい、また俺の話を無視した上に放送禁止用語を出したぞ?
今絶対「ピー」ってなっただろ!

「……貧乳にもそれは出来る、ちょこっと寄せたら出来なくもない」
「なっ何するつもりだよ」

何か知らんが猥談が始まってしまった……今日はこう言う事に巻き込まれ過ぎだろう。

「そんなまな板に等しき胸など寄せた所で何も出来んわっこの無い乳が!」

見えていないが、むにょんむにょんとアヤネを挑発するかの様に押し当ててくるのが分かる、アヤネは怒っているのか怒りで身体が震えている。

「あるもん……」

ん、何か泣いた様な声が聞こえる。

「なっ貴様なに泣いてるんじゃ!」
「泣いてない……もん」

ぐすっと鼻をすする音が聞こえる……これ、アヤネ泣いてるだろ。
ロアがアヤネを泣かしてしまった……と言うかこれ、確実にあれだろう。

「いや……泣いてないって、涙を……」

明らかロアは動揺しておろおろしているな……。

「涙なんて……流して…ない……もん」

声だけで泣いてると言うのが分かる、だが俺は長くアヤネといたから分かる。

「え……あぅ……すっすまぬ……いっ言い過ぎたのじゃ」
「……え? 何で謝るの?」

これは嘘泣きだ……アヤネは嘘泣きの達人、自分で自由に涙を流せるまでに至った強者だ。

「んなっ!なんじゃその何事も無かったかの様なけろっとした表情かおは!」
「嘘泣き……分からなかったの?」
「うがぁぁぁっ、勝ち誇った顔をするなぁぁ!!」

ロアが悔しがる顔が分かるなぁ、俺も良く騙されて色々とされたなぁ……がくんっがくんっーーとアヤネを揺らすロア、その度に色々と当たってしまう。

「以外と魔王ってチョロいね」
「チョロくないわ!魔王は偉いんじゃぞ!」

ロアの場合は前に「仮の」が付くけどな……しっかし子供見たいにアヤネの挑発に引っ掛かるな。

「どの辺が?」
「物凄い魔法が出せたり、3日間3食全て肉料理が続いても文句1つ言わずに喜んで食べれたりする!」

前半は良しとしよう……後半は凄いのか?魔王とか関係なくてお前の胃袋が凄い様に聞こえてしまうのは気のせいか?

「嘘は良くない」
「まさか凄いと思ったのか!?」

明らかにアヤネが動揺を声にした。

「それだけではない!朝は必ず2度寝し起きるのは昼間じゃ!」
「それなら私は1週間に4回は3度寝して起きるのは夕方……私の方が凄い」

いや……凄くないぞ? って、なんだ?何かの勝負が始まったのか?

「掃除に料理は少し出来るのじゃ!」

それ、俺達人間でも出来るぞ?

「掃除はしないし料理は誰かが作ってくれるからやらない」

おい……それは駄目だろうってそう言うばアヤネが居候してた時、料理も掃除も俺がしてたんだった。

「だけど、食料調達はやる……力で何とか出来る」
「ぐっ……言いおるわ」

うん、ロアが言いおるわって言う意味が分からない、そんなに凄い事を言ったのか?

「……ねぇ、魔法って何?外で見せたあのビームの事?」
「きゅっ急に話を変えるでないっ……そっそうじゃ、あのビームがそうじゃ」

アヤネが話を急に変えるのは良くある事……だが今は話を変えてくれて助かった、心の中で突っ込んでいたが突っ込み疲れていた所だ……ん、今扉が開いた音が聞こえた気がする。

「ふーん……あっ!」
「なっなんじゃ、急に驚いた顔をしおって…」

ひたひたと言う足音が聞こえる……その足音は直ぐに止んで立ち止まったのが分かる。
そして直ぐに優しさの裏に冷たさを感じさせる口調が聞こえる。

「ロア様……教育、もといお仕置きはまだ済んでいませんよ?」
「はぅあっ!!」

この声はヴァーム……やっと来てくれたか、今、がすって鈍い音が聞こえたが何だったんだ?まぁ……良いか。

「あっ、2人共申し訳ありませんでした……替えの服を忘れてしまい今持ってきました」

見えていて定かでは無いがヴァームは頭を深々と下げた気がする。

「茹で上がる寸前ですよね?どうぞ此方へ……」
「だって、シルク行こ」

と、ここでやっと視界が開放される、ヴァームが俺とアヤネの少し遠くで服を持って立っている、その下にうつ伏せでお尻を天井に向けて倒れるロアがいた、褐色肌のお尻だが、ほんのりと赤く腫れてた気がする……気のせいか? その様子を見て苦笑いして視線を反らす俺、するとアヤネが手を引っ張って来た。

「ありがと……えと」
「あっ、私はこの魔王城のメイド長のヴァームと申します」

此処でやっと2人は自己紹介する、アヤネは「そか」と言って俺を脱衣場に連れていく、その際にアヤネに渡された服を見て俺は驚愕する。

「メイド服……」

いつ度や来た事がある黒と白のメイド服……またこれを着るのか、はぁ……っとため息をつくが状況が状況だったんだ、今は我慢しようか。

「さてロア様……教育を再開します」

えと……何とか服を着れるので問題は解決したと言う事にしておこうか。

「シルクさん、アヤネさん申し訳ありませんが暫くお待ち下さい……直ぐに済ませます」

ロアが低い声で助けを求めている、俺は視線を反らして目を瞑った、アヤネはと言うとくすくす笑っていた……笑ってやるな、教育とか言って多分恐ろしい事をされるんだからな。

「さて、ロア様……残り850回、お尻を叩かせてもらいますね」
 「いっいや……いやじゃぁぁぁ!!」

あぁ、赤く腫れてたのはお尻を叩かれてたからか……ぱっしーんっ! て爽快な音と「みぎゃぁぁ!」って悲鳴、そして「あはは……」と言う笑い声……この時間に異常な程に騒がしい事が起きた。

「アヤネが来て……より騒がしくなったな」

俺はこれからの事を想像してしまいため息を吐く、平穏とは程遠い日常がより加速してしまった、まっまぁ……騒がしいのは嫌いじゃないから、少しは我慢するとしよう……不服だがな。
そう思った後俺はメイド服に袖を通していく。

「だっ誰かっ…みぎゃんっ!…たしゅけっ…はひゃんっ!…るのじゃぁ!!!」

ロアの悲鳴が風呂場で木霊する……あぁ、俺完全にこの状況に慣れてしまったなぁ……はぁ。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品