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俺と彼女の恋を超能力が邪魔している。

助供珠樹

Start/プロローグ / 第一章 俺と彼女の出会いをアダルトビデオが引き合わせる。 (1)

 男の子って、どんなだろう?

 まだ一度も同じとしごろの異性と出会ったことがないあたしは、そんな漠然としたことを時々ふっと考える。

 あたしのように、ドラマチックな出会いを空想したり、ロマンチックなデートにあこがれたり、男の子もそんなことを思ってたりするのかな。

 見つめられるだけでドキドキするような男の子と出会ってみたい。

 胸がきゅーっと締め付けられるくらい、その人のことばかり考えてしまうような。

 優しい声で「好き」って言われたら、頭がぽーっとのぼせてしまうような。

 そんなステキな男の子が、いつかあたしにも現れますように。



 今から約十年前、新型ウイルスにかかったと思われる五、六歳の女児六十三名が全国の病院に運ばれた。

 なぞのウイルスや奇病が発症したというニュースは毎年のように目にする機会があっても、そのどれもがその後の進展の報道がない限り、そのまま人々の記憶から忘れ去られていく。

 この新型ウイルスの発生原因は今もって不明。そもそもウイルスによる感染が複数の女児らの症状における根本的病因であったかどうかさえも不明である。

 にもかかわらず、政府や病院側はその後の進展情報を一切伝えることなく、報道の収束を指示し、この事実をいんぺいした。

 ならば、この謎の発熱を発症した女児らは約三週間ほどの意識障害を経た後で、急速に回復していき、完治とするとともに社会的な影響力を懸念すべきある特性を身につけてしまったからだ。

 この事実によって政府はかんこうれいを敷き、その後も厳重な管理体制の中でその女児らを一か所に隔離することとなった。その特性は社会に大きな害をす可能性が大いに存在し、その危険性を強く認識したからだった。

 なぜその特性を持ってしまったのか。その原因はいまだ不明。行き詰まり続け年月だけを重ねていく研究機関は、やがて就学する年齢にまで達した女児らを今後どう扱っていくかという問題に直面する。

 研究者たちは長い議論の末、女児らにもごく一般的な社会通念、倫理を学ばせることはひつだと判断。女児らの両親から許諾を取り、その後は隔離し研究を続ける中で、通常の一般的教育をほどこすこととなった。

 そうして一連の研究機関及び教育機関は『やなぎ学園』と称し、誕生する。

 長い年月、山奥でひっそりと隔離されて過ごし続けてきた女児らは、いつしか高校生の年になっていた──。



 強い一陣の風が、歩道に並ぶ新緑の街路樹をおおに揺らしていた。

 温かな風がその茂った緑葉をざわめかせると、枝々で羽を休めていた小鳥たちはさえずりながら一斉に青空へと飛び出していく。

 すべては、そんな一瞬のことであった。

 小鳥たちが元気よく羽を広げたその真下、アイドリング状態で排気ガスを吹きながらエンジン音を響かせる車、その前方にある横断歩道の信号は青へと変わり、通勤途中のサラリーマンや通学途中の学生たちが同時に歩きだす、まさにその瞬間。

 ともにその場を歩いていた一人の男子高校生──とうだいろうの視界はぴたりと『あるもの』をとらえたのだった。

 くわっと目を見開くと、歩行者信号が軽快な電子音を響かせている中、彼のすぐ目の前を歩いていたOLのスカートがふわりとめくれ上がる。

 淡い青色のパンツだった。

 大治郎は心の中でガッツポーズを取る。

 彼の視線を察したわけではないのだろうが、OLが顔を赤らめながら振り返る。

 女性が振り返ったタイミングとほぼ同時に、大治郎は実に自然な仕草で顔をそむけた。

「…………?」

 首をひねるOLの姿を目の端で確認する。大方スケベな視線を感じたのにだれも見ていなくておかしい、とか思っているのだろう。

 大治郎はふっとみをこぼしながら、

「……まつたくなんてエッチな風だ。けしからんなぁ」

 そんなふうにつぶやいて視線を戻すと、OLはそのまま横断歩道を急いで走り去っていく。

 それほどに恥ずかしかったのだろうと思いながら、大治郎は今日一日の元気をくれたその布に対し、心の中で「またね」とあいさつをする。

 いつでも再会出来るように脳内フォルダに鮮明に保存して、大治郎は朝から青パンツをおがめた幸運な一日の始まりを胸一杯に感じるのだった。


 市内で最も星が近くに見える街と呼ばれる彼の地元、ここひがしおかはバスターミナルを中心地として、その周辺をぐるりと丘陵地で囲まれたベッドタウンであった。

 そのような街の南へ広がった山に向かう坂の中腹部に、彼の学校『まつざと高等学校』はある。女子のパンチラとは完全無縁の男子校である。

 坂だらけの地元の高校に、今日から二年生として向かう大治郎は、新学期早々のラッキースケベなイベントに遭遇したこともあって、何か良いことが起こる日になりそうだと本気で思いながら、足取り軽やかにその坂道をかけ上がっていくのだった。

 そうして校門をくぐった先で、小学校のころからのおさなみの後ろ姿を見つけた。

「おっす」

 だいろうの声に反応し、ゆっくりと振り返ったその男──おおぬきくろうどは、眼鏡めがねをくいっと直しながらまじまじと彼の顔を見つめる。

「……なんだ大治郎か」

「二年生になっても、相変わらずネクラそうなオーラ出してるな」

「放っておけ」

 ぶっきらぼうにそう言い放ったが、いつまでもニヤついている大治郎を見て、蔵人はげんそうにまゆをひそめる。

「なぜそんなにニヤついてるんだ」

「え? ああ、実はさっき素敵なものを見ちゃってさ」

「素敵なもの?」

「OLのパンチラ!」

「……はぁ、鹿馬鹿しい」

「はぁ!? どこがだよ、最高だろうがっ!」

 そのように声を荒らげた大治郎を見て蔵人は大きなためいきくと、わざわざ言わせるなよと言わんばかりの、非難めいた表情で、

「二次元のパンチラならまだしも、三次元のパンチラなんか汚いだけだろ……」

 と、ぶつぶつつぶやくのだった。

 このように蔵人の好みは、二次元三次元の女の子だった。

 最近では日曜の朝アニメである『魔法少女こよりちゃん』のメインヒロインが特にお気に入りらしく、大治郎がどれだけ三次元の女性の魅力を語ろうとも一切耳を貸さない。

「お前もいつまでもそんなパンチラごときで浮かれているんじゃない、本当の恋をしろ」

「そんなもの、お前だってしてないだろうが」

「バカ言うな、われにはこよりちゃんがいるだろうが」

 蔵人はみずからのことをいつも我と名乗っていて、正直それを小学校の時から痛いやつだなと大治郎は思っていた。

 口を開けば二次元の話ばかり。まつたく健全じゃないなとあきれて彼を見つめるが、そんな大治郎も生まれてこの方、三次元女子と何かあったわけではない。むしろ中学ではスケベなハプニングを逃すまいと目を血走らせていたために、その目線がキモいと女子に避けられていた時期もあった。

 結局オタク趣味全開の蔵人と同じく、大治郎は女子からはだれにも相手にされないまま中学を卒業し、今現在に至るまでいまだまともに三次元女子と会話をしたことがなかった。

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