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異世界サバイバル~スキルがヘボいとクラスから追い出されたけど、実は有能だったテイムスキルで生き延びる~

三門鉄狼

STAGE2 第1話 異世界の砂漠

「はあ……はあ……」

「大丈夫か、三郎太」

「ああ……ほんと歩きづらいな」

 砂に足を取られながら三郎太は文句を言う。

「お兄ちゃんは運動不足、太り過ぎ。だから痩せなよって言ったじゃん……はぁはぁ」

「そういうお前は体力なさすぎなんだよ。お前も運動しろっての……はぁはぁ」

「ふん! なによ、ドムみたいな体型して……はっ……はっ……!」

「お前こそギャン……ふーふーっ……!」

 言い合いの途中で息が切れて声が出なくなる二人。

「もう、二人とも、ダメだよ仲良くしなくちゃ。それに体力の消耗もまずいよ」

 と小見川さん。

「前と違ってこの砂漠じゃ、どこに休める場所があるかわからないんだし」

 そう、砂漠だ。

 俺たちは砂漠を歩いていた。

 無人島から脱出しようとして乗り込んだ船が、火山の噴火の影響で起こった洪水に飲まれ、沈んでしまった。

 投げ出された俺たちは気づくとこの砂漠にいたというわけだ。

 一緒だったのは俺と小見川さんと三郎太と津奈ちゃん。

 それにウサギのみるくとここあ。

 ちなみにみるくは小見川さんが、ここあは俺が抱いて運んでいる。

 ほかの生徒たちがどうなったかはわからなかった。

 無事だといいけど……。

 俺たちが目指しているのは小高い丘の天辺だ。

 砂漠って意外と高低差があるんだな。

 海岸から見て一番高いこの丘の上まで行けば、あたりの様子がわかるかもしれないと考えたわけだ。

「これはちょっとした登山だな」

「うん、けっこう大変……」

 そんな会話を交わす俺と小見川さんの腕の中で、みるくとここあは呑気そうにヴイブイ鳴いている。

 溺れかけたってのに元気だなお前ら。

 やがて、なんとか頂上に到着。

「あー疲れた……」

「家に帰りたい……布団に潜り込んで寝たい……」

 即座に座り込む三郎太と津奈ちゃん。

 見た目は全然似てないのに、そっくりだな。

 さすが兄妹。

 とまあ、それは置いておいて、周囲を観察だ。

 丘の向こう側にも延々と砂漠が広がっていた。

 反対側を見ると海岸線があって、その先は海。

 霧がかかって水平線ははっきりしない。

 けど、その霧の中にぼんやりと島が見えた。

「私たちがいた島っぽいね」

「うん」

 小見川さんの言葉に俺はうなずく。

 ということは、俺たちは一応目的の対岸へたどり着くことができていたわけだ。

 こっちの陸地は、無人島を囲むように広がっていた。

 無人島よりずっと大きな陸地のようだった。

 こちらを探索すれば、人の住む土地が見つけられるかもしれないし、そうしたら俺たちがこんなところに飛ばされた理由がわかるかもしれない。

 もしかしたら、元の世界に戻る方法も……。

「あ……見て」

「あれは……」

 津奈ちゃんと三郎太が言うのに目を向けると、息を呑むような光景が現れた。

 砂塵が風で流されて見えたのは、砂漠の中に埋もれるように建つ建物だった。

 それは俺たちがよく見慣れたものだ。

 俺たちが通う学校の近くには駅があって、その周りには多くの商業施設が立ち並んでいる。

 そういったデパートやら、ビジネスホテルやらがいくつも砂漠に建っているのだった。

 そして遠くには、鉄道の駅ビルも見える。

 まるで、駅前の街並みのミニチュア模型から子供が建物を引っこ抜いて、砂場に乱雑に置いていった——そんな光景だった。

 海岸からもいくつかの建物は見えてたけど、こうして少し高いところから改めて眺めるとすごい光景だ。

「あそこのどこかに人がいると思うか?」

 三郎太が言ってくる。

「どうだろう……でも可能性はあると思う」

 俺たちは、地震に巻き込まれたと思ったら、いつの間にかこの世界にいた。

 どこにどういう形で転移するかは、法則性がない感じだった。

 あの時間、ほとんどの生徒は学校にいたけれど、校舎からは離れた場所に転移した生徒も多かったのだ。

 だとすれば、あのデパートや駅に転移した生徒もいるかもしれない。

 それに——生徒以外の人間がいる可能性もある。

 これまで一度も見かけていないけど、大人がどこかに転移しているかもしれない。

「よし、それじゃ途中にある建物に立ち寄って、誰かいないか探しつつ、駅を目指してみよう」

 とりあえず目標が決まった。

         ※

「下りだから楽かと思ったけど、そうでもないな……」

「砂に足取られて……歩きづらい……」

 もはや言い争う気力もない様子で呻く福田兄妹。

「がんばって。もう半分くらいは来てるよ」

 小見川さんがそう励ますが、三郎太は、

「まだ半分か……」

 力なくそう呟くばっかりだ。

 まあ文句を言いつつも歩いているんだから問題ないだろうけど。

「少し休もうか? べつに急ぐわけでもないし」

 ここまで歩いてきたけど、全然モンスターが出現しない。

 無人島ではしょっちゅう巨大生物に襲われてたんけど、砂漠には動物が少ないんだろうか。

 ちなみに、この世界にいる巨大生物は、正確にはモンスターとは違うらしい。

 俺たちが遭遇した中でモンスターに該当するのは、あのドラゴンだけ。

 俺のスキル〈テイム〉によるとそういうことらしい。

 けど面倒くさいので、巨大生物もモンスターと呼ぼう。

 俺たちにとっての危険度を考えりゃ、充分あいつらもモンスターだろ。

 とにかくそのモンスターを全然見かけない。

 なので、日陰になりそうな丘の裏手とかで少し休んでも大丈夫だろう。

 と思ったんだけど、三郎太が言ってくる。

「いや、できれば日が沈む前に建物に辿り着きたいし」

「どういうこと?」

「砂漠は寒暖差が激しいんだ。昼間は三十度を超えるのに、夜はマイナスになるなんてこともある。装備もなしに、屋外で過ごしたくないだろ」

 マジか……。

 たしかにそうだな。

「よし、じゃあもう少しがんばるか」

 一番近くにあったのはビジネスホテルの建物だ。

 あそこまでたどり着ければ、冷暖房設備があるし、食べ物もあるだろう。

 そう、この世界に転移した建物は、なぜか電気やガスが通ってる。

 外は一面の砂漠でも、中は快適に過ごせるはずだ。

「あの……なにか聞こえませんか……?」

 と、不意に津奈ちゃんが言ってきた。

 相変わらず、俺に話しかけるときだけはちょっと怖がってる。ショックだ……。

 いや、俺を怖がってるんじゃなくて、たまたまこのメンバーの中で、兄の三郎太と女子の小見川さんには話しかけれるってだけなんだけどね。

 それはともかく。

「音? どんな……?」

 言いつつ、俺も耳をすませる。

 たしかに……。

 なんか聞こえるな。

 砂をかき分けるような、ガサガサいう音。

 それもそこら中から。

 なんだ?

 周りにはなにも見えないのに、音だけが不気味に……。

「……小見川さん、危ない!」

 俺は、小見川さんの足元の砂が盛り上がったのを見て、とっさに彼女を突き飛ばす。

 さっきまで彼女が立っていた場所に、巨大なサソリが現れた。

「うわわわわ!」

「気持ちわる……っ」

 三郎太と津奈ちゃんも慌てて足元の盛り上がりから身を避ける。

 地面の下から次々と巨大サソリが姿を現す。

 砂によく似た黄土色の殻に身体を覆われている。

 巨大なハサミに、四対の脚。

 そしてぐいっと持ち上がった尻尾の先には鋭いトゲがある。

 もうその形だけで怖いのに、サイズがおかしい。

 ハサミが俺たちの頭くらい。

 持ち上がった尻尾は俺たちの身長より長くて、先端の針は俺たちの頭上だ。

 人よりでかいサソリ。

 それが十体くらい出現して、俺たちを取り囲んでしまった。

「おおおお落ち着くんだ。サソリの中でも毒を持ってるのはごく一部だけって話だ」

「お兄ちゃんこそ落ち着いてよ! あの針に刺されたら、毒があってもなくても死ぬからね!」

 まったく津奈ちゃんの言う通りだ。

 あんな針、巨大な槍で貫かれるようなもんだろ。

 けど……諦めるのはまだ早い。

 なにしろ、俺たちにはスキルがある。

「〈動くな!〉」

 俺はスキル〈テイム〉の『命令』を行使する。

 レベル10に達したこの能力で、サソリたちはピタリと動かなくなる。

『ナンダ?』

『ウゴケナイゾ』

 さらにスキル『言語理解』でサソリの考えていることが聞こえてくる。

 よしよし、ちゃんと効いてるな。

「大丈夫だ、今のうちに逃げよう」

 俺はみんなに言う。

「サソリって唐揚げとかにできるんだよな……美味いかな……」

 三郎太……やめとけ。

 俺たちはサソリの包囲網を抜ける。

 ところが。

 ざば、ざば、ざば、ざば……。

 砂をかき分ける音が大量に響いて、後から後から巨大サソリが姿を現す。

「嘘だろ……」

 気づくと、辺り一面サソリだらけだ。

 マズいぞ。

 数が多すぎる。

 ここまで多いと、スキルの効果が及ばない……。

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