どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

12

 城へ戻った俺とヴァーム、時刻は午後5時だった、そう言えばヴァームの背中から見えた景色は夕焼けだったな……。

「さぁ、報告に行きましょう」
「え? あぁ……そうだな」

あの景色を思い出した時だ、急にヴァームに言われた言葉が脳内に響く、「見てあげてください」か……その場でロアの事を少し見てやろうと思ったが今までの事を考えたら急に抵抗感が出てきた、くっ……まぁ少しずつで良い、良く見てはっきりと俺の気持ちを伝えよう、そう決意しながらヴァームに着いていく。

 「ロア様入りますよ……あら?」

ロアの部屋の前に立ち、扉を叩く……しかし反応がない、ヴァームは扉を開ける……だがその部屋には誰もいなかった。

「まだ仕事が残っているのでしょうか? それとも……」

ヴァームは考え込む……ロアはあれでも魔王…色々とあるのだろう。

「どうするんだ? ロアがいないと困るんだろ?」
「いえ、報告だけですから問題は無いのですが……」

どうやらヴァームも他に用事があったみたいだ……この場合俺はどうすべきだろう? っ! あっそうだ……すっり忘れてた。

「商談が終わったからこれ脱いでいいよな?」

俺の服を返して貰わないと……城にいてもコスプレのままは嫌だからな。

「駄目です、話を変えないで下さい」

と俺は思っていたが案の定断られた、だがここはひかない! 何故なら早く脱ぎたいからだ! だから今回はもう少し頑張ってみよう。

「いや……もう用事は終わったんだよな?」
「はい、そうですよ?」
「だったら良いじゃないか」
「シルクさん……そんなにメイド服が嫌ですか?」

にこっーー
不適な笑みを浮かべるヴァーム、あっ……この笑顔は駄目だ、これ以上何か言ったら、恐ろしい目に合う!

「いや、不満は無いんだが……えと、ぬっ脱ぎたいと思っただけだ」
「あらあら、シルクさんは露出狂でしたか、急に脱ぎたいとおっしゃるなんて……」
「誰が露出狂だ!」

弁解したら誤解されてしまった、はぁ……もう諦めるしか無いのか?

「まぁシルクさんが露出狂だろうが何だろうがどうでも良いんですが……」
「いや良くないからな?」

何を言ってるんだこいつは! 俺は露出狂じゃない! 元の服に着替えたいだけだ! でもそれを言ったら長話じごくの始まりだからあぁ言うしかなかったんだ!

「仕方ないですね、脱がせてあげましょう」

まだ誤解されたままだ! どうにかして解かなければ!

「だから! 俺は露出狂じゃ……」
「いえ、そうではなくて」
「え?」

ヴァームは俺の手を握り微笑む、そしてぽっと顔を赤く染めて、こう言った。

「お風呂行きましょうか」


「……何で俺は風呂に入らされたんだ?」

何だか良く分からないが風呂に案内されてしまった、脱衣場でヴァームが「ではごゆっくり」と言って何処かへ言ってしまった、何だか知らないが「メイド服を脱げるからいいか」と思って脱いで風呂場に入って身体を洗って湯に浸かっているんだが、何故あのタイミングで風呂? ロアに何か用があるんじゃないのか? なのに風呂……まぁ俺は出来れば会いたく無いんだが……だっ駄目だ! 自分で決めただろ少しだけ見てやるって! 
……まぁ今考えるのはよそう、折角風呂に入ってるんだ、ゆっくりしようじゃないか。

肩まで深く浸かる俺、ここに案内されたのは初めてじゃないが、いつ来ても豪華な風呂だなぁ、壁にはよく分からないが綺麗な絵画が描かれている、他には石の獅子の彫刻と言った芸術品もおいてある、そしてこのお湯……非常に肌に馴染む、軽く首辺りに掛けてみる。

ばしゃーー
あぁ気持ちが良い……こんな素晴らしい風呂は他にないだろう……だがこの場には唯一の不満がある、俺はじぃっと湯が出ている場所を睨む。

「趣味が悪いだろ、誰が造ったんだ?」

魔王ロアの銅像だ、格好いい? ポーズをしていて口から湯が出ている、あれさえ無ければ完璧だったのに…何で口から湯を出したんだよ。

「でもまぁ……見なければ良い話か」

ぐぐぅっーーと背伸びをして周りを見てみる、今は貸切状態だ……今思えば風呂場がゆっくり出来る場所じゃないか? 厄介な奴もいないし……今は難しい事を考えずにのんびりしよう。

「……ふぃぃ」

そう言えば風呂と言えば、毎回ロアが「一緒に入るのじゃ」と誘われるから「断る」って言ったら強引に入って入って来たなぁ……今日はそれが無かった、と言うか風呂に入る時間もいつもより早いこんな時間から入ったのは初めてかも知れない。

「まぁたまには良いかもなぁ……」

ぴちょんっぴちょんっーー
と天井から水滴が落ちてくる、俺は湯気で視界がぼやけているが遠くを見る、誰もいない……何故だろう? 急に寂しくなって来た、貸し切りと言うのは始めは嬉しいが後になると謎の孤独感を感じるな、いや別に皆と一緒に要られなくて寂しいと思ってるんじゃない! これは……そう! ここは広いから孤独感を感じるんだ! きっとそうだ! そうに違いない!

「ふぅぅ……いやぁ、極楽じゃのぅ」

とか思ったてたら声が聞こえた、俺と同じ様な気持ちになっている人がいる、なので返事をする。

「あぁそうだな……ん!?」

えっえーと、何か聞き覚えのある声が聞こえたんだが……。

「ふむ、近くで見ると本当に白いのぅ……おなごに見間違う程に美しいのじゃ」
「……何個か言わせてくれ、何でいるんだよ! 誰が女だ! 何時からいたんだよ!」

ばしゃんっーー
水飛沫を上げそのまま後ろを向いてその場から離れる、俺はちらっと後ろを向いてみる……そこにはにやにやと笑らうロアがいた。
……くそっ! やっぱりこうなるのかよ! と言うかあいつ、タオル巻いてない! 自分が女だと言う事を自覚してくれよ!

「火照ったシルクを見たくて来ちゃったのだ、あっ、何時からいたと言ってたな? 最初からいたぞ? 透明になる魔法で潜んでおった」
「ならもう見ただろ? 今すぐ出ていけ」

しかしロアはその言葉を無視したのか、ゆっくりと湯を揺らしながら俺に寄り添う。

「そんな緊張せんでも良かろう、くくく……顔を真っ赤にしおって、うぶじゃのぅ」
「うっ煩い! ほっとけ阿呆が!」

俺の理性を壊す気か! もうこうなったらこの場から逃げ出すしかない! と俺は思った……が毎度の事ながら、それは叶うわない、褐色肌の滑らかな手が俺の肩から手を回してくる、むにっと背中に柔らかいものが当たる。
どきっどきっーー
と俺の心臓の鼓動がはやくなる、こっこれは所謂いわゆるあの感触……だよな?

「おっおい! 離れろっ! いっ今すぐにどっかいけ!」
「これこれ暴れるでない!」

どこのラブコメ展開だ! って突っ込みを入れたくなるロアの何時ものハードスキンシップ、この安らぎの一時でさえこいつに潰される訳か……ふざけんな! ロアはがっちりと俺を羽交い締めにする、やっやばいこのままじゃ色々と駄目になってしまう。

「シルクぅ、こっちを向いて欲しいのじゃ、わらわといちゃいちゃするのじゃ!」
「向けるか! いちゃいちゃもしない!」

先程から抵抗はしているのだが引き剥がせない……くっ、何度も思うが俺の体力の無さはどうにかしないといけないな。

「むぅ……勿体無いのぅ、わらわの裸が見放題と言うのに……魅了が無いから見ないのかえ?」
「そうじゃない! もっと精神的な問題だ!」 

ロアは一度人間の事を学ばないと駄目だ……いや学んだとしてもこいつはそれを生かそうとはしないだろうな。

「んー? そこを否定すると言う事はわらわに魅力があると言っているのかえ? 嬉しいのぅ…」

なっなんか物凄い事を口走りやがった、くそっ! 何か言い返さなければ! と思ったその時だ、ロアが離れてくれる……俺は今の内に離れる、決してロアの方を向かない様に……だがそれは間違いないだった。

「だが見て欲しいと言う思いは変わらぬのじゃ!」

逃げた先に何故かロア……はて、後ろにいた筈なのに何故? 俺の思考回路は暫く可笑しくなった。

「瞬間移動の魔法……初めから使えばよかったのぅ」

妖しく微笑むロア、妖艶さがあふれでている、褐色肌で豊満な胸、汗ばむ身体、スリムなお腹……俺は逃げた勢いが止まらずロアに突っ込んでしまった……。

「捕まえたのじゃ!」

その刹那ロアにハグされる……さてここで問題だ、がっちりと腕で頭をヘッドロックされ裸の女に胸を押し付けられると男はどうなるお思う? 正解は……。

「やっやわら…か…い……」

がくんっーー
と気を失う、大量の鼻血を出してな……柔らかい感触が思い切り顔に押し付けられたそうか、これが本で見た『ラッキースケベ』と言う奴か、はははは……はぁ。

「えっ……えぇぇ!? しっシルクぅぅ!」

ぐったりと倒れる俺をがくがくと揺らすロア……あぁ、こんな所で俺は死ぬのか……短い人生だったな、俺は薄れゆく視界の中、心配そうな表情を見せるロアの顔を見ながら目を瞑っていくのであった。


「本当に反省してるのか?」
「はい……」
「じゃぁ、もうあんな事はしないな?」
「…………」

さて今の状況を説明しよう、ロアの寝室に寝かされた俺、おでこには濡れタオル……目が覚めたらロアが床で土下座してた、理解するのに時間は掛かったが……うん徐々に思い出して来た、そしたらロアの裸まで思い出してしまう、ぐっ! わっ忘れるんだ俺! じゃないとまた鼻血を出して倒れてしまう! 今はロアに説教中だ、集中しないといけない。

「黙って無いで何とか言ってくれ、あと何だこの服装は!?」
「ヴァームが用意した猫パジャマじゃ! かっ可愛いじゃろう?」

にゃんっーー
可愛らしい猫のポーズをするロア、満面の笑顔でだ、どうやらこの魔王……あんまり反省してないな。
で、ロアに説教中の俺は今黒猫の着ぐるみを着ている、猫耳つきフードの下にはバンダナ、俺の手はと言うと肉球手袋をはめられていた、身体が火照っているて言うのに着ぐるみを着せる。
なんと言うかもう……馬鹿馬鹿しくて何にも言えないな、だから俺は土下座を続けるロアに睨みをきかせる、せめて睨んでおかないと気が済まない。

「まっまぁ今後は気を付けるのじゃ……さて! もう夜もふけたし寝るとするのじゃ!」

そんな睨みを華麗にスルーしベットにダイビング! 見事な気持ちの変化ぶり! やはりこいつ反省していないじゃないか! もう少し反省の態度とかあるだろう! まっまぁ言っても無駄な気はしてたけどな…。

「なら俺は別の部屋で寝る」
「駄目じゃ! 先程の件は反省はする! じゃがわらわは欲の赴くままシルクに抱き付く! その為には一緒に寝てもらわねばならん! これは譲れんのじゃぁっ!」
「そこは譲れよ! 阿呆っ!」

べしべしとロアを叩くも抵抗虚しくベットに押し倒される、にやにやと笑みを浮かべロアは俺の頬を舐める。

「さて、熱い夜を楽しむのじゃ……」
「一応倒れたんだからな? ゆっくり寝かせてくれ」

あぁこんな事毎日起きたら俺は何時か死んでしまう……俺に安心出来る時間なんて無い、大事な事を痛感した夜であった、願わくば朝目が覚めたら実は夢だった! と言う展開を望む……まぁそんな事は残念ながら無いだろう、そんな俺に出来る事はロアの一方的なスキンシップをただ耐える事のみだ、あぁ俺の元いた街が恋しい……。

「くっくっくっ……ゆっくりなんてさせんよ? 夜は長いんじゃ、楽しまねば損じゃろう」

さてどうしようか、色っぽく隣で寝ながら喋ってくるロアを見て考える、何時かはっきり言うのであればここで言えば良いんじゃないか? だけど何だこの思いは? 迷惑を掛けられてるのに、さっさと帰りたい筈なのに……このままロアの元から離れてはいけない気がする。
今日は可笑しな事が沢山起きたからな……それで色々と変な事を考えてしまうのかも知れない、「もう寝よう」そう思って俺は目を瞑る、だが当然横にいるロアが寝かせてくれなくて寝るのに時間が掛かってしまったのは言うまでも無い。

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