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俺と彼女の恋を超能力が邪魔している。

助供珠樹

第一章 俺と彼女の出会いをアダルトビデオが引き合わせる。 (2)

 要するに二人は、そろって彼女いない歴イコール年齢であり、当然のごとく童貞なのであった。

「なぜお前も二次元のキャラに乗り換えないのか、われは理解に苦しむぞ。あれだけ我らを許容してくれる存在などこの世にはない! 中でも特にこよりちゃんは──」

「あーはいはい。もういいよ、わかったっつーの」

 朝イチにパンチラを見たという幸福感も、くろうどとのそんなくだらない会話ですっかり消沈してしまった。本当にコイツは相変わらずなやつだと思いながら、だいろうはそのまま蔵人とともに昇降口の前に貼り出されたクラス分け表のところまでやって来た。

「……ま。予想はしてたけど」

 大治郎は自分と同じクラスに並んでいる名前に『おおぬき蔵人』という四文字を発見すると、特に驚きもなくそんなふうにぼやいてみせた。

 蔵人もまたこちらの名前に気付いたのか、眼鏡めがねを直しながら振り返る。

「同じクラスなのは小中学校含めて何年連続だ?」

「七年、だな」

 これぞまさしく、腐れ縁といった感じである。

 さっそく二人は新しいクラスに向かうため、昇降口で上履きに履き替える。校舎の振り分けは一年生が一階といったように学年ごとに階数が上がっていく造りになっていた。

 昇降口横にある階段から上がって自分たちの新しい教室までやって来ると、なぜか校庭側の窓に人だかりが出来ている。

「なんだアレ?」

 そうつぶやくも、蔵人のほうはそちらをいちべつしただけで興味もなさそうに自分の席に座った。仕方なく大治郎だけが一人で窓際までやって来て、近くのクラスメイトたちの視線や会話などから、大体の方角に視線を合わせてみる。

 注目の場所はすぐにわかった。

 街の中心部であるバスターミナルの北側で、南側の山にあるまつざと高校とは正反対の頂上に、見たことのない白い建物が建っている。

 終業式の時にはなかったはずのその建物は半分ほど木々に覆われ、全容ははっきりしない。

「──この辺りの気象を測定する施設かなんかじゃねーの」

「──天文台だ。間違いない」

「──ケーブルテレビの放送局かもよ」

 どれもあり得ると思ったが、そのどれもが自分にはあまり興味のないことだった。

 大治郎が蔵人のところへ戻ろうと振り返ったその時、ちょうど窓際のほうを通りがかった生徒と肩が強くぶつかってしまった。

「あ。ごめ──」

 顔を上げてそう謝ろうとするも、相手はじろりとこちらをにらみつけるだけ。キャップに音がれまくったヘッドホン、制服の下には大きめのパーカーといった、いかにもHIPHOPが好きそうな兄ちゃんという感じのその男は、だいろうに何も言うことなくそのまま通り過ぎて後ろのほうの席に行ってしまった。

「こっわー……一瞬因縁つけられるかと思った……」

 くろうどのところに戻りながら大治郎がそう言うと、彼はそのヘッドホンの男のほうをいちべつしてから口を開いた。

「みだりに歩くからそうなる。目立たずこのようにクラスの隅っこで空気キャラになれ。時が来るのを待っていれば、自然となんのトラブルもなく一日が終わる」

「俺は別に空気になりたいわけじゃないけど」

「しかし人には向き不向きがあるだろう? お前はわれと同じく空気キャラに向いている」

「一緒にするなよっ!」

 その時、いきなり教室の前の扉が勢いよく音を立てて開かれた。

 どきっとしてそちらを見ると、いかにもチャラそうな男が廊下から教室へと入ってくる。脱色した金色の髪を触りながら、彼はぐるりとクラス内を見回すと、

「おおっ! お前も同じクラスだったんかよーっ!」

 知り合いを見つけたのか大声でそう言うと、窓際にいた男のところに近寄っていく。

「りょ、りよう!? お前どーしたんだよその髪!?

「ああん? イメチェンだよイメチェン。イケてんだろ?」

 亮と呼ばれたチャラ男は、自慢げに脱色した髪をでつけてそう笑ってみせる。

「お前さすがに先生に見つかったら呼び出しモンだろ」

「大丈夫だって! よゆーよゆー。それよか昨日見つけた動画でさ──」

 そうして教室内が一気に騒がしくなった。一年の時に同じクラスだったらしい仲間数人と教室の真ん中で、アイドルやスポーツやお笑いタレントの話を繰り広げるその金髪を見ていると、蔵人がもう一度同じ台詞せりふを大治郎に告げる。

「お前は我と同じく空気キャラに向いている」

「……さすがにアレと比較するのは極端すぎるだろ」

 亮というあの男のようにいわゆるイケてる連中というものは存在していて、それはたとえこの男子高という場所でも変わりはしない。

「あ。そーだ、亮。今度女子高のやつらと合コンなんだけどお前も来る?」

「マジで!? 行くに決まってんだろ!」

 別に大治郎はクラス内のイケてるポジションにあこがれているわけじゃなかったが、あれだけのコミュニケーション能力があれば、たとえ男子高生でも女子と出会う接点は多くなるんだろうなと思った。

 そんなことを考えながらぼんやりとイケてる連中をだいろうが眺めていたところで、黒板の上のスピーカーから校内放送が流れ出した。

『始業式を行います。校内の生徒は体育館に集まってください。繰り返します──』

 くろうどがゆっくりと席を立ち上がる。

「案ずるな。お前のそのスケベな性格では、合コンしたところで女子にはだれからもモテぬ」

「二次元オタクのお前もな」

 互いに憎まれ口をたたき合って、体育館へと向かう。

 それは何事もなく平和でありながらあまりにえない日常であり、しよせん学年が上がったぐらいでは何も変わらないようだと大治郎は思うのであった。


 大治郎の家は定食屋を営んでいる。始業式を終えて学校から帰ってくるとすぐに、父と姉に店の手伝いをいられ、そのまま二十一時の閉店まで馬車馬のようにこき使われる。

 その後、遅い夕食をってから二階にある自室の畳の上でごろごろとしていたら、あっという間に時刻は二十三時になろうとしていた。

 昼間の帰宅時には温かく感じられたはずの風が、今は少し肌寒くなっている。

「ああ、くそ!! もうスタミナなくなっちまったよ……」

 スマホのゲームをやりながら畳から起き上がった大治郎は、そのまま部屋の窓をゆっくりと閉めた。

 そうしてまた畳の床に転がってからぼーっと天井を眺めていると、ふと今朝見たOLのパンチラを思い出してなんだかムラムラしてきた。

 男に生まれた以上、避けては通れぬ大切な仕事の時間がやってきた。

 ──シコるか。

 寝転がったままズボンをひざまで下ろそうとしたその時、

「大治郎」

「うわぁっ!!

 いきなり姉が部屋のふすまを開けてきて、思わず大声で叫んでしまった。

「驚きすぎじゃない?」

「い、いきなり開けるからだろっ! な、なんの用?」

「おいたから入りなさいよ。あんたが入らないならあたしが先に入る」

 そんなことかよと思いながら、

「……先に入っていいよ。あと、次からは開ける前に一声かけて!」

「はいはーい」

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