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異世界転生の冒険者 【電子版限定書き下ろしSS付】

ケンイチ

プロローグ (2)

 一度きりの魔法と聞いて、天馬は少し考えてみた。

(この世界でのみ通用するということは、俺に対して使うことはできなさそうだな。世界平和と願ってみても面白そうだけど、何の基準での世界平和かわからないし、もし俺の基準だったら、〇〇がいなければもっと平和じゃないか? とか考えたことが、他人に害をなすというところに引っかかるだろうし……)

 その時、天馬は自分の周りから聞こえてくる声が気になった。

「じゃあこの世界での俺に関する記憶を薄れさせることができるか?」

「できるけど、なぜそんなことをするのかいていいかい?」

「ああ、この村は過疎化が進んで人口が減っていき年寄だらけの村になっていたんだが、みんなが頑張って少しずつだけども人口の増加に成功してきていたんだ」

「ふむふむ」

「その中心として動いていたのが俺のじいさんやその友人たちなんだ、その人たちに俺はすごく可愛がられていたんだが、ここに来ているその人たちを見ていると明日にでも死んでしまうんじゃないか、っていうくらい落ち込んでいて、見るに堪えないから何とかしたいんだ」

 その天馬の答えに光は体(?)を小さく震わせながら涙声で、

「何ていい子なんだ! それぐらいお安い御用さ! でも、何で完全に消さないの?」

 それに対して天馬は、少しほほを赤らめながら、

「完全に記憶を消したら俺が寂しいじゃないか……」

 と小さな声で呟いた、それを見た光が号泣(?)しながら、

「天馬く~ん!」

 と、抱きついてきたので、天馬は華麗な動きで回避した。

「ひどいやっ! でもその願いをかなえるにはこの世界を離れる必要があるから、僕の手に触れて頂戴」

 光はそう言うと手(?)を差し出してきたので、天馬は取りあえず握ってみた。

「それじゃあいくよ」

「ああ、頼む。じゃあね、みんな。俺の分まで幸せに長生きしてくれよ」

 次の瞬間天馬は浮遊感と共に意識を失ってしまった。


「……天馬?」

 会場にいた皆が、一斉に棺の方を見た。

 それは天馬の魂がいた方角で、神を名乗る光と共に消えた直後の出来事だった。

 皆は口々に、天馬の声が聞こえた気がすると言い合った。

 天馬の死を、一番といっていいほど悲しんでいたグループから、一人の老人が涙を袖口でぬぐいながら、天馬の棺をのぞき込んだ時、またボロボロと大粒の涙を流し始めた。

 不思議に思った老人の仲間が近づき、同じように棺を覗き込んだ時、老人の涙のわけを知った。

「天馬が笑っておる……」

「ああ……無事に天国にいけたんだろう……」

 棺に納められた天馬の顔は、それまで無表情に眠っているような顔だったのが、老人が覗き込んだ時には、わずかに口角が上がっており、微笑んでいるように見えた。


「起きたかい? 天馬君」

 目を覚ますと、近くに一〇本の光が立っていた。

「ここはどこだ」

 俺の呟きに光の一つが近づいてきて……否、こようとして他の光たちに突き飛ばされ、顔(?)から見事なスライディングを決めていた。

「この子いい子よ~! こんな子これまで来なかったわ~」

 と、抱きついてくる女性っぽい光に、

「来てくれたのがこの子でよかったわ~」

 と、微笑みを浮かべてそうな声で近寄ってくる光(これも女性っぽい)に、

「あんなことを言う奴は初めてだっ!」

 と、背中をたたいてくる光(なんかおっさんみたい)や少し離れて俺の体全体を見ている二つの光に無言で近づいてきて体の匂いを嗅いでいる光(変態かこいつ)、俺の体を触りながら(下半身含む)体をくねらせている光(こいつの方が変態だった! なお、大事なところは死守しました)、それに女性っぽい光たちの後ろから見ている光と、その横で恐る恐るといった感じでこちらを見ている光(こいつだけ黒みがかっている)に囲まれた。

 なかなか高評価みたいだが、顔が見えないのでよくはわからない。

 戸惑っていると突き飛ばされていた光が、

「みんな、天馬君が困惑しているから一旦離れて!」

 その言葉をきっかけに落ち着いていく光たち。だが、

「顔や姿がわからないから、個別の判断がつかないんだが……」

 と俺が呟くと、また騒がしくなっていく。

「あっ、天馬君が私たちの姿が見えるようにするのを忘れてた。ごめ~んね。てへぺろ」

 といった少し、イラッとくる言葉を発し、他の光に突き飛ばされた光(多分俺を連れてきた奴)が、飛ばされた先で数個の光にボコボコにされている。

 その間に一番女性らしい光が近づいてきて、俺の目の辺りに手(?)を当ててきて、

「少しじっとしててね~」

 と言って、何か呪文のような言葉を呟き始めた。呟き始めてすぐに段々と目の辺りが暖かくなっていき、少し熱く感じるくらいのところで、

「もういいわよ~」

 と手が放された。手を当てられていた時間は大体一~二分ほどだったが、そのわずかな時間で俺に劇的な変化が訪れた。

 その変化とは、俺の目の前にいる柔和な笑みを浮かべた、おっとりとした感じの美人を視認できることだ。しかもかなりの巨乳なので、自然と目がそちらにいってしまう。

「ちゃんと見えているようね。ごめんなさいね~あの人、かなり抜けているから~」

 苦笑しながら謝る美人の隣には、これまたスレンダーな体型の美人がいる。この美人が抱きついてきた光だろう。

 その近くには、かつぷくの良い女性(宿屋の女将さんみたい)と女将さんの後ろから覗き込んでいる幼い女の子(見た目、一〇歳くらいか?)がいる。

 俺たちから少し離れて、一五歳くらいの少年がタコ殴りに遭っており、殴っているのは筋肉隆々といった感じの男性(おっさん)におおかみっぽい動物……じゃなくて動物の毛皮を被った男性、そして男の俺がれるくらいのイケメンな男性……なんだけど、少し動きが変というか怪しい……あっ目が合った。こっちを見てウインクして、ついでに投げキッスまで……こいつか! さっきの変態は! がっかりだよ!

 しばらく眺めていると、二人の男性が声をかけてきた。一人はナイスミドルな渋めの男性、もう一人はフードを深く被った魔法使いのような男性だ。

「初めまして天馬、私は破壊神で、こっちのフードは魔法神だ。よろしく」

「どうも」

 ナイスミドル、フードの順で挨拶をしてきた。少し物騒な名前の神様だけど、礼儀正しそうなので怒らせなければ大丈夫そうだ。

 二人の挨拶が終わると、女性陣がやってきた。

「初めまして天馬ちゃん、私は愛の女神よ! よろしくね!」

「私は大地の女神をやってるの~、よろしくね」

「あたしは生命の女神さっ! よろしく天馬っ!」

「僕は死神……よろしく」

 順に、スレンダー美人、おっとり美人、宿屋の女将、女の子だ。

 そこに殴り飽きたのか、先ほどまで少年(のような神)をリンチしていた三人がやってきた。

「よう! わしは技能神をやっているんだ! よろしくな天馬っ!」

 と、背中をバシバシ叩いてくるおっさん。かなり痛い。

「…………われけものがみ………」

 後ろから近づき匂いを嗅ぐ狼……の毛皮を被った男性。狼だから匂いを嗅いでいたのか、納得……できねーよ! 食べられそうでちょっと怖いぞ!

「はぁ~い、あたしが武神よ、よろしくね! て、ん、ま、ちゃん! ンチュッ」

 野生(?)のオカマが現れた。オカマの攻撃『投げキッス』! しかし、天馬はかわした。野生(?)のオカマは残念そうだ……危なかった~。

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