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異世界転生の冒険者 【電子版限定書き下ろしSS付】

ケンイチ

プロローグ (1)

プロローグ



 〇〇県△△郡□□村、この村は過疎化の進む地方に存在する村である。

 過疎化で想像できるように、この村には若者と呼ばれる者はほとんどおらず、四〇代ですら若手と呼ばれることがあるくらいの田舎の村である。

 田舎ゆえに不便なところも多々あるが、それを村全体で協力することでカバーしながら日々を暮らす、そんな古き良き田舎である。

 この村で騒動といえば、やれイノシシが暴れただの、サルが作物を食い荒らしただの、スズメバチがでかい巣を造っただのetc.……といったものだ。いたって平和な村なのである。

 しかし、そんな平和な村の空気がこの日は違った。

 こんな田舎の村にしては珍しく、若者が何人も来ているのだが、彼ら彼女らは少しもはしゃぐ様子を見せず、皆同じ色の服を着てうつむき気味に歩いている。

 そして、それは村人たちも同様であった。

 人々の中にはすすり泣きをし、その場にうずくまってしまう者もいた。

 そんな人々の向かう先で、一つの物語が幕を下ろし、一つの新たな物語の幕が開くのであった。


 おおとりてんは、村の集会場で葬式に参列する人々を眺めていた。

 彼は人々を眺めながら、「この世には不思議なことがあるものだ」と考えていた。

 人々を眺めるだけならば、特に珍しいものではないが、彼が座っている場所が問題であった。彼は棺の上で胡坐あぐらをかいているのだ。

 普通そんなことをすれば、遺族の方々や関係者によってぼろ雑巾のようにされても文句は言えないだろう。それくらい失礼で非常識な愚か者のする行動だ。

 だが、誰も天馬につかみかかるどころか、視線を向けようとすらしない。それはとても異様な光景に見えた。

 ただし、彼の姿が見える者がいればの話だが。

 ここまで来れば薄々とわかるだろう。この葬式は天馬を送る為のものなのだ。

 つまり天馬は、人々に見えない存在、所謂いわゆる『幽霊』になってしまっているのだ。

「いつまでここにいればいいんだろう」

 天馬のつぶやきに対し、答える者はいない……はずだった。

「それじゃあ、別のところにいこうか。こんにちは、鳳天馬君。君をスカウトしに来ました」

 それが、幽霊である天馬にかけられた最初の言葉だった。

 予期せぬ返答に振り返るとそこには……人型の、見るからに怪しい光が立っていた。

「初めまして、ぼ……あっぶなっ!」

 手(?)らしきものを差し向けてくる光に対し、天馬は近くにあったちやわんを投げつけた。

「危ないね! 君!」

 なかなかの速さと正確さで放たれた茶碗を、光はマ〇リックスのように避けてみせた。

 光はかなり驚いてはいたが、特に怒った様子には見えない。

 しかし、天馬は気を抜かずに近くにある茶碗を手に取り、とうてき準備に入る。それを見た光はさすがに慌てて、

「怪しい者じゃないからっ! そんなもの投げないで! そんなの投げたら次は他の人に当たっちゃうかもしれないから! 話を聞いてっ!」

 光の必死の説得で二投目の茶碗は下ろされた。ちなみに、最初の茶碗は開いていた窓から飛んでいったので、多分人に怪我人は出ていないだろう。

「で、お前は何者だ。俺はどうも幽霊らしいから、お前も同じようなものだと思うけど」

天馬の問いに対し光は胸(?)を張り、

「何て失礼な! 僕は神様です!」

 それを聞いた天馬はゆっくりと腕を振りかぶり、「うそじゃないよ! 本当だよ! 取りあえず話を聞いて!」の言葉で腕を止めた。

「取りあえず最後まで話を聞いてね! 改めまして、僕は異世界の神です。天馬君、君を僕の世界へスカウトに来ました」

 自称神様(笑)からの言葉に天馬は驚き固まった……ようだったがすぐに復活した。

「(笑)はひどくない? っていうか復活早いね~。もっと混乱するかと思っていたよ」

「幽霊としてここに存在している時点で大概だからな、取りあえずあんたは異世界の神様で、俺を転生させる為にここに来たってことは百歩譲って理解した。で、何で俺に声をかけたんだ?」

「そんなの決まっているよ~……たまたま?」

 天馬は茶碗を振りかざ「それはもういいから!」さなかった。

「たまたまこの辺りにやってきたのは本当だよ。ただ、僕の世界の波長にすっごく合いそうな魂があったから声をかけたんだよ」

「お前、俺の名前を知っていたよな」

「うん」

「俺をスカウトに来たって言ったよな」

「うん」

「たまたまこの辺りに来て、波長が合いそうな俺を見つけたって言ったよな」

「うん」

「たまたまじゃなくて前から俺のことを知っていたんじゃないのか?」

「……何でそう思うの?」

「話ができすぎてるように感じる。むしろ、波長の合いそうな俺をたまたま見つけたから殺して、幽霊になった俺に偶然を装って接触してきた、っていう方が納得しやすい」

「……」

「で、俺を殺したのか?」

「そんなことをするわけがないっ! 馬鹿にしないでくれっ!」

「悪かった。少し気が立っているようだ」

 神を名乗る光の半分泣いているかのような叫びに、天馬はすぐに謝った。

 光は声を落として、

「僕も謝らなければならない、本当はだいぶ前から君のことを知っていたんだ。だけど、誓って君を殺してなんかいない、本当だ! 君の寿命が尽きるまで待っているつもりで君に気をかけていたんだ」

「だいぶ前っていつぐらいからなんだ」

「君が生まれてからだよ」

「そんなにも前からか! でも何で異世界の俺をそんなに前から気にしていたんだ?」

 天馬の問いに対し光は、

「僕のいる世界には、世界自体が病のようなものにかかることがあるんだ。それにかかるとその世界に存在している、ありとあらゆるものの生命力にも似た『存在力』というものが低下し、最悪世界自体が消えてしまうこともあるんだ。それを防ぐ為に、わざと異世界の魂……それも魂の存在が濃い者を定期的に送り込み『存在力』を活性化させるんだよ」

「予防接種のようなものか……というか、存在が濃いってどういうことだ?」

「存在が濃いっていうのはね。魂の状態でも何らかの影響を与えることができる者のことをいうんだ。思い出してごらん、君は幽霊なのに、私に茶碗を投げつけただろ。普通ならば、茶碗を持とうとしても、手をすり抜けてしまうはずだ。それが『幽霊』なのだからね」

 光の言葉を聞いて、天馬は初めて自分が茶碗を持って投げたことに気がついた。そしてもう一度確かめる為に、近くに置いてあったコップを持ち上げてみた……ところ、コップのそばにいた老人が驚いて固まってしまった。

「気をつけなよ、天馬君。君のやっていることは、一般的に『ポルターガイスト』と呼ばれている現象と同じなんだからね!」

 光が慌てて天馬からコップを奪い、元の場所に置いた。

 驚いて固まっていた老人は、何度か目を瞬いたあと、コップが元の位置に置かれているのを目をこすりながら何度か確かめて、首を傾げていた。

 老人は少し酔っていたようなのですぐに忘れるだろうが、それでも気をつけなければ、葬儀の場が除霊の場に変わりそうだ。

「で、異世界に送り込まれたとして、俺の得られるメリット、デメリットは?」

「急に話を変えても、なかったことにはならないからね。本当に気をつけてよ。話を戻すけど、デメリットというほどのものはないと思うよ。強いて言えば転生ということで赤ん坊から始めてもらうことぐらいかな。メリットとしては生きていきやすいように、所謂チートと呼ばれる能力をあげるよ。希望するならこの世界での記憶や培った経験や能力も引き継げるし、この世界でのみ通用する魔法を一回だけ使ってあげるよ。ただし、他人に害をなすことなどはできないけど」

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